個人での緑ナンバー取得方法・要件・注意点を運送業許可専門行政書士が詳しく解説

公開日:2021年5月24日 / 更新日:2024年1月21日

「個人で緑ナンバーは取れないですよね?」このような質問を多く受けます。個人事業主で取るべきか法人で取るべきかという議論はあれども、運送業法ではそれらを区別しておらず、どちらも同等に扱います。おそらく「個人事業主で1台で緑ナンバー取れるの?」という質問なのでしょう。個人事業主で緑ナンバーを取ること自体は可能です。その際の注意点や具体的な方法について解説します。

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

個人で緑ナンバーは取れるのでしょうか?

・個人で緑ナンバー取りたい!
・自分で要件は満たせるのか?
・どんな手続きをしなければいけないのか?
・トラック1台でも緑ナンバーにできないの?
・今ナンバー借りてるけどこのままでいいのかな?
・会社にしないと緑ナンバー取れないんじゃないの?

そんなお困りごとや不安なことがあるでしょう。

「個人事業主でも緑ナンバー取れるの?」
という質問の意図はおそらく
「1台で個人事業主で緑ナンバー取れるの?」
なのだと思います。

その質問に対する答えは「NO」です。

業界ではナンバー貸しが少なからずあるので「あの人はどうやってるの?」って思うのでしょうね。

どうやってるの?という質問に対しては「毎月数万円のナンバー代を支払って、売上から経費実費を除いた金額を償却した金額をもらう」ということになります。でもそれは事実そうしてしまっているだけで、まったく合法ではありません。

ナンバー貸しは「どうやってやってる」のではなく「違法なことをやってるけどバレてない」だけなのです。

世の中には、組合のような仕組みでそれができるように言っている人もいますが残念ながら報酬配分や対面点呼などその後の運用を考えるとできません。器だけギリギリ脱法レベルで作るけど、そのあとを総合的に考えると違法な組織と言わざるを得ません。
なぜなら、それらのコンプライアンスを守るのであればそんなめんどくさいことをせずに会社組織で従業員で働き、その給与体系を歩合のようにすればいいだけだからです。わざわざそんな組織を作るというのは、要するに違法行為をする前提だからんわけです。甘い言葉を信じないようにしましょう。安易に信じてもなにかあった場合に損をするのはあなたです。

実際にあったナンバー貸し

きっかけは人身事故からでした。

B社に事故をきっかけとした監査が入り、たくさんの帳簿が確認されて名義貸しが判明してしまいました。
その事故は外注個人事業主Cさんが率いる3人のドライバーのうちの一人が起こしてしまいました。
売上はB社に入り、そこから諸経費を除いた4台分の売上についてCさんがB社に請求を出し、B社からCさんの口座に入金。そこからCさんが仲間3人に外注費として支払い。完全な名義貸しです。

事業者は「みんなやってるし、今までやっていてもなにも困らなかった」と軽く考えていました。
しかし運輸支局の監査官は容赦なく名義貸しと判断しました。

はじめはCさんに対して割の良い対価を支払っていたのですが、半年も経つと、諸経費に車庫代が大きく上乗せされるようになり、Cさんは仲間に支払うと完全に赤字になってしまっていました。しかもB社でコンプライアンスを守れない長距離の仕事ばかり押し付けられるようになっていました。

そんな状態なのでCさんとB社はちゃんとしたコミュニケーションも取らなくなり、運輸支局の監査にも力を合わせて協力することもできませんでした。

結果的にはB社は名義貸しということで30日事業停止が課せられ、甚大な損失をこうむりました。

Cさんも名義借りということで検挙されてしまいました。

B社はCさんに事業停止による損害について賠償請求の裁判を起こそうとしています。

・・・ちゃんと従業員として雇っていればこんなことにならなかったのですが・・・

どうしても個人で緑ナンバーをやりたい場合はどうすればいいの?

どうしても個人事業主でやりたい場合は軽貨物で黒ナンバーを取りましょう。

緑でなく黒ナンバーですが、立派な運送事業者です。

最大積載量350kgじゃ仕事にならない!

そんな声が聞こえてきそうですが、軽貨物で稼いでいる人もいます。

大型で仕事してきたから大型でやりたい!と思う必要はありません。気持ちはわかりますけど。

大型トラックは当然維持費も軽貨物と比較にならない金額になります。

ぜひ軽貨物でやりましょう。

軽貨物じゃ儲からない、と思うならば、それこそ社長になって従業員雇って何人かでやれば、うまくすればあなたは運転しなくてもそれまで以上に稼げるかもしれませんよ!!

