貨物自動車運送事業の監査と巡回指導、行政処分について行政書士が完全解説

公開日:2019年8月25日 / 更新日:2020年5月9日

運送事業は何十トンの鉄の塊を毎日何十台も走らせます。何より大切なのは“安全”です。事故をしたりすると、運輸支局が監査にきます。車両停止処分や場合によっては営業停止にもなりかねません。監査と巡回指導の対策をしたい方は必見です。

運送業専門行政書士鈴木隆広■この記事を書いた人:運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋13年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【住所:神奈川県横浜市都筑区池辺町3620】

 

目次

監査編

読者の方で本当の監査を受けた方は少ないでしょう。
監査を受けた会社と受けたことがない会社では、運輸支局の怖がり方も違いますし、コンプライアンス意識も全く違います。
監査は怖いですが、しっかり意識すれば良い会社を作るための大きなモチベーションになります

監査と巡回指導の違い

実際に運輸支局の本当の監査を受けたことがない事業者さんは、巡回指導のこと「今度監査が来るんだ」と言います。そういう電話が来たとき、「トラック協会の巡回指導ですか?」と聞き返すと、ほとんどの場合で「そうです」という返事が返ってきます。
要するに、監査と巡回指導の違いをあまり意識していないのです。

巡回指導に対してよくある感想。

「あんなの、どうせ守れないんだから適当にやって、ケンカして文句言ってるよ。それでもいつも大丈夫だよ」

しかし、監査の実態はまったく別物です。。。

・・・それ、巡回指導だから大丈夫なのです。
そんな状態で本当の監査を受けたら、容赦なく何台ものトラックを数カ月止められてしまいます。。。

監査は誰がやるの?

「監査」というのは、運輸支局の監査担当が実施するものです。
監査に入るキッカケは様々ですが、第一当事者の死亡事故を起こしてしまうというキッカケが多いと思いす。
しかし、後で説明しますが、監査のキッカケはとても多様で、ロシアンルーレット的に「監査に入ったことないから」という理由で監査に来るケースもあります。

巡回指導は誰がやるの?

「巡回指導」は、国道交通省が平成2年12月から地方貨物自動車運送適正化事業実施機関として指定されたトラック協会の適正化指導員が実施するようになりました。
基本的には、各運送事業者の営業所に行って、事業計画内容や帳簿の確認をします。
ルール通りにできていない箇所については運送事業者に“指導”します。
監査ではなく、あくまで“指導”です。

指導員のレベルや性格によりますが、基本的には味方と思ってよいです。
しかし、あまりに違反事項が多いと、運輸支局に報告しなければならず、それをキッカケに本当の監査となりかねないので、あまり甘く見てはいけません。
また、2019年11月より巡回指導のランクがEの場合は認可申請ができなくなる予定です。

監査の種類

(1)特別監査

引き起こした事故又は疑いのある法令違反の重大性を考慮し、厳しい対応が必要と認められる事業者に対して、全般的な法令遵守状況を確認する監査を特別監査と言います。

(2)一般監査

特別監査に該当しないものであって、後で解説する監査を実施する端緒(たんしょ=キッカケ、以下「監査端緒」といいます)に応じた重点事項を定めて法令遵守状況を確認する監査を一般監査と言います。
なお、一般監査を実施した事業者において、全般的な法令遵守状況を確認する必要があると認められた場合は、特別監査に切り替えられることがあります。

(3)街頭監査

事業用自動車の運行実態等を確認するため、街頭において事業者を特定せずに実施する監査を街頭監査と言いますが、こちらはバス事業者がメインなのでここでは触れません。

監査の場所

(1)臨店による監査

事業者の営業所その他の事業場又は事業用自動車の所在する場所に立ち入って実施するもの。
→基本は無通告で監査がなされますが、事前通知の場合もあります。

監査の通知書

監査の通知書

監査の通知書

監査の通知書

(2)呼出による監査

当該事業者の代表者若しくは同等の者又は運行管理者等事業運営の責任者を地方運輸局又は運輸支局等へ呼び出して実施するもの。

監査による行政処分後の改善確認のための再監査は呼び出し監査となります。
監査端緒により確認する事項が限定的であり、臨店によらなくても支障がないと判断される場合も、呼出監査となります。

(3)街頭監査

事業用自動車の所在する場所へ立ち入って実施するものであって、バスに係る発着場等街頭において実施するもの。

監査が入るキッカケ(端緒)

