運行管理者の資格要件、義務、選任届について行政書士が解説

公開日:2019年6月22日 / 更新日:2024年8月30日

一般貨物自動車運送事業会社の中で、社長と並んで大切な役職「運行管理者」。運行管理者になる方法や選任の仕方、仕事内容、2年に1度受講義務のある講習、補助者などについて解説します。これから新規許可を取ろうとしている会社様、必見です!

運行管理者資格者証

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

運行管理者とは?

運行管理者とは、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるために運送事業者が選任しなければならない人のことです。
後で詳しく解説しますが、具体的には以下のような仕事を行います。

運行管理者の仕事

    • ・事業用自動車の運転者の乗務割の作成
    • ・休憩・睡眠施設の保守管理
    • ・運転者の指導監督
  • ・点呼による運転者の疲労・健康状態等の把握や安全運行の指示等

また、事業者は運行管理者に対して業務を行うため必要な権限を与えなければなりません。
事業者は運行管理者からの安全のための指導を尊重しなければならず、運転者その他の従業員は、運行管理者の指導に従わなければなりません。

運行管理者は、その名の通り、運送会社の安全を監督する重要な存在なのです。

2年に1度の研修を受ける必要があります

運行管理者に選任された人は2年に1度、NASVA(独立行政法人自動車事故対策機構)等が実施する一般講習を受講しなければなりません。(講習は国土交通省に認定された他機関でも実施されています)
選任初年度は、必ず一般講習または基礎講習の受講が必要です。(年度とは、4月から翌3月で区切られます)
基礎講習を受講したことがない運行管理者は、必ず選任された初年度にNASVA等の基礎講習を受けるようにしてください。(平成24年4月16日施行の改正輸送安全規則より)

以前は運輸支局から通知が来ていましたが、今は自社で管理しなければなりませんので、車検管理表と同じ表で管理するのが良いでしょう。

統括運行管理者とは?

1つの営業所で複数の運行管理者を選任する場合、それらの業務を統括する責任者(=統括運行管理者)を1名選任しなければなりません。

運行管理者になるための資格要件は?

資格試験で合格する方法

運行管理者は国家資格であり、公益財団法人運行管理者試験センターが試験を開催します。
基本的には毎年3月と8月に試験が実施されます。
念のため注意です!貨物と旅客がありますが、必ず貨物の方を申し込んでください。

運行管理者試験は誰でも受験できるわけではありません。受験資格を以下に解説します。

運行管理者試験の受験資格

以下の1または2のいずれかの人でないと試験を受けることができません。

1.運行管理に関して1年以上の実務経験を有すること
運行管理補助者として1年以上の実務経験があること
(※実務経験の証明方法は、実務経験承認者の電子メールアドレスを試験センターに教えて、実務経験承認者から実務経験を承認するメールを送ってもらうということとなっています。)
(※実務経験とは、自動車運送事業(貨物軽自動車運送事業を除く。)の用に供する事業用自動車又は特定第二種貨物利用運送事業者の事業用自動車(緑色のナンバーの車)の運行の管理をした経験のことを言います)
2.NASVA等が開催する3日間の基礎講習を受講したこと
実務経験の代わりに、NASVA等が開催する基礎講習を受ければ受験資格を得られます。平日の3日連続なので大変ですが、みっちりと教えてくれるので、もし実務経験で受験する方でも基礎講習は受けた方がよいでしょう。
そして今はどうせ選任されたら基礎講習を受けなければいけないので、受けておきましょう。

運行管理者試験に合格しても、まだ運行管理者としては選任できません。
合格通知書と、合格通知の封筒に入っている運行管理者資格者証交付申請書にて、運輸支局に運行管理者資格者証交付申請を必ず行ってください。合格から3か月以内に交付申請を行わないと、合格が無効になってしまうので、すぐに申請しましょう!
申請は郵送でも可能です。

5年の実務経験プラス5回の講習で取得する方法

意外と知られていませんが、こちらは国家試験を受けなくても運行管理者になれる方法です。
以下の要件を満たした人が、運輸支局に運行管理者資格者証の交付申請をし、交付されると運行管理者として選任できます。

5年の実務経験による運行管理者資格者証取得方法

以下の1及び2を満たせば運行管理者資格者証の交付を受けることができます。

1.「5年の実務経験」
運行管理補助者として貨物自動車運送事業者の運行管理に関し5年以上の実務経験を有する者。
2.「5年の講習」
運行管理補助者として運行管理業務に従事しながら、NASVA等が実施する講習を5回以上受講した者(少なくとも1回はの基礎講習の受講が必要です。)
尚、実務経験が補助者としてのものなので、こちらも「基礎講習受講後の補助者選任日」がスタートとなります。従って、基礎講習受講より以前に受けた一般講習は、実務経験期間内の回数としてカウントされません。
運行管理者資格取得に必要な5年実務経験と講習の関係

