レッカー・ロードサービスで緑ナンバー取得。要件、方法、メリットデメリットを一挙解説

公開日:2019年7月15日 / 更新日:2020年9月22日

事故車両を引っ張り揚げたのに、割の良い車両運搬作業は緑ナンバーの会社に奪われる…そんなのもうイヤだ!そんなレッカー事業者様、緑ナンバー取って高利益の仕事を受注しませんか?ADバンなど含めて5台で大丈夫です。運送業専門行政書士が親切に解説。

ロードサービス・レッカー事業者の緑ナンバー取得

ロードサービス・レッカー事業者の緑ナンバー取得

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

ロードサービスで緑ナンバーが必要な理由

最近、コンプライアンス意識が強くなり、保険会社が緑ナンバー業者でないと事故車・故障車の車両運搬を依頼しないようになってきました。田んぼなどに突っ込んで動けなくなった自動車をロードサービス業者が一生懸命引き揚げる。しかも油が漏れていたりすれば、その後処理も大変。
しかし、「やっとこさ引き揚げても車両を運搬するのは緑ナンバー事業者で納得いかない」というお話をよく聞きます。

どんな場合に緑ナンバーが必要なのか確認してみましょう。

法律による違い

まず、緑ナンバーとは何かということについて、法律を見てみましょう。
緑ナンバーは法律で「一般貨物自動車運送事業」と言います。営業ナンバーとも呼ばれます。

貨物自動車運送事業法第2条

    • 一般貨物自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。

要するに、お金をもらって他人のモノを運ぶためには、緑ナンバーが必要ということです。

レッカー車は緑ナンバーは不要です

レッカー車は自動車を「運ぶ」のではなく、「引っ張り」ます。
下の図のように、引っ張られる車両の後輪は設置させた状態です。
だから「運送事業」には当たらないのです。
ヘリクツのように聞こえるかもしれませんが「積載」していないので「貨物」にならないのです。

レッカー車

レッカー車は緑ナンバー不要

従って、積載装置が無いレッカー車はそもそも緑ナンバーが要りません。

積載車の場合は緑ナンバーが必要です

レッカー車であれば緑ナンバーはいらないことがわかりました。
しかし、積載車の場合はどうでしょうか?
積載車の場合、有料で車両を運搬するには緑ナンバーが必要です。

積載車は緑ナンバーが必要

ただし、自動車整備事業者等が自動車ユーザーから依頼を受けて、”自己の”整備工場に無償で持ち込んで修理を行う場合は白ナンバーでも大丈夫です。積載車の自家用有償運送について詳しく知りたい方は以下をクリックしてください。

白ナンバーで運送をしているとどんな罰則があるの?

貨物自動車運送事業法違反となり、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金という大変重い罪となります。
そして、もし、罰金でなく懲役刑になってしまったら、懲役が終わってから5年経過しなければ、緑ナンバーの新規許可申請ができません。

一般貨物自動車運送事業の許可の取り方

では、一般貨物自動車運送事業の許可はどのように取ればよいのか、確認していきましょう。

定款の目的の正しい文言

定款の目的に「貨物自動車運送事業」が記載されていない場合は、一般貨物についての目的追加をしなければなりません。
「貨物自動車運送事業」もしくは「一般貨物自動車運送事業」と言う目的を追加しましょう。

