軽貨物黒ナンバー事業者のコンプライアンス・帳簿と監査の解説

公開日:2021年6月13日 / 更新日:2022年6月25日

軽黒ナンバーのルール

軽貨物黒ナンバーは個人事業主で1台からでも始められてお手軽なので昨今開業者数が激増しています。
一般貨物に比べると開業自体は簡単ですが、同じ運送業としてコンプライアンスや揃える帳簿はどうしたらよいのでしょうか。
軽貨物黒ナンバー事業者の義務と監査のルールについて解説します。

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋13年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

義務について

軽貨物黒ナンバーは無法地帯と思われていますが実は全くそんなことはありません。
やらなければいけないことと、やらなくてもよいことを解説します。

労働時間・運転時間のルール

個人事業主と言っても無制限に働いて良いわけではありません。
黒ナンバーも貨物自動車運送事業者ですから「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成13年国土交通省告示第1365号)」に縛られます。

自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の大事なところ抜粋

  • ・拘束時間(労働時間+休憩時間) 原則最大1日13時間(週2日まで16時間までOK)。1か月293時間まで。
  • ・運転時間 2日を平均して1日当たり9 時間まで。2週間平均で1週間当たり44時間まで。
  • ・休息時間(その日の終業時間から翌日の始業時間まで) 最低8時間

やらなければいけないこと・揃える帳簿

やらなければいけないこと・帳簿等一覧

  • ・対面点呼
  • ・点呼記録簿の作成及び1年保存
  • ・従業員に対する指導及び監督(年間教育)
  • ・休憩(睡眠)施設の管理
  • ・酒気帯者の乗務禁止
  • ・健康状態等把握で問題あり乗務員の乗務禁止
  • ・本拠ごとに事業用自動車の点検及び清掃のための施設を設置
  • ・過積載禁止
  • ・適切な積載方法
  • ・道路法における通行の禁止又は制限等違反の防止
  • ・異常気象時等における措置
  • ・車両の点検整備(3カ月点検は不要です)
  • ・途中点呼の義務(乗務前及び後両方対面点呼不可の場合)
  • ・営業所と車庫の適切な距離
  • ・整備管理者の選任(同一事業者の黒ナンバーが10台以上になった場合)

個人事業主でも開業できる軽貨物黒ナンバーですが、対面点呼が義務になっています。
対面と言うことは当然もう一人の人間がいなければならないということです。
従って本当に一人だけでは黒ナンバーは開業することができません。
家族でいいので必ず対面点呼してもらうようにしてください。
※法律が現実に合ってないと言ったらそれまでですが、ルールはそうなっているのですからこの法律の下で黒ナンバーをもらう以上はルールに従うことを承諾するしかないのです。残念ながらそれが法治国家というものです。

対面点呼ではなにを確認しなければいけないのか?

乗務前はもちろん、乗務後も対面点呼が必要です。
点呼執行者は自社従業員であれば適切な権限付与した人であれば誰でも大丈夫です。(運行管理者資格は必要ありません)

乗務前点呼

  • ・酒気帯びの有無:アルコールチェッカーを使用して酒気がゼロであること
  • ・疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無
  • ・車両日常点検が完了し、問題の無いこと

ここに書いてある通り、「車両日常点検完了」→「対面点呼」の順番が大切です。

点呼してから車に行って日常点検して出発という順番では出発できません。
点呼は事務所でも車庫でもどちらで実施しても構いません。

乗務後点呼

  • ・アルコールチェッカーを使用して酒気がゼロであること

なぜ対面点呼をしなければならないのか?

電話や顔色は見えません。声だけでドライバーの調子を判断するには材料が少なすぎます。
ましてやLINEでのやりとりなんてなにもわかりません。
やはり対面で毎日顔を合わせているからこそ、ほんの少しの違和感に気付けるのです。
テレビ電話であってもそれは気付けません。やはり対面が大切です。
スマホで便利になった時代ではありますが、人間の微妙な体調の変化や心情の違和感を感じるのは生身同士でなければわからないものです。
「電話でいいだろう」「LINEでも問題ないだろう」この「だろう」は、運転免許教習で「だろう運転は絶対ダメだ」と教えてもらって誰もが忘れない言葉ではないでしょうか。そのマインドで運転したらなにが起きるでしょうか?
損保会社の人と話していても、重大事故のキッカケなんてほんの少しの異常だそうです。それに気づくのは毎日のマジメな積み重ねしかありません。

