日本一詳しく!貨物自動車運送事業の監査と巡回指導、行政処分について行政書士が完全解説1〜監査編〜

公開日:2021年10月4日 / 更新日:2021年10月8日

運送事業は何十トンの鉄の塊を毎日何十台も走らせます。何より大切なのは“安全”です。事故をしたりすると、運輸支局が監査にきます。車両停止処分や場合によっては営業停止にもなりかねません。監査と巡回指導の対策をしたい方は必見です。

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋13年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

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監査編

読者の方で本当の監査を受けた方は少ないでしょう。
監査を受けた会社と受けたことがない会社では、運輸支局の怖がり方も違いますし、コンプライアンス意識も全く違います。
監査は怖いですが、しっかり意識すれば良い会社を作るための大きなモチベーションになります。

監査と巡回指導の違い

実際に運輸支局の本当の監査を受けたことがない事業者さんは、巡回指導のこと「今度監査が来るんだ」と言います。そういう電話が来たとき、「トラック協会の巡回指導ですか?」と聞き返すと、ほとんどの場合で「そうです」という返事が返ってきます。
要するに、監査と巡回指導の違いをあまり意識していないのです。

巡回指導に対してよくある感想。

「あんなの、どうせ守れないんだから適当にやって、ケンカして文句言ってるよ。それでもいつも大丈夫だよ」
しかし、監査の実態はまったく別物です。。。
・・・それ、巡回指導だから大丈夫なのです。
そんな状態で本当の監査を受けたら、容赦なく何台ものトラックを数カ月止められてしまいます。。。

監査は誰がやるの?

「監査」というのは、運輸支局の監査担当が実施するものです。
監査に入るキッカケは様々ですが、第一当事者の死亡事故を起こしてしまうというキッカケが多いと思いす。
しかし、後で説明しますが、監査のキッカケはとても多様で、ロシアンルーレット的に「監査に入ったことないから」という理由で監査に来るケースもあります。

巡回指導は誰がやるの?

「巡回指導」は、国道交通省が平成2年12月から地方貨物自動車運送適正化事業実施機関として指定されたトラック協会の適正化指導員が実施するようになりました。
基本的には、各運送事業者の営業所に行って、事業計画内容や帳簿の確認をします。
ルール通りにできていない箇所については運送事業者に“指導”します。
監査ではなく、あくまで“指導”です。

指導員のレベルや性格によりますが、基本的には味方と思ってよいです。
しかし、あまりに違反事項が多いと、運輸支局に報告しなければならず、それをキッカケに本当の監査となりかねないので、あまり甘く見てはいけません。
また、2019年11月より巡回指導のランクがEの場合は認可申請ができなくなる予定です。

監査の種類

(1)特別監査

引き起こした事故又は疑いのある法令違反の重大性を考慮し、厳しい対応が必要と認められる事業者に対して、全般的な法令遵守状況を確認する監査を特別監査と言います。

(2)一般監査

特別監査に該当しないものであって、後で解説する監査を実施する端緒(たんしょ=キッカケ、以下「監査端緒」といいます)に応じた重点事項を定めて法令遵守状況を確認する監査を一般監査と言います。
なお、一般監査を実施した事業者において、全般的な法令遵守状況を確認する必要があると認められた場合は、特別監査に切り替えられることがあります。

(3)街頭監査

事業用自動車の運行実態等を確認するため、街頭において事業者を特定せずに実施する監査を街頭監査と言いますが、こちらはバス事業者がメインなのでここでは触れません。

監査の場所

(1)臨店による監査

事業者の営業所その他の事業場又は事業用自動車の所在する場所に立ち入って実施するもの。
→基本は無通告で監査がなされますが、事前通知の場合もあります。

監査の通知書

監査の通知書

監査の通知書

監査の通知書

(2)呼出による監査

当該事業者の代表者若しくは同等の者又は運行管理者等事業運営の責任者を地方運輸局又は運輸支局等へ呼び出して実施するもの。

監査による行政処分後の改善確認のための再監査は呼び出し監査となります。
監査端緒により確認する事項が限定的であり、臨店によらなくても支障がないと判断される場合も、呼出監査となります。

