運送業許可の整備管理者の資格要件、仕事、選任届について行政書士が解説
一般貨物自動車運送事業者の車両の安全の責任者、「整備管理者」。整備管理者になる方法や選任の仕方、仕事内容、2年に1度受講義務のある講習、補助者などについて解説します。これから新規許可を取ろうとしている会社様、必見です!
【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】整備管理者とは?
整備管理者とは道路運送車両法第50条で以下のように定められています。
具体的には後ほど詳しく解説します。
整備管理者の仕事(道路運送車両法第50条)
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- (整備管理者)
第五十条 自動車の使用者は、自動車の点検及び整備並びに自動車車庫の管理に関する事項を処理させるため、自動車の点検及び整備に関し特に専門的知識を必要とすると認められる車両総重量八トン以上の自動車その他の国土交通省令で定める自動車であつて国土交通省令で定める台数以上のものの使用の本拠ごとに、自動車の点検及び整備に関する実務の経験その他について国土交通省令で定める一定の要件を備える者のうちから、整備管理者を選任しなければならない。
2 前項の規定により整備管理者を選任しなければならない者(以下「大型自動車使用者等」という。)は、整備管理者に対し、その職務の執行に必要な権限を与えなければならない。
(選任届)
第五十二条 大型自動車使用者等は、整備管理者を選任したときは、その日から十五日以内に、地方運輸局長にその旨を届け出なければならない。これを変更したときも同様である。
- (整備管理者)
この通り、車両と車庫について点検及び整備を管理する立場として定められています。
ただし、当然ですが整備管理者自らが全車両の日常点検を実施する必要はありません。運転者が毎日しっかり日常点検を実施することを管理し、点検結果による運行可否を判断することが求められています。
2年に1度の研修を受ける必要があります
整備管理者に選任された方は、2年に1度は整備管理者選任後研修を受ける必要があります。
整備管理者選任後研修は運輸支局にて定期的に開催されています。
整備管理者になるための資格要件は?
2年の実務経験プラス整備管理者選任前研修で選任する方法
多くの一般貨物自動車運送事業者はこちらの選任前研修を受けた方を整備管理者に選任するでしょう。
運送事業者等での補助者としての整備管理業務や点検・整備の経験が2年以上あれば、整備管理者選任前研修を受けることで、整備管理者に選任することが可能です。
整備管理者選任前研修の申込方法
申込先は各運輸支局になります。
研修の所要時間は半日です。
例えば東京だとコチラのページの「整備管理者関連」の箇所に掲載しています。
同じような名前の「整備管理者選任後研修」がありますが、それではありません。
「整備管理者選任前研修」を受けてください。
選任後は小さい手帳がもらえますが、選任前はA4サイズの「整備管理者選任前研修修了証」がもらえます。
手帳では選任はできません。
どの回もすぐに満員になってしまうので、ご自分の運輸支局のページはお気に入りに入れておいて、発表されたらすぐに申し込めるようにしておきましょう。
開催時期は運輸支局でまちまちです。
どの都道府県で受けても認められるので、隣の都道府県もチェックしておくのがよいでしょう。
申込に必要な書類はほとんどの運輸支局で運転免許証コピーだけです。
参考に東京運輸支局の申込用紙を掲載します。
実務経験に認められる業務とは?
実務経験の場合、必ずしも運送事業者での実務経験が2年なければいけないわけではなく、白ナンバーの自動車でも整備の実務にカウントされます。
関東運輸局に内部的な取り扱いを確認したところ、明文化はされていませんが、「整備管理者を選任している事業者での実務」というものを求めているとのことでした。
実務経験と認められる業務
国土交通省関東運輸局の整備管理者制度の解説では「点検又は整備に関する実務経験」とは、以下のものをいいます。
- ・ 整備工場、特定給油所等における整備要員として点検・整備業務を行った経験
(工員として実際に手を下して作業を行った経験の他に技術上の指導監督的な業務の経験を含む。)
・ 自動車運送事業者の整備実施担当者として点検・整備業務を行った経験 - 「整備の管理に関する実務経験」とは、以下のものをいいます。
・ 整備管理者の経験
・ 整備管理者の補助者(代務者)として車両管理業務を行った経験
・ 整備責任者として車両管理業務を行った経験 - とあります。
「整備工場、特定給油所等」の「等」にあたるのが、自家用自動車にて整備管理者を選任している事業者ということでよいのでしょう。
自動車運送事業者には道路運送法から考えると「貨物軽自動車運送事業」も入っていますが、貨物軽自動車運送事業は10台未満の場合、整備管理者を選任する必要がありません。従って、整備管理者を選任していない9台以下の車両で貨物軽自動車運送事業者を営んでいる会社での実務を2年以上経験した人は、認められるのかどうかは微妙なところだと思われます。
実務経験については運輸支局の保安担当に確認すると安心です。
国家資格整備士の資格で選任する方法
国家資格の整備士(自動車整備士技能検定の合格者)は1級から3級の中で、ガソリン、ジーゼル、シャシ、エンジンどれでも大丈夫です。
国家資格があれば実務経験は必要ありません。
認められる整備士の種類
以下の整備士資格は一般貨物自動車運送事業整備管理者として選任できます。
- *一級小型自動車整備士
* 二級ガソリン自動車整備士
* 二級ジーゼル自動車整備士
* 二級自動車シャシ整備士
* 三級自動車シャシ整備士
* 三級自動車ガソリン・エンジン整備士
