【相談事例】運送業新規許可申請提出後にやらなければいけないこととスケジュールがわかりません

公開日:2023年5月3日 / 更新日:2023年5月13日

ご相談内容
【北海道札幌市に営業所があるお客様】運送業新規許可を行政書士に依頼して、運輸支局への申請までは終わったのですが、そのあとのスケジュールややるべきことがわからないようで教えてくれず不安です。これからどんなことを準備すればよいのでしょうか?

行政書士の回答
運送業許可申請は他の許可申請と異なり、申請して終わりではありません。むしろ申請したあとの方がやることが多いくらいです。運送業許可申請に慣れていない行政書士の人だと他の申請の感覚で進めてしまい、申請後がスムーズにいかないことが多くあるようで、申請途中から我々がお手伝いすることも少なくありません。また、最後の手続きについての知識不足により、緑ナンバーが付けられないという事態もあります。申請後にやらなければいけないことをご案内するので一つずつ準備していきましょう。

役員法令試験

申請した月の翌月以降の奇数月で常勤役員の貨物法令等知識を確認するための役員法令試験が開催されます。
試験実施日は、事前に教えてもらえる運輸局と、直前になってやっと通知が来る運輸局があります。
役員法令試験を受験できるのは登記されている役員のみです。執行役員などは受験できないのでご注意ください。
合格率は運輸局によって大きく違います。毎回ほぼ100%合格するところもあれば、一時は10%を切った九州運輸局などもありますが、大体60%くらいの運輸局が多い感覚があります。

問題数は30問、試験時間は50分、試験範囲は全国共通です。
しかし、30問と言っても、1問の中で5問全部正解しないとダメな問題などがあり、実質の問題数は若干異なります。
また、問題文の行数が単純に多い運輸局は、1問にかかってしまう時間が長くなり、合格率が低くなる傾向があります。
問題の出方も、条文集掲載の法律の順番に出てきて調べやすい運輸局と、バラバラの順番で出てくる運輸局があります。それだけで難易度は格段に変わります。

しかし、共通する試験対策は以下の2つです。
・条文集をすぐに開けるようになる訓練をすること
・過去問題を繰り返し解いて40分で26問正解するところまで持って行く。もちろんちゃんと条文集を開いて解いてください。

役員法令試験は2回までは受験できますが、2回落ちたら取り下げないといけなくて、そうするともう一度申請からのゼロスタートになってしまいます。また、1回目不合格で2回目の試験に合格しても、その分約2カ月許可が遅くなる可能性が出てきてしまいます。
早く取りたい運送業許可ですから、忙しいと思いますがなんとか頑張って勉強しましょう。

役員法令試験サポート行政書士の選び方

ちなみに法令試験サポートをしている行政書士がいますが、全国対応というところは辞めた方がいいかもしれません。運輸局によって問題の傾向と対策方法はまったく異なるので、せめて管轄運輸局に事務所がある行政書士にお願いするのがよいでしょう。

また動画配信だけで個別対応してくれないところもやめた方がいいかもしれません。受験者によって基礎知識、弱点はまったく違います。私が多くの申請者の法令試験家庭教師をやってきて思うことは、動画だけ見て合格できる人は条文集と過去問題だけ見れば自分だけの力で合格できるだろう、ということです。申請者によって、条文集の探し方の弱点や、勘違いするポイントは全く異なります。それは目の前で問題を解いてもらって、どこで時間を使っているのか、どこで悩んでいるのか、どこで勘違いするのかを、答案結果だけでなくリアルタイムで見ないとわからないからです。動画配信やEラーニング、オンラインではそれは絶対にできないことです。
動画配信では、あなたが「ここわからないな・・・」と困っている表情は絶対に伝わらないですよね。

1万円くらいだからダメ元でいいだろう、くらいであればいいかもしれません。

途中の補正対応

申請時に完璧な書類を作ることも可能ですが、多くの場合、多少の補正指示はなされます。その対応に日数がかかるとそれだけ許可が下りるまでのタイマーも停止するので遅くなります。補正指示が来たらすぐに対応しましょう。
また、申請後も申請書を見直して、間違いや不足書類に気付いたら自ら率先して運輸局に訂正書類を出しておきましょう。

2回目の残高証明

貨物運送業許可申請では、運転資金を確保していることの証明のために残高証明を2回提出しなければなりません。
1回目は申請時です。運輸局によっては、申請時には不要で申請後に申請日時点証明日の残高証明を後日提出するところもあります。
2回目のタイミングは、最終補正が来るタイミングが多いです。
関東運輸局など多くの運輸局は「この日以降の残高証明」を求められますが、近畿運輸局などは連絡日の「過去のこの日の残高証明」を求められます。大体、申請日から2~3か月後に要求されることが多いと思います。もちろん役員法令試験の1回目に不合格だと2回目の残高証明を求められる日付も遅くなります。どの運輸局も申請日から許可が下りるまで残高は必要資金を下回ってはいけないとなっているので、いつの残高証明を求められても文句は言えませんが、実際は一時的に下回ってしまうこともあるでしょう。油断して残高が下回ってしまうと過去には戻れないので注意しておきましょう。

