名義借り状態から自分の営業ナンバー取得の条件、流れなど全てを専門行政書士が解説

公開日:2019年4月30日 / 更新日:2020年9月22日

自分でトラックを持ち込み、営業ナンバー会社の名義を借りて緑ナンバーを付けている。自分の仲間も3~4人になり、コンプライアンスの厳しさもあって、その運送会社から「そろそろ自分で営業ナンバー取ってくれないかな?」と言われている方、必見です。全ての疑問を解決します。

名義貸しをやめて営業ナンバー取得を切望している運送会社社長

 

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

名義借りのデメリット

正直、今もまだナンバー借りは珍しくはありません。よく耳に入ってきます。
しかし、今の世の中、そんな違法行為が長く続けられるような時代ではありません。
いろいろなご事情はおありだと思いますが、残念ながらそれは許されることではありません。

名義借り、名義貸しの罰則

貨物自動車運送事業法では両方に罰則を規定しています。

借りている方
3年以下の懲役または300万円以下の罰金、いずれかか両方
貸している方
3年以下の懲役または300万円以下の罰金、いずれかか両方
及び
行政処分として30日間の事業停止

よくあるパターン

ある運送会社に自分含めて3台のトラックを入れている。
緑ナンバーはその運送会社のものを毎月いくらか払って借りている。
運賃は、お客さんから直接もらうか、その運送会社から「外注費」と「実費」という形でもらっている。
しかし、もう数年前から社長からこんなことを言われている・・・。

名義貸しをやめて営業ナンバー取得を切望している運送会社社長

そうは言っても、自分で営業ナンバーなんてどうやって取ればいいかわからない・・・。
そもそも自分で取れるの?と思いますよね?

名義貸しをしていて、自分の営業ナンバー取得を渋っている人

下請け事業者に緑ナンバーを取って欲しいという親会社はどんどん増えています。
実際、緑ナンバーを取得してくれなかった事業者とは、数十年来の付き合いでも、泣く泣く付き合いをやめるしかなくなってしまうようです。
代わりの正規営業ナンバー事業者を探すのは大変だったようですが、そんなことで自社本体がやられたら元も子もありません。

しかし、安心してください。
今の時代、要件さえ揃えれば、営業ナンバーは必ず取れます!!
一つずつ、一緒に確認していきましょう。

一般貨物自動車運送事業の許可の取り方

では、一般貨物自動車運送事業の許可はどのように取ればよいのか、確認していきましょう。

<一般貨物自動車運送事業の許可要件>
たくさんありますが、一つ一つ丁寧に準備すれば必ず許可が取れます!
  • 1.運行管理者の選任
運行管理者資格者証を持っている人が一人以上必要です。 運行管理者資格者証は以下の2つのどちらかの方法で取得できます。
・国家試験に合格する
・基礎講習1回と一般講習4回を5年間かけて受講し、運行管理補助者を5年経験する
2.整備管理者の選任
以下のいずれかの人が一人以上必要です。
・(2年以上の整備・管理等の実務経験)+(整備管理者選任前研修を受講)
・国家資格の整備士
3.運転者の雇い入れ
5名以上の運転者が必要です。 ※原則、運行管理者と別の人で5名以上で、全員が社会保険、雇用労災保険に加入する必要があります。
4.営業所、休憩睡眠施設の確保
特に面積や設備要件はありませんが、用途地域による制限があるので要チェックです。
5.車庫の確保
5台以上の事業計画車両全てを余裕を持って格納できる広さの車庫が必要です。 営業所からの直線距離の制限(5~20km。運輸局及び地域によって異なります)があります。
6.「5台以上」のトラックの確保
軽自動車でない、1,4、8ナンバーの積載構造がある貨物自動車が5台以上必要です。 自社所有である必要はなく、ローンやリースでも構いません。 リースもファイナンスリースだけでなくオペレーティングリース、メンテナンスリースでも構いません。
7.運転資金の確保
6か月分の運転資金、12カ月分の地代家賃、車両費及び1年分の税金・保険の現金が必要です。 地代家賃、人件費、車両費によりますが、一般的には最低でも1500~2000万円の範囲の預金があることが必要です。
<緑ナンバーの申請準備からナンバー登録までの流れ>
条件をしっかり確認したあとは、申請の準備~緑ナンバープレートの取付まで全体を把握しましょう!
  • 1.許可要件の確認
 5台のトラック、営業所、車庫、運行管理者、整備管理者、必要資金などを要件通りに準備します
2.申請書類の準備、作成(※行政書士に依頼するとすごく楽で確実です)
 賃貸借契約書、見積書、残高証明書、幅員証明書、図面等
3.管轄の運輸支局を通じて運輸局に申請する
 申請書と添付書類を整えて2部提出します)
4.運輸局での審査
 この審査が3~5か月ほどかかります
5.申請月の翌月以降の奇数月に役員法令試験を受験する
 登記されている常勤役員の一人が合格する必要があります
6.2回目の残高証明を提出(申請から約2~3か月後)
 申請時の資金計画の必要金額を下回らないようにしましょう
7.申請から3~5か月後くらいで許可が下りる
 その後、許可証交付式にて許可証を受け取ります
8.登録免許税12万円を国土交通省に納付する
9.運行管理者と整備管理者の選任届を提出
10.運輸開始前確認報告を提出する
 社会保険や雇用労災保険の加入証明や運転免許証の準備が必要
11.事業用自動車等連絡書を運輸支局輸送担当にて発行してもらう
12.車検証を自社名義の緑ナンバー事業用に書き換える
 委任状などを用意して車検証を書き換える。ナンバー変更の必要があればトラックを管轄の運輸支局・登録事務所に持ち込む
13.運輸開始届を提出
 緑ナンバーでの事業を開始したら、緑ナンバー書き換え後の車検証を添付し、運輸支局に運輸開始届を提出して一連の流れが完了します

