第一種貨物利用運送事業者が一般貨物自動車運送事業者になる方法を行政書士が詳しく解説

公開日:2019年4月29日 / 更新日:2019年7月15日

仕事は取れる!外注していたが自社トラックを持った方が迅速できめ細やかなサービスを提供できる!とお考えのお客様。利用運送と一般貨物はなにが違うのでしょうか?許可の取り方、一般貨物を取ったら変わること、増える負担、メリットを解説します。

第一種貨物利用運送事業から一般貨物自動車運送事業へ

運送業専門行政書士鈴木隆広■この記事を書いた人:運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」
神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋10年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【住所:神奈川県横浜市都筑区池辺町3620】

第一種貨物利用運送事業と一般貨物自動車運送事業の法律上の違い

第一種貨物利用運送事業は俗に「水屋」「利用運送」「取扱い」と呼びます。
第一種貨物利用運送事業も一般貨物自動車運送事業も“運送事業”という文字が付くので紛らわしいですが、同じ運送事業でも全く異なります。
ざっくり説明すると以下のように簡単に見分けることができます。

<貨物利用運送事業と貨物自動車運送事業の違い>

【貨物利用運送事業】
自社でトラックは持たず、仕事を受けたらすべて外注運送事業者に任せます。
【貨物自動車運送事業】
自社で緑ナンバートラックを保持して、運送の仕事を行います。

次に法律の定義を挙げます。

貨物自動車運送事業法第2条

    • 一般貨物自動車運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。

貨物利用運送事業法第2条項

    • 実運送」とは、貨物自動車運送事業者の行う貨物の運送をいい、「利用運送」とは、運送事業者の行う運送(実運送に係るものに限る。)を利用してする貨物の運送をいう。
      「貨物利用運送事業」とは、第一種貨物利用運送事業及び第二種貨物利用運送事業をいう
      第一種貨物利用運送事業」とは、他人の需要に応じ、有償で、利用運送を行う事業であって、第二種貨物利用運送事業以外のものをいう。

ここで「利用してする」という表現があり、わかりづらいので図で簡単に解説します。

実運送事業者を利用するというイメージ

実運送事業者を利用するというイメージ

利用運送には第一種貨物利用運送事業の他に、第二種貨物利用運送事業というものもあります。
もっと詳しく利用運送について調べたい方は以下のバナーをクリックしてください。

一般貨物自動車運送事業の許可の取り方

では、一般貨物自動車運送事業の許可はどのように取ればよいのか、確認していきましょう。

許可要件

<一般貨物自動車運送事業の許可要件>
たくさんありますが、一つ一つ丁寧に準備すれば必ず許可が取れます!
  • 1.運行管理者の選任
運行管理者資格者証を持っている人が一人以上必要です。 運行管理者資格者証は以下の2つのどちらかの方法で取得できます。
・国家試験に合格する
・基礎講習1回と一般講習4回を5年間かけて受講し、運行管理補助者を5年経験する
2.整備管理者の選任
以下のいずれかの人が一人以上必要です。
・(2年以上の整備・管理等の実務経験)+(整備管理者選任前研修を受講)
・国家資格の整備士
3.運転者の雇い入れ
5名以上の運転者が必要です。 ※原則、運行管理者と別の人で5名以上で、全員が社会保険、雇用労災保険に加入する必要があります。
4.営業所、休憩睡眠施設の確保
特に面積や設備要件はありませんが、用途地域による制限があるので要チェックです。
5.車庫の確保
5台以上の事業計画車両全てを余裕を持って格納できる広さの車庫が必要です。 営業所からの直線距離の制限(5~20km。運輸局及び地域によって異なります)があります。
6.「5台以上」のトラックの確保
軽自動車でない、1,4、8ナンバーの積載構造がある貨物自動車が5台以上必要です。 自社所有である必要はなく、ローンやリースでも構いません。 リースもファイナンスリースだけでなくオペレーティングリース、メンテナンスリースでも構いません。
7.運転資金の確保
6か月分の運転資金、12カ月分の地代家賃、車両費及び1年分の税金・保険の現金が必要です。 地代家賃、人件費、車両費によりますが、一般的には最低でも1500~2000万円の範囲の預金があることが必要です。