許可要件

<一般貨物自動車運送事業の許可要件>
たくさんありますが、一つ一つ丁寧に準備すれば必ず許可が取れます!
  • 1.運行管理者の選任
運行管理者資格者証を持っている人が一人以上必要です。 運行管理者資格者証は以下の2つのどちらかの方法で取得できます。
・国家試験に合格する
・基礎講習1回と一般講習4回を5年間かけて受講し、運行管理補助者を5年経験する
2.整備管理者の選任
以下のいずれかの人が一人以上必要です。
・(2年以上の整備・管理等の実務経験)+(整備管理者選任前研修を受講)
・国家資格の整備士
3.運転者の雇い入れ
5名以上の運転者が必要です。 ※原則、運行管理者と別の人で5名以上で、全員が社会保険、雇用労災保険に加入する必要があります。
4.営業所、休憩睡眠施設の確保
特に面積や設備要件はありませんが、用途地域による制限があるので要チェックです。
5.車庫の確保
5台以上の事業計画車両全てを余裕を持って格納できる広さの車庫が必要です。 営業所からの直線距離の制限(5~20km。運輸局及び地域によって異なります)があります。
6.「5台以上」のトラックの確保
軽自動車でない、1,4、8ナンバーの積載構造がある貨物自動車が5台以上必要です。 自社所有である必要はなく、ローンやリースでも構いません。 リースもファイナンスリースだけでなくオペレーティングリース、メンテナンスリースでも構いません。
7.運転資金の確保
6か月分の運転資金、12カ月分の地代家賃、車両費及び1年分の税金・保険の現金が必要です。 地代家賃、人件費、車両費によりますが、一般的には最低でも1500~2000万円の範囲の預金があることが必要です。

準備から許可までの流れ

条件を揃えたら、以下のような流れで緑ナンバー取り付けまで進めます。

<緑ナンバーの申請準備からナンバー登録までの流れ>
条件をしっかり確認したあとは、申請の準備~緑ナンバープレートの取付まで全体を把握しましょう!
  • 1.許可要件の確認
 5台のトラック、営業所、車庫、運行管理者、整備管理者、必要資金などを要件通りに準備します
2.申請書類の準備、作成(※行政書士に依頼するとすごく楽で確実です)
 賃貸借契約書、見積書、残高証明書、幅員証明書、図面等
3.管轄の運輸支局を通じて運輸局に申請する
 申請書と添付書類を整えて2部提出します)
4.運輸局での審査
 この審査が3~5か月ほどかかります
5.申請月の翌月以降の奇数月に役員法令試験を受験する
 登記されている常勤役員の一人が合格する必要があります
6.2回目の残高証明を提出(申請から約2~3か月後)
 申請時の資金計画の必要金額を下回らないようにしましょう
7.申請から3~5か月後くらいで許可が下りる
 その後、許可証交付式にて許可証を受け取ります
8.登録免許税12万円を国土交通省に納付する
9.運行管理者と整備管理者の選任届を提出
10.運輸開始前確認報告を提出する
 社会保険や雇用労災保険の加入証明や運転免許証の準備が必要
11.事業用自動車等連絡書を運輸支局輸送担当にて発行してもらう
12.車検証を自社名義の緑ナンバー事業用に書き換える
 委任状などを用意して車検証を書き換える。ナンバー変更の必要があればトラックを管轄の運輸支局・登録事務所に持ち込む
13.運輸開始届を提出
 緑ナンバーでの事業を開始したら、緑ナンバー書き換え後の車検証を添付し、運輸支局に運輸開始届を提出して一連の流れが完了します

以上、まとめたように13段階もの手続きが必要で、その期間は準備を含めて最低でも6か月以上かかる大変な作業です。(上記、13段階PDFダウンロードはこちらをクリック

一般貨物自動車運送事業者になることで新たに発生する負担

緑ナンバーを付けると、一般貨物自動車運送事業者としての多くの義務が課されます。
ロードサービスで仕事をしており、一般の会社としての義務はそもそも課されているので社会保険などは変わりません。
しかし、任意保険料はアップします。特に大きく異なるのは、緑ナンバー事業者としての帳簿等の義務のところです。

大きなところについて、一つずつ丁寧に解説します。

車両の保険

トラックの自賠責保険は、自家用積載2トン超が28720円、事業用積載2トン超が39540円です。

任意保険については当然損保会社によって異なりますが、事業用トラックの方が大幅に高くなります。

帳簿・点呼・教育・診断

一般貨物自動車運送事業者になると、毎日の義務が格段に増えます。しっかりやらなければ行政処分で車両を停止させられてしまいます。
多くの事業者さんは、この帳簿関係の負担が最も異なってくると思います。

対面点呼・点呼記録簿

出発時と乗務終了時に、必ず運行管理者による対面点呼をしなければなりません。

日報(乗務等の記録)