特別監査及び一般監査は、次に掲げる事業者を対象して実施されます。この場合、その事故又は違反が社会的影響の大きいもの又は悪質なものである場合には特別監査を実施するものとし、それ以外の場合には一般監査を実施するものとされています。

監査が入るキッカケ

  • ・事業用自動車の運転者(選任運転者に限らず、事業用自動車を運転した者をいう。以下同じ。)が第一当事者(最初に事故に関与した車両等の運転者のうち、当該事故における過失が最も重い者をいい、また、過失が同程度の場合には人身損害程度が軽い者をいう。以下同じ。)と推定される死亡事故を引き起こした事業者
  • ・事業用自動車の運転者が悪質違反(酒酔い運転、酒気帯び運転、過労運転、薬物等使用運転、無免許運転、無資格運転、無車検運行、無保険運行及び救護義務違反(ひき逃げ)をいう。)を引き起こした又は引き起こしたと疑われる事業者
  • ・行政処分等を受けた際に事業の改善状況の報告を命じられた事業者であって、報告のための出頭を拒否したもの、改善報告を行わないもの又は報告内容から事業が改善されたと認められない事業者
  • ・適正化事業実施機関が行う巡回指導を拒否した事業者
  • ・都道府県公安委員会、都道府県労働局、道路管理者等からの通知又は通報により、法令違反の疑いがある事業者
  • ・労働関係行政機関又は日本年金機構から、労働者災害補償保険、雇用保険、健康保険又は厚生年金保険に加入していない旨の通報があった事業者
  • ・労働関係行政機関から、最低賃金法に違反している旨の通報があった事業者
  • ・事故報告の提出義務がある事故であって、自動車事故報告書の「事故の原因」及び「事故の種類の区分」が同一であるものを3年間に3回以上引き起こした事業者
  • ・呼出指導の対象となったにもかかわらず、正当な理由なくこれに応じない事業者
  • ・行政処分等を受けた際に、事業の改善状況の報告を命じられた事業者
  • その他事故、法令違反、事件、苦情等の状況を勘案し、監査を行うことが必要と認められる事業者

注目すべきは最後の項目です。
要するに理由はなんでもよいのです、運輸支局が必要と思えば監査に入られるのです。

監査はどのように進められるか

監査は営業所に来るもので考えると「一般監査」と「特別監査」で見られるポイントが若干異なります。
一般監査は違反が疑わしい点を重点的に見られます。
特別監査は全体的に徹底的に見られます。

監査で重点的に見る項目

  • ・事業計画の遵守状況
  • ・運賃・料金の収受状況
  • ・損害賠償責任保険(共済)の加入状況
  • ・自家用自動車の利用、名義貸し行為の有無
  • ・社会保険等の加入状況
  • ・賃金の支払い状況
  • 運行管理の実施状況
  • 整備管理の実施状況

この中の赤字になっている項目は、完全にアウトの場合は一発で30日営業所事業停止となる重い違反です。

監査による帳簿を中心とした確認

とは言え、物理的に時間の制約もあるので、監査員にもテクニックがあります。
以下のようなポイントから攻めていき、徐々に細かいところをチェックしていきます。

【 監査員が実際に見ていくポイント  
    • ・労働時間が長い人から見る
    •  労働時間が長い人の方が当然拘束時間違反の可能性は高いですから、こちらの日報や点呼記録を優先的に見ます。
    • ・賃金が高い人から見る
    •  賃金が高い人も前項と同様、違反の可能性が高いので優先的に見られます。
    • ・事業計画に沿った経営をしているか
    •  認可を受けている車庫が実際に存在しているかどうか、現地を見に行けばわかります。車庫として認可を受けた場所に既にビルが建っていれば即違反という具合です。
    • ・3か月定期点検記録簿が備え付けてあるか
    • ・整備管理者がちゃんと勤務し、車両の点検管理等をしているか
    • ・日報の目的地、経過場所と走行距離の整合性を見る
    •  場所を見ればある程度の距離はわかります。それを日報の走行距離を見れば、偽造されているかどうかがわかります。

その他基本事項

    • ・社会保険や雇用労災保険に加入しているか
    • ・運転者の適性診断を受診しているか、特別な指導をしているか
    • ・年間教育(12項目)をしているか
    • ・日報の記載項目チェック(よく不備があるのが、休憩の場所・時間、指示事項)
    • ・運転者台帳が正しく作成されているか
    • ・運行管理者、整備管理者が2年に一度の研修を受けているか
    • ・2泊3日以上の運行にて運行指示書が作成されているか
    • ・事業報告書、実績報告書が提出されているか
    • ・2017年11月標準約款変更による運賃変更届を提出しているか
    • ・役員、運転者全員が健康診断を受けているか