以上、まとめたように13段階もの手続きが必要で、その期間は準備を含めて最低でも6か月以上かかる大変な作業です。(上記、13段階PDFダウンロードはこちらをクリック

一般貨物自動車運送事業者になることで新たに発生する負担

緑ナンバーを付けると、一般貨物自動車運送事業者としての多くの義務が課されます。
すでに緑ナンバーを付けているので、おそらく日報などの帳簿は付けているかと思われます。
しかし、会社の社長としての責任が発生しますし、任意保険料もアップします。特に大きく異なるのは、緑ナンバー事業者としての帳簿等の義務のところです。
大きなところについて、一つずつ丁寧に解説します。

消費税対象経費の減少

もし現状、仲間への給料を外注費で払っている場合、消費税課税売上から、それらの外注費を引いているはずです。
例えばその外注費が全て自社従業員の給与になり、消費税対象経費でなくなることを考えてみましょう。
つまり、今までより多くの消費税を支払わなくてはならなくなります
例えば、今まで5000万円の売り上げがあって、4000万円の外注費だったとしたら、5000万-4000万=1000万円からその他消費税控除対象経費を引いた金額に対して消費税を納めていました。
従って、多くても収める消費税は80万円程度でした。
しかし、一般貨物自動車運送事業になると、従業員給与は消費税控除対象経費となりません。
5000万円の売り上げであれば、労働分配率が50%として人件費が2500万円となります。するとその2500万円分は少なくとも消費税控除売上とならないわけです。
つまり、今の例であれば、ざっくり言えば2500万円の消費税8%=200万円の消費税を余分に納めることになるということです。

租税公課経費が増えるので、法人税は逆にその分だけ減ります。

このあたりの詳細については、税理士と綿密に相談するようにしてください。

車両の保険

トラックの自賠責保険は、自家用積載2トン超が28720円、事業用積載2トン超が39540円です。

任意保険については当然損保会社によって異なりますが、事業用トラックの方が大幅に高くなります。

帳簿・点呼・教育・診断

一般貨物自動車運送事業者になると、毎日の義務が格段に増えます。しっかりやらなければ行政処分で車両を停止させられてしまいます。

対面点呼・点呼記録簿

出発時と乗務終了時に、必ず運行管理者による対面点呼をしなければなりません。

日報(乗務等の記録)

毎日、乗務日報を記録しなければなりません。ドライバーの協力が不可欠です。

運転者台帳

ドライバーを雇い入れたら、運転者台帳を作成しなければなりません。

初任運転者の適性診断の受診

ドライバーを雇ったら、始めの1回だけでよいので、NASVA等で初任運転者の適性診断を受ける必要があります。
適性診断を受診できる機関についてはこちらを参照してください。