準備から許可までの流れ

条件を揃えたら、以下のような流れで緑ナンバー取り付けまで進めます。

<緑ナンバーの申請準備からナンバー登録までの流れ>
条件をしっかり確認したあとは、申請の準備~緑ナンバープレートの取付まで全体を把握しましょう!
  • 1.許可要件の確認
 5台のトラック、営業所、車庫、運行管理者、整備管理者、必要資金などを要件通りに準備します
2.申請書類の準備、作成(※行政書士に依頼するとすごく楽で確実です)
 賃貸借契約書、見積書、残高証明書、幅員証明書、図面等
3.管轄の運輸支局を通じて運輸局に申請する
 申請書と添付書類を整えて2部提出します)
4.運輸局での審査
 この審査が3~5か月ほどかかります
5.申請月の翌月以降の奇数月に役員法令試験を受験する
 登記されている常勤役員の一人が合格する必要があります
6.2回目の残高証明を提出(申請から約2~3か月後)
 申請時の資金計画の必要金額を下回らないようにしましょう
7.申請から3~5か月後くらいで許可が下りる
 その後、許可証交付式にて許可証を受け取ります
8.登録免許税12万円を国土交通省に納付する
9.運行管理者と整備管理者の選任届を提出
10.運輸開始前確認報告を提出する
 社会保険や雇用労災保険の加入証明や運転免許証の準備が必要
11.事業用自動車等連絡書を運輸支局輸送担当にて発行してもらう
12.車検証を自社名義の緑ナンバー事業用に書き換える
 委任状などを用意して車検証を書き換える。ナンバー変更の必要があればトラックを管轄の運輸支局・登録事務所に持ち込む
13.運輸開始届を提出
 緑ナンバーでの事業を開始したら、緑ナンバー書き換え後の車検証を添付し、運輸支局に運輸開始届を提出して一連の流れが完了します

以上、まとめたように13段階もの手続きが必要で、その期間は準備を含めて最低でも6か月以上かかる大変な作業です。(上記、13段階PDFダウンロードはこちらをクリック

一般貨物自動車運送事業者になることで新たに発生する負担

大きなトラックを毎日走らせる事業は、第一種貨物利用運送事業より格段に多くの危険が伴います。
それに比例して、多くの義務が課されます。
大きなところについて、一つずつ丁寧に解説します。

社会保険料の負担

利用運送の時は、実運送事業者に対して「外注費」で支払っていました。
一般貨物自動車運送事業のドライバーは自社従業員でなければなりません。(出向社員や派遣社員でも構いません。)
つまり、社会保険料や雇用労災保険がかかるようになります。

どのような人が一般貨物自動車運送事業の運転者となれるかは、以下のページをご覧ください。

消費税対象経費の減少

外注費として支払っているということは、消費税課税売上から、それらの外注費を引いていたはずです。
例えばその外注費が全て自社従業員の給与になり、消費税対象経費でなくなることを考えてみましょう。
つまり、今までより多くの消費税を支払わなくてはならなくなります
例えば、今まで5000万円の売り上げがあって、4000万円の外注費だったとしたら、5000万-4000万=1000万円からその他消費税控除対象経費を引いた金額に対して消費税を納めていました。
従って、多くても収める消費税は80万円程度でした。
しかし、一般貨物自動車運送事業になると、従業員給与は消費税控除対象経費となりません。
5000万円の売り上げであれば、労働分配率が50%として人件費が2500万円となります。するとその2500万円分は少なくとも消費税控除売上とならないわけです。
つまり、今の例であれば、ざっくり言えば2500万円の消費税8%=200万円の消費税を余分に納めることになるということです。

租税公課経費が増えるので、法人税は逆にその分だけ減ります。

このあたりの詳細については、税理士と綿密に相談するようにしてください。

車両の維持費 修繕費、税金、保険

利用運送事業者の場合、経費はほとんどかからなかったと思います。
しかし、2トントラックでさえ、以下の表でわかる通り、かなりの金額がかかります。

2トントラックでの維持費参考数値

一般貨物自動車運送事業(営業ナンバー・緑ナンバー)
  ※2トントラック車両総重量5トン弱
 重量税 13000円
 自賠責保険料 27900円
 燃費 10km/L
その他:タイヤ代、駐車場代、任意保険、人件費、車両費

トラックを買ってドライバーを雇うということは経費構造がまったく変わるということです。
圧倒的にかかる費用はドライバーの人件費です。外注と自社従業員ではまるで次元が異なることを覚悟しましょう。
いろいろな業者に見積りも取りながら、慎重に経営計画を立てましょう。

その上で、収支がプラスとなる運賃を本当にもらえるのかどうか、よくよく確認してから一般貨物自動車運送事業の許可申請をするべきです。

帳簿・点呼・教育・診断

一般貨物自動車運送事業者になると、毎日の義務が格段に増えます。しっかりやらなければ行政処分で車両を停止させられてしまいます。利用運送の場合は、なにかあっても変わりのトラックを探せばよかったかもしれませんが、実運送事業者になるということは、自社のトラックが使えない場合に他者に依頼すると、自社の動いていないトラックの分だけ赤字となります。自社でしっかりやらなければいけないということです。

対面点呼・点呼記録簿

出発時と乗務終了時に、必ず運行管理者による対面点呼をしなければなりません。

日報(乗務等の記録)

毎日、乗務日報を記録しなければなりません。ドライバーの協力が不可欠です。

運転者台帳

ドライバーを雇い入れたら、運転者台帳を作成しなければなりません。

初任運転者の適性診断の受診

ドライバーを雇ったら、始めの1回だけでよいので、NASVA等で初任運転者の適性診断を受ける必要があります。
適性診断を受診できる機関についてはこちらを参照してください。

