運送業の多重構造の問題点とは?多重下請け是正のための法改正について解説【お気楽コラム】

公開日:2024年3月3日

【お気軽コラム:運送業のトレンド記事をホームページ記事作成のプロにお願いして作成したものをアップするコーナーです。法的な厳密な点は監修してないので、ネット記事のまとめとして雰囲気把握のために気楽にご覧下さい:トラサポ鈴木】

2024年4月からいよいよはじまる、運送業の働き方改革。

いわゆる「2024年問題」とも呼ばれる、時間外労働の規制を控える中、運送業の多重下請け構造にも新たな規制が導入されます。

物流業界では、荷主から依頼を受けた大手会社が下請け業者へ依頼し、一次請けをした下請け業者がさらに下請けの会社へと依頼する多重下請け構造が当たり前となっています。運送業のなかにはトラックを持たない会社もあります。

その一方で、運送業の多重構造が問題視されていることも忘れてはいけません。今回は、運送業の多重構造の問題点や改善の流れ、2024年問題による多重下請け是正の法改正について解説します。

運送業の多重構造の仕組みとは

運送業の多重構造とは、荷主から一次請けをした会社の下にたくさんの下請け会社が連なっているという仕組みです。そのピラミッド構造の一番上にいるのは貨物利用運送事業の会社で、この事業を開始するためには貨物利用運送事業許可を得て登録する必要があります。

この下請け業者がさらに別の業者へ委託し、二次受け、三次受け、四次請けなど多重になっていく状態が、多重下請け構造です。

貨物利用運送事業を行う会社がそれぞれの運送会社に輸送を割り振り、その仕事を引き受けた会社が情報をもとにさらに下請け会社に依頼をすることで多重構造ができあがります。

物流に携わる企業の中には、トラックを所持していない元請け会社が多く、道路で見かけるトラックのほとんどが三次請け、四次請けという場合が少なくありません。

車両を持たない運送を斡旋する元請け企業

自社車両をあまり持たない規模の大きな下請け企業

主に運送を担う中小企業

といった構図になっていて、多重下請けの状態が続いています。

最近では運送業でもITが導入され、輸送マッチングサービスも増えていますよね。このサービスのメリットは下請け業者の数が減ることですが、自社に適切な依頼であるかの判断がしにくく複雑であるため、上手く使いこなせない運送業者も少なくないでしょう。

荷物を運送する際、荷主である企業から、元請けとなる企業へ運送業務を依頼されます。この依頼された荷役を、元請け会社で運ぶのではなく、別の業者に委託するケースを“下請け”と呼びます。

多重下請け構造の問題点

現在も続いている運送業の多重構造には、さまざまな問題点があるとされています。その4つの問題点についてご説明します。

運送業者の収入格差による人手不足

国土交通省が発表した「トラック運送業の現状等について」によると、トラックドライバーは労働時間が長く、女性の割合は全体の2.5%、そして29歳以下の割合も10%以下であることがわかります。

運送業は労働条件がきつく、下請けの会社になればなるほど収入格差も生まれるでしょう。したがって、物流業界のなかでも人手不足が特に深刻化しているのは、一次請けの貨物利用運送事業を行う会社ではなく、階層の末端の下請け会社です。

下請け運送業者の労働時間の長さ

下請け運送業者の労働時間が長時間に及ぶのは、ただ荷物をトラックで運ぶ距離が長かったり、渋滞があるからという理由だけではありません。

下請けの運送業には荷物の積み込みや荷降ろしなどの作業が開始できる状態であるにもかかわらず、準備が整っていないため待たなければいけない「荷待ち時間」が発生します。

この時間はすぐに対応するために待機している状態であるため、労働時間です。しかし、企業によっては「待っているだけで働いていないから」という理由でこの時間を休憩時間としてしまい、残業代を支払わないことも少なくありません。

そのため、荷待ち時間は運送業者にとっては労働時間が長時間に及ぶだけでなく、利益の発生しない時間であるため、それに見合った給与を従業員が受け取れないというデメリットにもつながります。

下請け業者が倒産する可能性がある

これはどの業界にもいえることですが下請け会社の業績が悪化し、倒産することによって多重構造のピラミッドが崩れてしまう可能性があります。下請け会社が倒産してしまい売掛金の回収が困難になると、その下のすべての下請け会社に影響を及ぼすでしょう。

2023年の軽貨物運送業の倒産は3年連続で増加するとともに、過去最多という状況に陥りました。その内訳も個人事業主や中小零細企業がほとんどであり、運送業の多重構造の下請け業者の厳しさを物語っています。

構造的な問題

・トラブルが発生したときに責任の所在が分かりにくい(下請け業者へ責任を押しつけられやすい)

・元請けや一次請けが上、二次請け以降は下などの上下関係ができる

・物流システムの安全性が低下する

・非正規採用の人員が増える

などの問題があります。

過酷な環境ではたらく下請け業者や従業員を守るため、新しい規制が導入されました。

2024年4月から施行される法改正で多重下請け構造の何が変わる?