やらなくてもいいこと、揃えなくて良い帳簿

一般貨物自動車運送事業者では義務となっていることでも以下の項目は軽貨物黒ナンバー事業者は行う必要がありません。

やらなくていいこと一覧

    • 運輸安全マネジメント
    • 必要な員数のドライバー
    • 常時選任運転者要件
    • 長時間等業務の場合の交代運転者準備
    • 乗務等の記録(運転日報)の作成及び1年保存
    • 運行記録計(タコメータ)による記録
    • 事故の記録
    • 運行指示書による指示・記録・1年保存
    • 運転者台帳
    • 従業員に対する指導及び監督と適性診断(初任、高齢、事故惹起)
    • 運行管理者の選任
    • 運行管理規程の定め

運転日報は意外と義務ではありません。

初任運転者としての適性診断や特別な指導も必要ありませんが、毎年の指導教育は必要です。

個人事業主ドライバーを多数取りまとめて事業を行っている事業者の義務

最近はamazonなどの仕事を数十台~数百台の外注を使って大量に受注している会社が増えてきました。
その多くはスマホなどで仕事の連絡だけ取り合い、会うことはありません。
仕事を振る方には規制はありませんが、使っている外注がすべて対面点呼を実施していない違法事業者であることを黙認しながら使うのはどうでしょうか。
また、毎年12項目の指導教育を実施していなければなりませんが、それについても個人事業主だから勝手にやってくれよ、でいいのでしょうか。

それらを適切にやらないことで事故が起きたら誰の責任になるのでしょうか。

外注といえども、傘下の事業者が重大事故を起した場合にコンプライアンスについてどのような活動をしていたか説明を求められたとき「下請けがやったことなのでうちは知りません」で通るでしょうか。

「そんなことしてたら仕事なんてできないよ」という声があがるようでしたら、その仕事は「やってはいけないと法律で定められている仕事」ということです。

今一度、安全のための法律順守を真剣に考えてみましょう。

監査について

監査のやり方については「貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」で規定されています。
軽貨物事業者についても一部準用されているので、適用されるものを列挙していきましょう。
※文中の項番は通達中の番号です。

自動車その他の輸送施設の使用停止処分、事業の全部又は一部の停止処分(許可の取り消しはルール上存在しません)

当該営業所の廃止等の場合、近接営業所に行政処分が移動。合併等も同様。

行政処分等を行った日から原則3月以内に報告を行うよう措置

行政処分日数は一般貨物行政処分別表と同じ

最高速度違反行為(下命又は容認に係るものは除く。)その他の別に定める違反行為については、別途個別に処分する

違反点数制度は準用しない

処分日車数における処分車両数及び処分期間の配分の決定は、処分権者が行うものとする。
※一般貨物は処分日数合計を対象台数で均等割りするけど、軽貨物はそうでないかもしれないという意味。

自動車等の使用停止処分は、原則として、違反営業所等に所属する事業用自動車について、処分日車数に基づき6月以内の期間を定めて使用の停止を行うものとする。

試用対象車両台数最大5割制限の準用無し(理論上最大全台でも停止され、最大6カ月)

ナンバー領置あり

貨物軽自動車運送事業者に対する事業停止処分は、動車等の使用停止処分期間が6月を超えることとなった場合又は6(1)③、④(5(1)⑧に該当するものに限る。)若しくは⑤のいずれかに該当することとなった場合に、原則として、当該違反営業所等に対して、6月の間行うものとする。
6(1)③ ナンバー領置義務違反
6(1)④ 以下の3年以内同一違反
5(1)⑧:法第60条第4項の規定による検査(監査)を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述を行った場合
6(1)⑤ 以下の3年以内同一違反
事業計画遵守命令違反 安全確保命令違反(現実は無いでしょう)
公衆の利便を阻害する行為の禁止命令違反(現実は無いでしょう)
災害の救助その他公共の福祉を維持するため必要な命令(これもあまり考えにくいですね)

(4) 処分対象営業所は、事業停止期間中、当該営業所に所属する全ての事業用自動車について使用の停止を行うほか、当該営業所に係る関係行為を停止させるものとする。

(5) 事業停止処分を行うときは、処分対象営業所に所属する全ての事業用自動車について、自動車検査証の返納及び自動車登録番号標の領置を併せて行うものとする。ただし、自動車登録番号標の領置が特に困難であると認められる場合は、当該事業用自動車(被けん引車を除く。)の総走行距離計による確認又は臨店による監視その他当該事業用自動車の使用の停止を確認するための適切な措置をもってこれに代えることができる

※(4)(5)以外は準用と書いてないので該当しないということでよいでしょう。例えば、5(1)内「全く点呼してない場合の30日事業停止」5(8)飲酒運転等による14日事業停止付加など。

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