初任運転者適性診断を受診できる機関リスト

3か月点検

一般貨物自動車運送事業用のトラックは、3カ月定期点検を実施しなければなりません。

初任運転者の特別な指導

適性診断とは別に、15時間以上の講習と20時間以上の添乗等による実技指導をしなければなりません。

ドライバー12項目研修

毎年、以下の12項目について運行管理者を中心として、ドライバー全員に教育をした上で、議事録を残さなければなりません。

ドライバー教育12項目

  • ・事業用自動車を運転する場合の心構え
  • ・事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
  • ・事業用自動車の構造上の特性
  • ・貨物の正しい積載方法
  • ・過積載の危険性
  • ・危険物を運搬する場合に留意すべき事項
  • ・適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
  • ・危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
  • ・運転者の運転適性に応じた安全運転
  • ・交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法
  • ・健康管理の重要性
  • ・安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法

健康診断

毎年、ドライバー全員に最低1回の健康診断を受けさせなければなりません。
休日に行ってもらうのは難しいでしょうから、なんとか勤務日に仕事を調整し、受けに行ってもらうようにしなければなりません。
基本的にはその時の給料は支払うべきです。

事業報告書・事業実績報告書の提出

毎年、運送事業の決算情報を報告する「事業報告書」と、走行距離や輸送トン数等を報告する「事業実績報告書」を提出しなければなりません。

その他、一般貨物自動車運送事業者になった場合にやらなければいけないことについては、以下のページをご覧ください。

車両停止行政処分のリスク

第一種貨物利用運送事業者は、違法行為があったとしても、会社に対して行政処分が下されることは稀でしょう。
しかし、一般貨物自動車運送事業となると、たった一人のドライバーの違法行為をきっかけに監査が入り、会社に対して行政処分が下されます。
それにより、複数台の車両が停止処分になるというリスクもあります。
万が一、「営業停止」となると、その営業所は実運送だけでなく、利用運送業務すらもできなくなり、電話を取ることもできなくなります。
大きなトラックを運行する一般貨物自動車運送事業は、当然、その義務や責任も第一種貨物利用運送事業より格段に大きくなるというわけです。

一般貨物自動車運送事業許可を取った場合のメリット

第一種貨物利用運送事業ももちろん立派な事業ですし、とても大きく事業を展開している会社も存在します。
しかし、事業というものはリスクがあるほどリターンが多いのも確かです。
一般貨物自動車運送事業はさきほど説明したように、負担やリスクが存在しますが、第一種貨物利用運送事業とは比べ物にならない程のチャンスがあります

組織化できる

事業規模向上!!

事業規模向上!!

一般貨物の許可を取れば、更に大きな商談も出てくるでしょう。
利用運送では受けることができなかった、自社便ならではの依頼も柔軟に受けることができます。
一般貨物自動車運送事業者になるということは、何人ものドライバーを率い、すでに組織になる準備が整ったということです。これからが本当の経営です。
それにより、社員の福利厚生を厚くすることもできますし、会社としてのブランディングも更に強める選択肢は増えていきます。
自社社員としてのドライバーと会社一丸となり、物流の一翼を担う組織を遠慮なく作っていきましょう。

大型トラックも使える

決して大型トラックを持っている事業者が偉いというわけではありません。
しかし、可能性が広がるということは、事業の展開も比較にならないほど、大きく広げることもできる、ということになります。
また、大型トラックを導入すれば、運転者に高い給料を支払うことができるようにもなるわけです。

大型トラック

大型トラック

トラック協会で活躍できる

第一種貨物利用運送事業者でもトラック協会には入れますが、車両リースの辛さなどトラック自体に関する悩みを共有することはできませんから、なかなか一緒の境遇で活動することは難しいでしょう。
実運送事業者となれば、それより一層切磋琢磨できる会社の社長と出会えるチャンスも格段に広がりますし、運送事業の未来を一緒に語る仲間もできるでしょう。

全日本トラック協会

グリーン経営認証やGマーク

これらも第一種貨物利用運送事業では取り組めない準公的なブランディング手法です。
経営陣の気持ち次第で、既に準備されている「良い会社を作る方法」が様々用意されています。
Gマークロゴ グリーン経営認証ロゴ

※全日本トラック協会、エコモ財団より引用

まとめ

利用運送から一般貨物自動車運送事業(営業ナンバー・緑ナンバー)になるためには、多くの負担とチャンスがあります。
しかし、事業の可能性は、そこで新たに発生する負担のみで考えるべきではないでしょう。
考えるべきは、収支の問題と、その負担を適法に処理できる人的資産を確保できるかどうかという問題を、建設的に考えるべきであり、なによりも「その仕事をやりたいかどうか!!」です。
強い気持ちさえあれば、クリアできないハードルなんてありません。

行政書士

チャンスがあるのであれば、ぜひ一般貨物自動車運送事業の許可取得にチャレンジしましょう!

 

  • 一般貨物自動車運送事業許可申請ポイントを、マンガでわかりやすく解説!

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