※1年で最大1回しかカウントされません。基礎講習を受けた年に一般講習を受けてもカウントされません。1年は4月~翌3月の中で区切ります。

実務経験は運行管理補助者として勤めていた会社に、5年以上の期間について証明してもらいます。その際は以下の書類にハンコを押してもらうようにしましょう。(当然、タクシーやバスの旅客ではダメで、貨物自動車運送事業者における経験が必要です)

運行管理者の必要人数

運行管理者は1つの営業所に1名以上が必要です。(5台未満の霊柩限定、一般廃棄物限定は除きます。5台未満でも普通の一般貨物自動車運送事業者は選任が必要です。)
営業所所属の緑ナンバートラックの台数により必要人数が定められています。

運行管理者の必要人数

    • ・1~29台  必要人数1人
    • ・30~59台 必要人数2人
    • ・60~89台 必要人数3人
    • 以後、30台増えるごとに1人ずつ増えます。
    • ※ここで言う台数にはトレーラは含まれません。あくまでエンジン付きの緑ナンバーの台数だけで考えれば大丈夫です。

ちなみにですが、白ナンバーで乗車定員30人以上のバスだと整備管理者は1台(11人以上29人以下は2台以上。トラック(車両総重量8トン以上)5台以上)からでも必要ですが、運行管理者は選任不要です。

運行管理者の仕事とは?

運行管理者の仕事は、貨物自動車運送事業輸送安全規則の第20条で以下のように定められています。
これを見てわかるように、運行管理者の仕事は多岐にわたり、しかも大きな責任を伴います。
しかし、全ては安全のためです。運行管理者は常に講習などを受け、勉強し続ける必要があります。

運行管理者の仕事

      • ・過積載について従業員に対する指導及び監督を行うこと。
      • ・貨物の積載方法について、従業員に対する指導及び監督を行うこと
      • ・通行許可について、運転者に対する指導及び監督を行うこと。
      • ・運転者に対して点呼を行い記録・保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。
      • ・運転日報について、運転者に対して記録させ、及びその記録を保存すること。
      • ・運行記録計(タコメータ)を管理し、及びその記録を保存すること。
      • ・運行記録計(タコメータ)が必要な車輌について、記録することのできないものを運行の用に供さないこと。
      • ・事故が起きた場合、それを記録し、及びその記録を保存すること。
      • ・運行指示書を作成および管理。(2泊3日以上の運行の場合のみ)
      • ・運転者台帳を作成し、営業所に備え置くこと。
      • ・乗務員に対する指導、監督及び特別な指導を行い、記録及び保存を行うこと。
      • ・運転者に適性診断を受けさせること。
      • ・異常気象時等の場合の措置を講ずること。
      • ・運行管理補助者に対する指導及び監督を行うこと。
      • ・国土交通省などから定められた事故防止対策に基づき、事業用自動車の運行の安全の確保について、従業員に対する指導及び監督を行うこと。
  • 運行管理者の選任届

運送事業者は、運行管理者を選任したら、遅滞なく選任届を運輸支局の保安担当に提出しましょう。
選任届は以下の画像を参考にしながら、赤字のところを記載しましょう。
裏面の兼職欄は、管理者として選任されている人が、本当にその重責を担えるのかを判断する材料として記載が求められています。
統括運行管理者の人には冒頭枠に〇を付けましょう。

添付書類として、運行管理者資格者証コピーが必要です。(整備管理者の添付書類については整備管理者のページで解説します)

当然ですが、他の営業所や会社で選任されている人を選任することはできません。

運行管理補助者とは?

3日間の基礎講習を受けると「補助者」になることができます。
運行管理者のすべての仕事をできるわけではありませんが、点呼を代務することができます

しかし、すべての点呼を補助者だけで実施して良いわけではありません。
その営業所で選任されている運行管理者が全体の3分の1以上は対面点呼しなければなりません。
つまり、3分の2までは補助者で点呼してよいということになります。

また、補助者は複数の営業所を兼任できるので、運行管理者より柔軟に点呼ローテーションを組めます。

もし、対面点呼の際に健康上の不安などがあったら正規の運行管理者に判断をあおぐ必要があります。
問題があったときの運行可否判断については、運行管理者に仰がなければいけません。

運行管理補助者のオススメ利用法

早朝、夜間の対面点呼は大変ですよね。
でも、大変だからといってやらなくていけないわけではありません!!
しかし、運行管理者が一人で全部対面点呼するとなるとその運行管理者は睡眠時間2時間くらいになってしまいます。。。

ということでオススメなのは、定年退職した方をパートで雇い、基礎講習を受けてもらい、補助者として選任する方法です!!
その方に夜の11時~朝方5時くらいまで対面点呼を実施していただく。
時給1200円で1日6時間=7200円、23日で約17万円。

夜中の仕事をしっかり対面点呼してコンプライアンスを守れるなら高い経費でないと思いませんか?

その他よくある質問

運行管理者資格を持っていれば役員法令試験は受けなくてもいいか

新規申請時には運行管理者、整備管理者、運転者は雇用していなければならないか

運行管理者は最低一人は役員でなければいけないか

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