毎日、乗務日報を記録しなければなりません。ドライバーの協力が不可欠です。

運転者台帳

ドライバーを雇い入れたら、運転者台帳を作成しなければなりません。

初任運転者の適性診断の受診

ドライバーを雇ったら、始めの1回だけでよいので、NASVA等で初任運転者の適性診断を受ける必要があります。
適性診断を受診できる機関についてはこちらを参照してください。

初任運転者適性診断を受診できる機関リスト

3か月点検

一般貨物自動車運送事業用のトラックは、3カ月定期点検を実施しなければなりません。

初任運転者の特別な指導

適性診断とは別に、15時間以上の講習と20時間以上の添乗等による実技指導をしなければなりません。

ドライバー12項目研修

毎年、以下の12項目について運行管理者を中心として、ドライバー全員に教育をした上で、議事録を残さなければなりません。

ドライバー教育12項目

  • ・事業用自動車を運転する場合の心構え
  • ・事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
  • ・事業用自動車の構造上の特性
  • ・貨物の正しい積載方法
  • ・過積載の危険性
  • ・危険物を運搬する場合に留意すべき事項
  • ・適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
  • ・危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
  • ・運転者の運転適性に応じた安全運転
  • ・交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法
  • ・健康管理の重要性
  • ・安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法

健康診断

これは白ナンバーでも同様です。
毎年、ドライバー全員に最低1回の健康診断を受けさせなければなりません。
休日に行ってもらうのは難しいでしょうから、なんとか勤務日に仕事を調整し、受けに行ってもらうようにしなければなりません。
基本的にはその時の給料は支払うべきです。

事業報告書・事業実績報告書の提出

毎年、運送事業の決算情報を報告する「事業報告書」と、走行距離や輸送トン数等を報告する「事業実績報告書」を提出しなければなりません。

その他、一般貨物自動車運送事業者になった場合にやらなければいけないことについては、以下のページをご覧ください。

車両停止行政処分のリスク

白ナンバートラック事業者は、違法行為があったとしても、会社に対して行政処分が下されることはありません。
しかし、一般貨物自動車運送事業となると、たった一人のドライバーの違法行為をきっかけに監査が入り、会社に対して行政処分が下されます。
それにより、複数台の車両が停止処分になるというリスクもあります。
一般貨物自動車運送事業は、当然、その義務や責任も白ナンバートラック事業より格段に大きくなるというわけです。

一般貨物自動車運送事業許可を取った場合のメリット

一般貨物自動車運送事業はさきほど説明したように、負担やリスクが存在しますが、白ナンバーのときと比べて本格的に運送事業を拡げられるチャンスがあります

運送部門を拡大できる

事業規模向上!!

事業規模向上!!

白ナンバーのときでは運送部門を公に営業することは無理でした。
しかし、一般貨物の許可を取れば、本当の運送事業についていくらでも営業できます。
白ナンバーでは取れなかった割の良い仕事をどんどん取っていくことが可能です。
どんどん仕事を取っていきましょう!!

トラック協会で活躍できる

緑ナンバーの運送事業者となれば、一層切磋琢磨できる会社の社長と出会えるチャンスも格段に広がりますし、運送事業の未来を一緒に語る仲間もできるでしょう。

全日本トラック協会

グリーン経営認証やGマーク

Gマークとは、白ナンバーでは取り組めない準公的なブランディング手法です。
経営陣の気持ち次第で、既に準備されている「良い会社を作る方法」が様々用意されています。
Gマークロゴ グリーン経営認証ロゴ

※全日本トラック協会、エコモ財団より引用

まとめ

白ナンバーから緑ナンバーを取得するためには、多くの負担があります。
しかし、事業の可能性は、そこで新たに発生する負担のみで考えるべきではないでしょう。
緑ナンバーを取れば、大きなチャンスが広がります!
考えるべきは、収支の問題と、その負担を適法に処理できる人的資産を確保できるかどうかという問題を、建設的に考えるべきであり、なによりも「その仕事をやりたいかどうか!!」です。
強い気持ちさえあれば、クリアできないハードルなんてありません。
トラサポはあなたの緑ナンバー取得を全力でサポートします!!

行政書士

チャンスがあるのであれば、ぜひ一般貨物自動車運送事業の許可取得にチャレンジしましょう!