人手不足によって引き起こされる「物流の2024年問題」を解決するために、多重下請け構造を見直すべきという声が高まっています。

この問題に取り組むべく政府は2024年2月13日、「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法」の一部を改正する法律案を閣議決定しました。

一定規模以上の事業者を特定事業者として指定し、中長期計画の作成や定期報告等を義務付け、中長期計画に基づく取り組みの実施状況が不十分な場合、勧告・命令を実施。

特定事業者のうち、荷主には物流統括管理者の選任の義務付けがされます。

法改正後は荷主・物流業者にたいする規制が強化され、物流効率化のための措置へ努力義務が課されます。さらに特定事業者のうち荷主には、物流統括管理者の専任が義務付けられるため、覚えておきましょう。

多重下請け構造の改善に向けては、次の3つの取り組みが施行されます。

1:実運送体制管理簿の作成

元請け事業者へ、実際に運送する事業者の名前などが記載された「実運送体制管理簿」の作成が義務付けられます。名称だけでなく、役務内容や対価(附帯業務料、燃料サーチャージなどを含む)が記された書面の作成も義務化されます。

管理簿には、下記の内容を記録する必要があります。

  • 荷積日
  • 運送事業者の名称
  • 荷主企業の名称
  • その事業者が何次請けであるか
  • 荷物の内容
  • 配送ルートや区間
  • ドライバー名
  • 車番

作成した管理簿は、1年の保管が必要です。国からの要請があったときにいつでも提出できるよう、管理簿を準備しておきましょう。

2:管理規定の作成および責任者の選任

一定規模以上の元請け事業者は、多重下請け構造の適正化に関する管理規定の作成が義務付けられます。下請け業者へ業務を委託する場合は、責任者の選任も必要です。

3:荷待ち時間削減のための計画策定・定期報告

運転手が配送拠点などで待機する荷待ち時間が、物流の大きな問題になっています。

法改正後は、荷待ち時間削減を目的とした、計画の策定や定期報告が、大手荷主に義務付けられます。

今回の法改正が行われた後は、自社で管理簿をつけるだけではいけません。物流業界のピラミッド構造の上の方に位置している大手の会社は、ドライバーの荷待ち時間を削減するための「計画策定」を行う義務が課され、国に対しての定期報告が義務付けられます。

これは、国が運送業の多重構造の実態を把握するために重要な法律です。したがって、きちんと報告を行わなければ国から是正命令が出されたり、社名を公表されたりすることもあるので注意しましょう。

取り組みが不十分な場合は国からの是正勧告を実施の上、従わない場合は社名公表、是正命令が可能です。命令に違反した場合は、最大100万円の罰金が科せられます。

法改正後に物流はどう変わる?

法改正により物流が適正化されると、下請け業者へ委託する際の安全性、公平性向上につながります。

これまでは、下請けの実態を把握できていない元請け企業が多くありました。しかし法改正後は、どの下請け業者が何を運んでいるのか、どのような契約になっているのか、といった内容を可視化できます。

書面作成によって、業界全体の透明性が高まり、質の高い物流業務を目指せるでしょう。

荷造りや仕分けなどの付帯業務について、これまでは明記がありませんでした。そのため、必要にかられて業務を担うものの、対価を得られないという例が多く見られ、問題視されていました。

改正後はこれらの付帯業務についても、書面で内容、対価が記されるため、下請け業者が適正な報酬を受け取れるようになります。下請け業者がきちんと対価を受け取れる仕組み、長時間労働を強いられない取り組みで、物流業界の問題是正が期待されています。

まとめ

運送業の多重構造では、下請け業者が3社以上関係しているという複雑な構造となっていることも少なくありません。そして、それが下請け会社に利益が発生しない「荷待ち時間」を発生させ、長時間労働の原因にもなっています。多重構造の下層となっている中小企業では利益は少なく、労働は過酷で慢性的な人手不足に陥っています。この状況を改善するために、新しい法律が始まり国が実態を管理しやすい仕組みづくりをします。

多重下請け問題が改善されると、下請け業者が適正な時間、適正な価格で業務を請け負えるようになります。一定規模以上の元請け事業者、物流事業者にたいしての義務事項が増えるため、現状が見えやすくなり、物流業界の働き方改善、事故軽減を目指せるでしょう。

書面を作成することで、水掛け論になりがちな契約のトラブル、誤解などを未然に防げる点も、法改正のメリットです。

現在ではコロナ禍をきっかけとしてオンラインで買い物をする人が増加し、運送業の需要が高まっています。この消費者や企業のニーズは、コロナが五類に引き下げられた後も変わっていません。その一方で、トラックドライバーをしている中高年の世代が定年を迎えると、運送業の人手不足は加速し、指定された時間通りに配達できないなどの問題も起こりかねません。

2024年4月からはじまる働き方改革と合わせて、今回の法改正への対応として、荷主側も荷受け側も準備が必要です。委託する側は、勧告や命令を受けないように正しい書面等の作成、下請け側は書面等を確認の上、法に則って業務を遂行しましょう。