許可が下りる

運輸局にもよりますが、運送業新規許可の標準処理期間は4~6カ月とされています。役員法令試験を1回で合格し、途中の補正指示もすぐに対応するのであれば、多くの場合、標準処理期間の中で許可が下りるでしょう。

補正の対応でもたもたしていたりすると、許可が下りるまでに10カ月かかってしまうこともあります。自社申請や素人行政書士に依頼すると10か月かかってしまうようです。

選任届(運行管理者、整備管理者)

許可が下りたら運行管理者と整備管理者の選任届を提出します。
整備管理者の場合、多くは整備管理者選任前研修修了証の添付で届け出ることでしょう。その場合は2年の実務経験が必要なので、整備の実務をしていた運送会社もしくは整備工場からのハンコをもらっておきましょう。
整備管理者選任前研修を受けただけで整備管理者になれると誤解している人はものすごく多いです。必ず申請前に、整備管理者選任前研修を受けた人が本当に2年以上の実務経験があり、かつ実務経験証明書がその会社からもらえるのか確認しておきましょう。
整備管理者選任前研修を受けても2年の実務経験がなければ整備管理者に選任できず、せっかく許可を取っても緑ナンバーを付けられないことになります。

運輸開始前確認報告

この運輸開始前確認報告と次項の「車検証の書換え」という手続きが、運送業許可の難しいと言われる理由です。
運輸開始前確認では、役員と運行管理者、整備管理者、ドライバー全員の社会保険書類、役員を除く雇用保険書類などの提出が必要なので、申請時未加入の方は許可が下りる前に社会保険事務所、ハローワークで手続きをしておきましょう。

もちろん社会保険も雇用労災保険も全員入っているという会社にとっては全く難しくない手続きです。

車検証の書換え

車検証の書換と緑ナンバー変更は同時に行います。
リース車両の場合は、リース会社から委任状を入手しておく必要があります。
営業所を管轄する運輸支局や登録事務所(陸事)にトラックを持ち込み、車検証書換からナンバー変更を行います。
既に同じ管轄の緑ナンバーであればナンバーはそのままでも構いません。
希望ナンバーにしたい場合は、2週間前くらいには予約しておきましょう。引き換え可能期間は1か月なのであまり早くに予約すると期限が切れてしまうので要注意です。
行政書士によっては出張封印と言って、申請者の車庫などでナンバーを取り換えて封印することができる人がいます。トラサポメンバーも多くの人は出張封印をすることができます。

車検証を書き換える日が決まったら必ず損保会社に連絡を入れて、スムーズに保険切り替えができるようにしておきましょう。

運輸開始届

車検証とナンバー変更が終わったら、任意保険を切り替えて、新しい車検証コピーと事業用になった任意保険証コピーを添付して運輸開始届を提出します。

運輸開始届は許可が下りてから1年以内に届け出る必要があります。

運賃料金設定届

普通は運輸開始届と同じタイミングで運賃料金設定届を提出します。
自社の運賃料金表を準備しておきましょう。

トラック協会の初回巡回指導

新規許可申請から約半年かけてやっと自社の緑ナンバーがついたと思ってもそれで終わりではありません。
運輸開始届から2~3カ月後にトラック協会が帳簿などのチェックに来ます。監査ではないので怖がる必要はありませんが、あまりに準備をしていなくて評価が低いと大変なことになるのでしっかり準備しておきましょう。特にD評価とE評価になると大変なので、せめてC評価になれるよう頑張りましょう。

基本的には「運転日報」「点呼記録簿」「車両の日常点検記録」を毎日つけましょう。

運転手については多くのやることがあります。「健康診断受診」「初任運転者適性診断受診」「初任運転者特別指導(15時間座学+20時間同乗研修)」「運転記録証明の取得」を実施した上で運転者台帳を作成しましょう。

車両の3カ月点検も実施しましょう。

「運輸安全マネジメント」の対応も必要です。

「運転者の研修計画表」も作成しておきましょう。

はじめの準備は大変ですが、一度整えてしまえば、あとは毎日の帳簿をマジメに作るだけです。

まとめ

運送業新規許可申請後は以下のような流れとなります。

(1)新規許可申請
~ (2)申請の翌月以降奇数月:役員法令試験
~ (3)2回目残高証明提出
~ (4)許可下りる(標準処理期間:申請(1)から4~6カ月後)
~ (5)選任届(運行管理者、整備管理者)
~ (6)運輸開始前確認(社会保険、雇用保険、労災保険)
~ (7)車検証&ナンバー変更
~ (8)運輸開始届、運賃料金設定届
~ (9)トラック協会の初回巡回指導(運輸開始届(8)から2~3か月)

途中でつまづくと、許可が出るまで簡単に数カ月遅くなってしまいます。

自社で申請する場合は、運輸局や登録事務所とよく相談しましょう。

行政書士に依頼する場合は安心できる運送業専門行政書士に依頼しましょう。

トラサポは運送業新規許可はもちろん、そのあとのコンプライアンス帳簿サポートの経験も豊富ですので、不安のある方は申請の途中からでも構いませんので、ぜひ頼ってください。
新規許可申請は他の行政書士に頼んでしまったから頼みづらいなんてことは気にしなくて大丈夫です。
餅は餅屋にぜひお任せください!!

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