(3)街頭監査

事業用自動車の所在する場所へ立ち入って実施するものであって、バスに係る発着場等街頭において実施するもの。

監査が入るキッカケ(端緒)

特別監査及び一般監査は、次に掲げる事業者を対象して実施されます。この場合、その事故又は違反が社会的影響の大きいもの又は悪質なものである場合には特別監査を実施するものとし、それ以外の場合には一般監査を実施するものとされています。

監査が入るキッカケ

注目すべきは最後の項目です。
要するに理由はなんでもよいのです、運輸支局が必要と思えば監査に入られるのです。

監査はどのように進められるか

監査は営業所に来るもので考えると「一般監査」と「特別監査」で見られるポイントが若干異なります。
一般監査は違反が疑わしい点を重点的に見られます。
特別監査は全体的に徹底的に見られます。

監査で重点的に見る項目

  • ・事業計画の遵守状況
  • ・運賃・料金の収受状況
  • ・損害賠償責任保険(共済)の加入状況
  • ・自家用自動車の利用、名義貸し行為の有無
  • ・社会保険等の加入状況
  • ・賃金の支払い状況
  • 運行管理の実施状況
  • 整備管理の実施状況

この中の赤字になっている項目は、完全にアウトの場合は一発で30日営業所事業停止となる重い違反です。

監査による帳簿を中心とした確認

とは言え、物理的に時間の制約もあるので、監査員にもテクニックがあります。
以下のようなポイントから攻めていき、徐々に細かいところをチェックしていきます。

【 監査員が実際に見ていくポイント  
    • ・労働時間が長い人から見る
    •  労働時間が長い人の方が当然拘束時間違反の可能性は高いですから、こちらの日報や点呼記録を優先的に見ます。
    • ・賃金が高い人から見る
    •  賃金が高い人も前項と同様、違反の可能性が高いので優先的に見られます。
    • ・事業計画に沿った経営をしているか
    •  認可を受けている車庫が実際に存在しているかどうか、現地を見に行けばわかります。車庫として認可を受けた場所に既にビルが建っていれば即違反という具合です。
    • ・3か月定期点検記録簿が備え付けてあるか
    • ・整備管理者がちゃんと勤務し、車両の点検管理等をしているか
    • ・日報の目的地、経過場所と走行距離の整合性を見る
    •  場所を見ればある程度の距離はわかります。それを日報の走行距離を見れば、偽造されているかどうかがわかります。

その他基本事項

    • ・社会保険や雇用労災保険に加入しているか
    • ・運転者の適性診断を受診しているか、特別な指導をしているか
    • ・年間教育(12項目)をしているか
    • ・日報の記載項目チェック(よく不備があるのが、休憩の場所・時間、指示事項)
    • ・運転者台帳が正しく作成されているか
    • ・運行管理者、整備管理者が2年に一度の研修を受けているか
    • ・2泊3日以上の運行にて運行指示書が作成されているか
    • ・事業報告書、実績報告書が提出されているか
    • ・2017年11月標準約款変更による運賃変更届を提出しているか
    • ・役員、運転者全員が健康診断を受けているか

自認書を書かされる

監査が終わったら違反事項を書かされます。
「○年○月○日当社経営に関わる一般貨物自動車運送事業の運営実態について監査を受けましたところ、下記の事実があったことに相違ありません。」
という文章から始まる自認書のようなものに、違反事項を下記、そこに署名押印させられます。

監査後の自認書

監査後の自認書

それをもとに改善指示書というものが来ますので、違反していないと思ったり不安に思うところはしっかり担当者に監査の場で確認してください。そのときに存在しない書類でも探せば出てくるだろうものなどはその旨ちゃんと伝えて「違反事項として」明記しないように交渉してください。
ここに書いてしまうと要するに「この違反は間違いありません」と自分で認めたという証拠になってしまいます。
そこで反論するためにはしっかりした知識が必要なので帳簿などのルールについて正確な知識を身に着けておく必要があります。

 

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