* 三級自動車ジーゼル・エンジン整備士 - 2~3級の二輪自動車整備士は選任できないとのことでした。
(なにかの公示されている文書に書いてあるわけでないですので、個別で確認してください)
たしかに、実務経験の方は二輪かそれ以外という区分ですが、国家資格整備士については1級から3級と書いてあるだけなので、記載が不備なわけです。
整備管理者の必要人数
整備管理者は運行管理者とは異なり、トラック台数によって変わりません。
1営業所に1人いれば法的には問題ありません。
ちなみに軽貨物は10台以上になるときに整備管理者を選任しなければならないので、9台から10台に増車するとき、整備管理者がいないと増車ができないので注意が必要です。
参考に一般貨物自動車運送事業以外も含めた整備管理者の必要人数も解説します。
整備管理者の必要人数
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- 【事業用(軽貨物は除く)】
バス(乗車定員11人以上) 1台以上
トラック、タクシー(乗車定員10人以下) 5台以上(一般貨物自動車運送事業も5台以上。5台未満の場合、ルール上は選任の義務無し) - 【自家用】
バス(乗車定員30人以上) 1台以上
バス(乗車定員11人以上29人以下) 2台以上
トラック(車両総重量8トン以上) 5台以上 - 【レンタカー】
バス(乗車定員11人以上) 1台以上
トラック(車両総重量8トン以上) 5台以上
その他 10台以上
- 【事業用(軽貨物は除く)】
- 【貨物軽自動車運送事業】
軽自動車又は小型二輪自動車 10台以上
整備管理者の仕事とは?
整備管理者の仕事は、道路運送車両法施行規則の第32条で以下のように定められています。
これを見てわかるように、整備管理者の仕事は車両の安全と車両を適切に点検・整備するための車庫の管理が大きな仕事です。
整備管理者の仕事
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- ・日常点検について、その実施方法を定め、実施させること
・日常点検の実施結果に基づき、自動車の運行の可否を決定すること
・定期点検について、その実施方法を定め、実施させること
・日常点検、定期点検又は随時必要な点検の結果から判断して、必要な整備を実施すること又は整備工場等に実施させること
・定期点検又は前号の必要な整備の実施計画を定めること
・点検整備記録簿その他の記録簿を管理すること
・自動車車庫を管理すること
・上記に掲げる業務を処理するため、運転者及び整備要員を指導監督すること
- ・日常点検について、その実施方法を定め、実施させること
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整備管理者の選任届
整備管理者を選任したら15日以内に管轄運輸支局の整備保安担当部署に提出します。
整備管理者選任前研修で2年の実務経験の場合の添付書類
実務経験で選任する場合、「2年の実務経験を証明できる書類」と「解任命令を受けていない宣誓書」を添付して選任届を提出します。
・選任前研修修了証明書(写)
・「道路運送車両法第53条に基づく解任命令により解任され、2年を経過しない者でないことを信じさせるに足る書面」
国家資格の整備士の場合の添付書類
国家資格にて選任する場合、「整備士資格者証」と「解任命令を受けていない宣誓書」を添付して選任届を提出します。
・自動車整備士技能検定合格証書等(写)
・「道路運送車両法第53条に基づく解任命令により解任され、2年を経過しない者でないことを信じさせるに足る書面」
これは前項の実務経験の宣誓書とまったく同じもので大丈夫です。
整備管理補助者を選任するには?
整備管理者の補助者を選任した場合、整備管理者が欠勤、一時的不在の時等に一定条件の下、整備管理者に代わり一定の業務を行わせることができます。
※運行可否の決定及び日常点検の実施の指導等、日常点検に係る業務に限ります。
整備管理補助者を選任するときにやらなければいけないこと
1.補助者は、整備管理者の資格要件を満足する者又は整備管理者が研修等を実施して十分な教育を行った者から選任すること。
2.補助者の氏名等及び補助する業務の範囲が明確であること。
3.整備管理者が、補助者に対して下表に基づいて研修等の教育を行うこと。
整備管理者は、選任された補助者に対して次の教育を実施しなければなりません。
教育を実施したら教育記録簿を作成し、使用した資料のコピーとともに保存しておいて下さい。
整備管理補助者への研修
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- 以下のタイミングごとに・(中黒点)の内容をしっかり指導してください。
- 【補助者を選任するとき】
・整備管理規程の内容
・整備管理者選任前研修の内容(整備管理者の資格要件を満足する者以外が対象) - 【整備管理者選任後研修を受講したとき】
・整備管理者選任後研修の内容 - 【整備管理規程を改正したとき】
・改正後の整備管理規程の内容 - 【行政から情報提供を受けたときその他必要なとき】
・行政から提供された情報等必要に応じた内容
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4.整備管理者が、業務の執行に必要な情報を補助者にあらかじめ伝達しておくこと。
5.整備管理者が、業務の執行結果について、補助者から報告を受け、又必要に応じて結果を記録・保存すること。
補助者を選任した場合、補助者名簿に必要事項を記入して社内掲示し、従業員全員に周知徹底しなければなりません。
こんなことを書いていると、もはや整備管理者選任前研修を受けた上で正規整備管理者に選任した方が楽ですね。
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