【相談事例】事業承継の際に定款目的に貨物運送取扱事業と書いてあるのは問題ありませんか? | 貨物運送取扱事業と貨物利用運送事業の違い

公開日:2024年3月9日

ご相談内容
運送会社を合併するため、弊社の目的に貨物自動車運等事業と貨物運送取扱事業を入れようとしています。同じような事業で貨物利用運送事業というものもあるらしいですが、文言が違っても問題ないでしょうか?

行政書士の回答
貨物運送取扱事業は昔の呼び方で、今は貨物利用運送事業が正しいです。それが大丈夫かどうか最終的には運輸局の判断になりますが、言葉の定義を正しく理解して正しい目的で登記しましょう。

貨物運送取扱事業とは?

貨物運送取扱事業は令和2年の物流二法の一つ「貨物運送取扱事業法」でできた事業です。そのときに運送取扱と運送取次ができ、運送取扱が今で言う「貨物利用運送事業」です。

貨物利用運送事業とは、自社ではトラックを持たずに仕事を受け、実際の運搬を外注運送会社に任せる形態の事業です。その運送責任は自社が一次的に負います。

一方、運送取次というのは、仕事を取るのは同じですが、自社では運送責任を持たずに、実際の運送会社を「紹介」するだけの仕事です。今で言えばWEBKITやトラボックスなどの求車求荷マッチングサービスです。

令和15年の法改正にて、運送取扱と運送取次はなくなりました。
運送取扱は貨物利用運送事業になり、運送取次は規制対象外、つまり許可などが不要な事業となりました。

つまり、貨物運送取扱事業は昔の言葉であり、今の貨物利用運送事業とイコールと考えてよいということになります。

なぜ貨物運送取扱事業という言葉がまだ生きてるの?

平成15年に無くなった運送取扱がなぜ今も出てくるのでしょう?不思議ですよね。
それは司法書士の宣誓が運送業許認可に疎いからです。
お客様から「この会社の通りにやって」と知り合いの古い法人謄本を渡されて、それをそのままで申請するわけです。
司法書士も「実績ある会社のそのままだったら安心だろう」となにも疑わずにお客様の依頼通りに申請します。
法務局も別にそんなことは気にしません。

そのようにして「運送取扱」という言葉は連綿と受け継がれていってしまうのです・・・。

結局、貨物運送取扱事業で登記するのはダメなの?

これは正直なんとも言えません。
私の経験上、今までそれで運輸局から修正を指示されたことはありません。
金融機関等でも問題になったと聞いたことはありません。
また、対外的にも正しい方が会社の信頼としてあるべき姿なのは間違いありません。
せっかく新しい事業を始めるのに、そのスタートである定款目的が古いというのはどうかと思う人もいるでしょう。

正しく「貨物利用運送事業」と申請するのがベターなことは間違いありません。

運送会社を合併する方法

運送業に係る許認可ライセンスは大きく4つあります。

・一般貨物自動車運送事業
・第一種貨物利用運送事業
・第二種貨物利用運送事業
・貨物軽自動車運送事業

それぞれで合併するための手続きが異なります。

・一般貨物自動車運送事業 認可(標準処理期間(地方運輸局長権限に係るもの)1~3ヶ月)(大臣権限に係るもの)2~3ヶ月
・第一種貨物利用運送事業 事後届(30日以内)
・第二種貨物利用運送事業 認可(標準処理期間 2か月~3か月)
・貨物軽自動車運送事業 事後届(遅滞なく)

最近はモーダルシフトやコンプライアンス意識向上のため、第二種貨物利用運送業の許可を持っている会社が増え、また、合併対象の運送会社も第二種貨物利用運送業の許可を持っている会社が多くなっているので、第二種貨物利用運送業についての知識もとても大切です。

一般貨物自動車運送事業の合併認可申請のやり方

一般貨物自動車運送事業の許可を引き継ぐためには運輸局から合併の認可(貨物自動車運送事業法第30条)を受ける必要があります。
合併の認可は簡単に届け出ればいいだけではありません。
場合によっては新規許可申請より大変な手続きになります。

役員法令試験は受けないといけないの?

存続会社が一般貨物の許可を持っていない場合は、存続会社の常勤役員として登記されている人の誰か一人が役員法令試験に合格しなければなりません。
残念ながら2人以上が同時に受けることはできません。
役員法令試験に合格しないと、運輸局の審査も進まないので必ず合格しなければ、またその2カ月後の試験に挑戦となるので、単純に2カ月認可が遅れます。
先に解説した標準処理期間も単純に2カ月延びると思ってください。

上場会社やその子会社の場合、合併後の運送業担当常勤役員が、合併会社である親会社の役員でない場合もあるでしょう。それでも基本的には合併会社の役員として登記されなければなりません。

上場会社の場合、取締役会など開くのも簡単ではありません。中小企業であれば「司法書士に頼んでおいて」で済むことが多いですが、なかなかそうはいきません。
運輸局と相談して、合併認可前に登記しなければならないのか、取締役会決議で済むのかなど確認が必要です。