収入の面から考えても緑ナンバーにこだわる合理的な理由はどこにもありません。

あとはあなたの「個人事業主でやりたい気持ち」と「大型トラックで仕事したい」のどちらが大きいかだけの話です。

大型トラックの仕事が好きならば、大型トラックの会社で従業員として働けばいいわけです。

従業員になったら長時間稼げないからイヤだ!
それもナンセンスです。
ナンバー借りしていても、労働時間のルール(労働基準告示)には縛られます。
個人事業主だからと言って、長時間労働が許されるわけではありません。
それは緑ナンバーでも軽貨物黒ナンバーでも同じです。よく勘違いしている人がいますが個人事業主も労働基準告示に縛られます。
しかも、なにか事故を起したらナンバー貸している会社に監査が入り、単なる監査では済まずに名義貸しまでやられて廃業です。
そうなったらあなたにはまったく責任は取れません。。。

自分のやりたいことをやりたいようにやる→ルールが許してない→そんなルールは現実にあってない→そんなルール守らなくて良い!
これは法治国家の国民のやることではありませんし、現に運送会社の従業員の立場でしっかり働いて立派に家族を養っている人は世の中にゴマンといます。

今の世の中、ドライバーは引く手あまたですから簡単に就職することができるでしょう。

それでもやっぱり5台揃えて独立して緑ナンバー取りたい!という方はぜひ次をお読みください。

個人での緑ナンバーの取得方法

ここを読んでいるということは、ナンバー借りではなく、ちゃんとご自身で緑ナンバーを取りたいという方だと思います。

でも様々な疑問や不安があると思います。

疑問や不安を解消していき、正しく準備しましょう。

緑ナンバー取るにあたってこんな不安はありませんか?

・自分で難しい申請ができるかわからない

・自己資金がいくらあればいいかわからない

・従業員がいないけど大丈夫なのだろうか?

・またトラック3台しかないけど申請できるのだろうか?

個人事業主でも緑ナンバーを取ることは可能です。
ただし、トラック5台+ドライバー5人が必要なのは法人の場合と同じです。1台だけで緑ナンバー取れるわけではありません。
取得に必要な条件も法人の場合と基本的には変わりませんし、簡単に許可が取れるわけでもありません。

あえて言うのであれば次の点について若干注意が必要です。

個人事業主で緑ナンバーを取得する際の注意点

    • 役員法令試験を受験できるのは個人事業主本人のみで、奥様などは受けられません。
    • もし子などに事業承継をする場合、許可の譲渡認可をしなければなりません。
    • 個人事業主であってもドライバー全員を社会保険に加入させなければなりません。
    • 個人事業主だと金融機関での融資や荷主との口座開設などで法人より難しい場合があります。
    • 今後法人にする場合、簡単に許可を移行することはできません。譲渡譲受認可をしなければなりません。

その他、法人とも共通する以下の要件を満たす必要があります。

緑ナンバー取得にザックリ必要な要件

    • 運行管理者資格者証保有者が必要です。
    • 整備管理者の資格者(国家資格整備士または運送業者・整備工場で2年以上整備実務経験者)
    • 2000万円ほどの現預金
    • 5台のトラック(とりあえず予定で構いません。軽自動車や乗用車でなければADバンやハイエースなど4ナンバートラックでも大丈夫です)
    • 運行管理者以外で5名のドライバー(とりあえず予定で構いません)

個人と法人どちらがいいのでしょうか?

個人事業主でも法人でも運送業許可のハードルは変わりません。

ただ、一般的に法人には以下のメリットがあります。

法人のメリット

    • 対外的な信用度。もっと簡単に言うと「株式会社」と付いた方がハクが付くということです。
    • 融資の際に個人事業主に比較すると借りやすいことがある
    • 節税策が豊富
    • 事業主体としての継続性(個人だとどうしても死亡した時点で自動的に廃業になってしまいますが、法人であれば社長が死亡しても法人はなくなりません。それは取引先にとっても安心感が全く違います)
    • 従業員を雇いやすい(応募する方も個人事業主より法人の方が安心感を抱きます)

法人設立には実費だけでも約30万円の費用が必要ですし、確定申告も自分で行うことはとても難しいので税理士に任せることになります。個人事業主であればそれらの作業はご自身でも可能ですから初期コストは小さくて済む場合も多いです。

まずは個人事業主で起業して、法人にしたいタイミングで法人に許可を譲渡することも可能です。(譲渡の申請は新規許可と同等の大変な申請となるのでご注意ください)

個人事業主と法人のメリットとデメリットを長期的な目線でよく考えることが必要です。

専門家のサポートを受ける選択肢もあります

運送業に特化したトラサポ行政書士が対応します!トラサポでは会社設立から運送業許可申請までワンストップでサポートした実績が多数ございます。起業がはじめての方は会社の作り方がわからないのは当然ですが、行政書士はそれらの手続きの専門家なので安心です。

自分の運送会社を立ち上げたい!という方、ぜひ運送業手続き専門のトラサポに一度相談してみませんか?

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