一般貨物自動車運送事業の許可と免許の違いを行政書士が全て解説
『一般貨物自動車運送事業』昔は「免許」と言っていましたが、今は「許可」です。免許時代は取るのが大変でした。違いがよくわかりませんね。なにが違うのでしょう。平成2年、平成15年を中心にわかりやすく解説します。
【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】一般貨物自動車運送事業許可の歴史
平成2年の物流二法施行により免許制から許可制となりました。
では免許と許可はなにが違うのでしょうか。
法律的な定義として明確な違いを読み取るのは困難ですが、実際は全然違いました。
昔になりますが、昭和22年10月4日衆議院「運輸及び交通委員会」議事録によると「免許」とは事業経営免許をいい新規に機能を付与する行政行為であり、「許可」とは禁止を解除する行政行為であるとあります。
これはとてもしっくりとする説明です。
免許時代は聴聞があったり、需給調整規制のために周辺関係業者の反対があると免許が下りないと言ったことを聞きます。
従って、まずは特定の荷主だけの荷物を運ぶ免許、または一般小型貨物自動車での免許を得てから、後に切り替えというような方法で一般区域貨物自動車運送事業に参入していたという事業者が多かったようです。
(ちなみに区域の概念は平成15年改正時になくなっています)。
平成2年の改正時には、道路運送法では存在した需給調整規制が除かれました。
すなわち参入規制の緩和です。
免許時代に比べると、現在の「許可」制度の時代は基準さえクリアすれば許可が下りるので随分と違うことがわかると思います。
許可と免許要件の実務上の違い
免許時代の要件ではものすごく大きな2つのハードルがありました。
有蓋車庫が必要
有蓋車庫(ゆうがいしゃこ)とは屋根のある車庫のことです。
ちゃんと自社で車両の整備ができる施設が必要だったわけです。
ただ、屋根があるだけでなく、車両整備のための建築物なので、建築基準法をクリアしなければなりません。
そのために膨大な費用がかかったということです。
今は必要ありません。
周りの運送事業者の許可が必要だった
運送事業も昔のお風呂屋さんや散髪屋のように地域ごとの参入規制がありました。
だから申請しようとしている会社がその地域に運送事業者として参入たくても、既存の運送事業者の経営に支障が出るということでは認められなかったわけです。
そのために、地域の運送事業者からの推薦などが必要でした。
この要件が本当に厳しく、現実問題、免許を取得するのはムリで、当時は免許が高値で売買されていました。
当然、他の会社は競合他社が入ってくるのを喜ぶことはないですからね。
このハードルがあったので、最初は荷主限定や荷物限定、小型車両での運送事業など小さくはじめて、実績を作ってから一般貨物自動車運送事業の許可を取るという流れが一般的でした。
「営業ナンバーなんてそう簡単には取れないぞ」という声の真意
新規許可の相談にいらっしゃるお客様は、知人の運送会社の社長にこのように言われるそうです。
実際に取得できると「本当に営業ナンバー取れたんだ!」と驚きます。
実際、今でも簡単な許可ではありませんが、昔の免許時代の社長は相当な苦労をして一般貨物自動車運送事業の免許を取っているのでそのことが残っているのでしょう。
今は要件さえ揃えば、他の会社に遠慮などせずに自社の営業ナンバーがつきます。