【相談事例】標準運賃料金表を届けるようトラック協会から催促されますがどうしたらよいですか

公開日:2023年5月21日 / 更新日:2023年7月3日

ご相談内容
【関東の運送事業者様】トラック協会から「標準運賃料金設定届出しましたか?」と催促の電話がありました。周りの運送会社も出しているようですが、うちの会社も出した方がいいのでしょうか?

行政書士の回答
改正貨物自動車運送事業法により設けられた「標準的な運賃の告示制度」に基づき、令和2年4月に標準的な運賃の告示がなされました。この標準運賃は運送業者が十分な利益確保ができるように国土交通省が運送業界や専門家と議論を重ねて作ったものです。相場より3割高い運賃などと言われているので、この運賃で仕事ができたら素晴らしいですよね。しかし、この標準運賃を届けたとしてもそれだけで必ずその運賃がもらえるわけでないので、運送会社の社長も迷っている人が多いです。このことについてどうすればいいかを解説します。

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

運賃料金設定届とは?

貨物自動車運送事業報告規則で、運送会社は運賃料金を変更したら30日以内に運輸支局長に提出しなければならないとされています。毎日の仕事によって運賃は一定ではないので、あまり意味がなく、そもそもこの制度は軽視されてしまっているのが現実です。

バス会社やタクシー会社は運賃が認可制で、その範囲の運賃が必ずもらえますし、その運賃でなければ運輸支局に怒られます。従って、運輸支局に提出する運賃表がものすごく意味を持ちます。一方、トラックの貨物運送業者は運輸支局長に運賃料金表を出しても実際の仕事ではそれに縛られませんし、その料金の報酬がもらえるわけではありません。

標準運賃とは?

令和元年11月に貨物自動車運送事業法が大幅改正されました。その際に標準的な運賃の告示制度が設けられ、それに基づき、令和2年4月に国土交通大臣が標準運賃を告示しました。

運送会社は告示された標準運賃だからといって届け出なければならないわけではありません。この告示運賃を”採用するのであれば”貨物自動車運送事業報告規則に基づき、採用した日から30日以内に運輸支局に届け出なければならないということになるわけです。

国土交通省自動車局の発表によると、2023年3月末時点での届け出は全国で3万1337件でした。全国の一般貨物自動車運送事業者数の約55%となります。2022年7月末時点では全国で49.2%だったので8カ月で約6ポイント増えました。

関東は2023年3月末時点で33.6%でした。2022年7月末時点では21.9%だったので5割増えました。
関東は全国平均をものすごく下げています。

国交省や全ト協が啓発している活動が徐々に芽を出してきています。岸田首相も2024年問題をテレビで言及するくらいに本腰を入れて来ています。

標準運賃を届け出るとどうなるの?

その「どうなるの?」という考え方は間違っています。逆に届け出ないでどうするのでしょうか?

国土交通省は本当に腰が重く、現場の運送会社の声などほとんど聞かず、全く役に立たないように思えますが、ここ数年は国土交通省にしては結構本気で頑張っているように見えます。

平成29年に標準約款を改正し、「積込料」、「取卸料」、「待機時間料」等の料金を、運賃とは別に取るべきだと言うことを世の中に知らしめました。

令和2年4月には標準運賃を告示しました。国土交通大臣が標準運賃を告示したことには運送業界も我々運送業専門行政書士もものすごく衝撃を受けました。しかし、本当に最悪のタイミングでコロナが流行してしまいました。コロナによって物流量は激減し、仕事を探すので精一杯で、運賃アップの交渉などする隙間はまったくなくなってしまいました。歴史的な変化に対してこんなに最悪のタイミングでコロナが出てくるのか・・・と愕然としました。

そのあと、荷主勧告制度もどんどん荷主に対して厳しくしましたが、荷主名はまったく公表されませんでした。どうせ荷主には厳しくできないんだ、、、と国に対して全く期待をしていないとき、急遽、2022年12月、公正取引委員会が優越的地位乱用で佐川など以下の13社を公表しました。下請けイジメをしたということで社名が公表されました。

佐川急便、三協立山、全国農業協同組合連合会、大和物流、デンソー、東急コミュニティー、豊田自動織機、トランコム、ドン・キホーテ、日本アクセス、丸和運輸機関、三菱食品、三菱電機ロジスティクスの13社です。

そして最近では2023年に入ると、経産省、国交省、農水省が、元請け運送事業者に対して運送体制台帳(下請運送事業者リスト)を作成する案を検討したり、荷主企業に物流管理統括者の選任すること、荷待ち時間を2時間以内にすることなど、急速に議論が進んでいます。

標準運賃の令和6年3月末までの時限措置を延長しようという議論も出ています。

2024年問題に対して国は本気で不安に思っています。そのために運賃が上昇することが必須条件であることは国もわかっています。もしこのまま2024年4月を迎えたら日本の物流は破綻し、経済は大きく停滞し、GDPが下がります。GDPが下がれば首相の支持率、自民党の支持率は大きく下がります。だから絶対に運賃上昇は政治家にとっても必要なのです。

あと一押し、それは「運送会社がどれだけ本気で運賃上昇を願っているか」です。そのバロメーターが標準運賃の設定届をどれだけ出しているかなのです。この運賃設定届での提出率が高ければ、国土交通大臣は絶対に法改正をもっと本気で取り組みます。逆に「当事者である関東の業者は我々が頑張ってやっているのにたったの33%しか賛同してくれないのか・・・」とやる気をなくします。人間、そんなものです、というか役所は数字エビデンスによってその行動を変えます。

もし、関東の運送会社の90%が標準運賃を届け出たらどうなると思いますか?

それが最後の一押しとなり、国は一気に動きます。トラック協会も本気を出します。

国会議員の選挙の投票率と同じです。数字は力です。一人一人の一票が国を動かします。

荷待ち時間や、荷主の理不尽な要求など、どの策も他の策待ちなのが一気に動きます。その歯車を噛合わせる最後の一手は、運送会社であるあなたなのです。

標準運賃を届け出るのはそれほど難しいことではありません。運輸支局の輸送窓口に行けばなんとかなります。

是非、今すぐ運輸支局に行ってください!

まとめ

標準運賃を届け出ても、すぐにその料金がもらえるわけではありません。

しかし、あなたが標準運賃を届け出て、みんなが届け出て、関東の届出数が過半数の50%を超えたとき、世の中は必ず変わります。

是非、今すぐ運輸支局に行って標準運賃の届出を行ってください!

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