認可の要件

営業所や車庫の輸送施設を変えない場合の最大の関門は資金です。
関東運輸局の場合、被合併法人の緑ナンバー全台分の6ヶ月分運転資金をまかなう資金が必要です。
基本的には残高証明で証明します。関東運輸局の場合、それ以外にも流動資産を算入できることがあります。
最低台数の5台であれば新規許可と同様、2000万円ほどで足りるので大きな問題とはならないでしょう。

しかし、たとえば30台となると、基本的にはその6倍、つまり1億2000万円ほどが必要になります。
M&A案件というと数十台や100台を超える合併となることも珍しくは無いでしょう。

中小企業の場合、それほどのキャッシュを持っていることは多くないと思います。
合併のための資金として、金融機関と相談するなど資金調達が必要です。

第一種貨物利用運送事業の合併承継届のやり方

第一種貨物利用運送事業の合併手続きは事後届(貨物利用運送事業法第14条)なのでそこまで神経質にならなくて大丈夫です。
基本的には自社の事業計画を正しく把握していれば問題ありません。
ただし、外注運送会社がたくさんある場合は、それらの会社の名称・住所を正しく把握していなければいけないので要注意です。
また、外注会社で既に存在しない会社もあるでしょう。そのあたりも含めて整理しておきましょう。

また、一般貨物自動車運送事業と第一種貨物利用運送事業の両方が絡む合併の場合は複雑な整理や手続きが必要です。
必要な手続きが漏れないようにしっかり確認しながら進めていきましょう。

承継の要件

第一種貨物利用運送事業の合併承継の要件はそれほど大きなものはありません。

存続合併法人の貸借対照表純資産の部が300万円以上あることと、定款目的に貨物利用運送事業があることの2つが必要です。

第二種貨物利用運送事業の合併認可申請のやり方

同じ貨物利用運送事業である第一種貨物利用運送事業は事後届出で良いのですが、第二種貨物利用運送事業も合併認可(貨物利用運送事業法第29条)が必要です。

第二積貨物利用運送事業には鉄道、内航海運、外航海運、国内航空、国際航空という多様なモードがあり、各モードで申請の注意点が異なります。
また、幹線輸送と仕立地(出発地)、仕向地(到着地)のトラック集配送会社の情報をしっかり把握していなければ申請ができません。
被合併法人の第二種貨物利用運送事業の事業計画と集配事業計画の情報の整理がとても重要です。

第二種貨物利用運送事業の合併認可申請には高度な専門知識が必要です。

一般貨物自動車運送事業だけでなく、ぜひ第二種貨物利用運送事業の実績な豊富な行政書士のサポートを受けるようにしてください。

行政書士は全国に約5万人いますが、一般貨物自動車運送事業ですらしっかりできる人がいないのに輪をかけて、案件が少なく受任の機会に恵まれない第二種貨物利用運送事業の実績が豊富な行政書士はほとんどいないので探すのはとても大変です。

合併認可の要件

第二種貨物利用運送事業の合併認可申請の手続きはとても大変ですが、要件は意外と簡単で第一種貨物利用運送事業とほとんど変わりません。
合併法人の貸借対照表純資産の部が300万円以上あることと、定款目的に貨物利用運送事業があることの2つが必要です。
貨物利用運送事業と書いてあれば、第二種という文字は必須ではありません。

貨物軽自動車運送事業の承継届のやり方

軽自動車黒ナンバーの経営ライセンスの手続きは本当に簡単です。
法律的には承継届となっていますが、実際は廃業届~新規届という手続きをするように運輸支局からお願いされることはあるかもしれません。

合併の認可を要しない旨の証明書

被合併法人の運送業関連ライセンスをすべて合併認可・承継届をするのであれば、法務局での登記申請について難しいことを考える必要はありません。
合併法人にしっかりそれらの目的を入れておけば大丈夫です。

しかし、被合併法人が保有している運送事業を承継しない場合は、運輸局から「合併の認可を要しない旨の証明書」を取得する必要があります。そうでないと法務局に合併登記申請をしたときに不備として指摘され、登記が進みません。
これを知らない司法書士も珍しくないので本当に注意です。

また、被合併法人が事業ライセンスを持ってなくても定款目的に運送業関係の文言が入っている場合も注意が必要です。
合併登記の前にあらかじめ目的から削除していれば問題ないでしょうが、わざわざその手続きをするのもめんどくさいでしょう。
法務局は被合併法人がそのライセンスを持っていようが持っていまいが、法人謄本上の目的を見て、そのライセンスの合併認可が必要ではないか、と思うことがあります。
それをスムーズに進めるために、事業ライセンスを持っていなくても、定款目的に書いてある運送事業については「合併の認可を要しない旨の証明書」を取得しておきましょう。

まとめ

貨物運送取扱事業という文言で法務局に登記することで大きな問題とならないことが多いです。

しかし、運送業関連の許認可ライセンスは事業承継(合併、分割、譲渡譲受)の際、高度な知識が必要になります。

事業承継に強い弁護士、会計のプロ、事業承継に強い司法書士、そして運送業に強い行政書士の4士業全てを揃えてスムーズな手続きのための準備をするようにしてください。

 

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新規許可申請は他の行政書士に頼んでしまったから頼みづらいなんてことは気にしなくて大丈夫です。
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