初任運転者適性診断を受診できる機関リスト

3か月点検

一般貨物自動車運送事業用のトラックは、3カ月定期点検を実施しなければなりません。

初任運転者の特別な指導

適性診断とは別に、15時間以上の講習と20時間以上の添乗等による実技指導をしなければなりません。

ドライバー12項目研修

毎年、以下の12項目について運行管理者を中心として、ドライバー全員に教育をした上で、議事録を残さなければなりません。

ドライバー教育12項目

  • ・事業用自動車を運転する場合の心構え
  • ・事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
  • ・事業用自動車の構造上の特性
  • ・貨物の正しい積載方法
  • ・過積載の危険性
  • ・危険物を運搬する場合に留意すべき事項
  • ・適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
  • ・危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
  • ・運転者の運転適性に応じた安全運転
  • ・交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法
  • ・健康管理の重要性
  • ・安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法

健康診断

毎年、ドライバー全員に最低1回の健康診断を受けさせなければなりません。
休日に行ってもらうのは難しいでしょうから、なんとか勤務日に仕事を調整し、受けに行ってもらうようにしなければなりません。
基本的にはその時の給料は支払うべきです。

事業報告書・事業実績報告書の提出

毎年、運送事業の決算情報を報告する「事業報告書」と、走行距離や輸送トン数等を報告する「事業実績報告書」を提出しなければなりません。

その他、一般貨物自動車運送事業者になった場合にやらなければいけないことについては、以下のページをご覧ください。

車両停止行政処分のリスク

行政処分については、監査が入った場合は、今も同じような状況にありますが、ナンバー借り状態と、社長という状態ではそのリスクは全く異なります。
一般貨物自動車運送事業となると、たった一人のドライバーの違法行為をきっかけに監査が入り、会社に対して行政処分が下されます。
それにより、複数台の車両が停止処分になるというリスクもあります。
しかし、その間もドライバーには当然給与を補償しなくてはなりません。
大きなトラックを運行する一般貨物自動車運送事業は、当然、その義務や責任も白ナンバートラック事業より格段に大きくなるというわけです。

一般貨物自動車運送事業許可を取った場合のメリット

一般貨物自動車運送事業の許可業者になるということは、さきほど説明したように、負担やリスクが存在しますが、ナンバーを借りて隠れながら仕事をする状況とは比べ物にならない程のチャンスがあります

本気で仕事を取りに行ける

事業規模向上!!

事業規模向上!!

一般貨物の許可を取れば、大きな商談もあるでしょう。
一般貨物自動車運送事業者になるということは、個人の集まりではなく、すでに組織になる準備が整ったということです。これからが本当の経営です。
それにより、社員の福利厚生を厚くすることもできますし、会社としてのブランディングも更に強める選択肢は増えていきます。
「会社にする」ということは、それまでとは全く次元が異なるステージです。
会社一丸となり、物流の一翼を担う組織を遠慮なく作っていきましょう。

トラック協会に入れる

一般貨物自動車運送事業は、都道府県単位と全国単位でトラック協会があります。
切磋琢磨できる会社の社長と出会えるチャンスも格段に広がりますし、運送事業の未来を一緒に語る仲間もできるでしょう。

全日本トラック協会

グリーン経営認証やGマーク

経営陣の気持ち次第で、既に準備されている「良い会社を作る方法」が様々用意されています。
Gマークロゴ グリーン経営認証ロゴ

※全日本トラック協会、エコモ財団より引用

まとめ

ナンバーを借りている状態から、正規の一般貨物自動車運送事業(営業ナンバー・緑ナンバー)になるためには、多くの負担があります。
しかし、事業の可能性は、そこで新たに発生する負担で考えるべきではないでしょう。
今の時代、違法状態を長く続けられるような世の中ではありません。
考えるべきは、収支の問題と、その負担を適法に処理できる人的資産を確保できるかどうかという問題を、建設的に考えるべきであり、なによりも「その仕事をやりたいかどうか!!」です。
強い気持ちさえあれば、クリアできないハードルなんてありません。

行政書士

チャンスがあるのであれば、ぜひ一般貨物自動車運送事業の許可取得にチャレンジしましょう!