自認書を書かされる

監査が終わったら違反事項を書かされます。
「○年○月○日当社経営に関わる一般貨物自動車運送事業の運営実態について監査を受けましたところ、下記の事実があったことに相違ありません。」
という文章から始まる自認書のようなものに、違反事項を下記、そこに署名押印させられます。

監査後の自認書

監査後の自認書

それをもとに改善指示書というものが来ますので、違反していないと思ったり不安に思うところはしっかり担当者に監査の場で確認してください。そのときに存在しない書類でも探せば出てくるだろうものなどはその旨ちゃんと伝えて「違反事項として」明記しないように交渉してください。
ここに書いてしまうと要するに「この違反は間違いありません」と自分で認めたという証拠になってしまいます。
そこで反論するためにはしっかりした知識が必要なので帳簿などのルールについて正確な知識を身に着けておく必要があります。

行政処分編

怖い怖い監査の後は、痛い痛い行政処分。
しかし、実際には何台のトラックがどれくらい止められてしまうのでしょう。
また、行政処分を受けたあとはなにをすればよいのでしょう。
順番に解説していきます。

行政処分とは?

行政処分には大きく3つ、そして行政処分ではないのですがその他2つがあります。
わかりやすく解説していきます。

行政処分等の種類

自動車その他の輸送施設の使用停止処分
トラックを動かすことを禁止する処分です。
事業の全部又は一部の停止処分
トラックの使用停止より大きい行政処分は「営業所を止められること=事業停止」です。
許可の取消処分
許可が取り消されれば、もうすべての仕事はできなくなります。
そして、役員は欠格要件となり5年間は新規許可申請の会社役員や個人事業主としての申請者となることはできません。
※2019年11月からは、役員だけでなく資本関係にある会社の役員なども欠格要件となっています。
(その他)警告
警告書が渡されますがトラックは止められません
(その他)勧告
勧告書が渡されますがトラックは止められません

監査から行政処分までの期間

行政処分の決定通知が下されるのは、運輸支局の監査担当がどれだけ業務多忙かによります。
早ければ数カ月、長ければ数年かかることもあります。
「しばらくなにも連絡がないから、行政処分なくなったのかな?」
と思いたくもなりますが、絶対に行政処分は下されるので、ソワソワせずにそういう意味では安心して待っていてください。
その間に、違反事項を重点的にその他も含めてしっかり改善しておきましょう。

監査の後の流れ

監査のあとに監査担当がその違反事項が本当に違反に値するのか、全体のどのくらいの割合で違反しているのか、もっと文書を確認して証拠を補強する、どの違反事項にあたるのか、など整理します。

監査の後~トラックを止められるまでの流れ

1.改善指示書が来る
 ここで違反内容がほぼ確定されます。先ほどサンプルで提示した自認書の内容が整理清書されたものとなります。
2.弁明の機会付与の通知が来る
 このときに、ほぼ確定の処分内容が一緒に送られてきます。
行政処分というのは、具体的に300日車など何日分のトラックが止められるかということです。
弁明に行くかどうかは自由です。弁明に行かないと無視しているようで処分が重くなるのでは、と怖いのでとりあえず顔見せの意味で行っている人が多いと思いますが、違反事項についてなにも反論することができないのであれば行かなくてよいです。あくまで弁明の”機会をくれている”だけなのです
弁明の機会付与通知書
3.輸送施設の使用停止及び付帯命令書が来る
 これが行政処分と言われているものです
行政処分通知書
この命令書内に
「ただちに法令の定めるところに従って事業を改善し、事業の適正なる運営を図り、再びこのような違反行為を行わないようにするとともに、この違反に対する事業の改善の具体的措置について、○年○月○日以降に呼出監査を行うので、呼出監査の通知があった場合には、改善報告書及び関係帳票類を持参のうえ○○運輸支局まで来局されたい。なお、呼出監査を拒否した場合又は改善報告書において改善状況が確認できない場合は、特別監査を行うほか、自動車等の使用停止処分等の措置をとることがあることを申し添える」
とあります。
だから、それまでにちゃんと改善しておかないと”特別監査”が来るかもしれない、という怖い状況なのです。
4.ナンバー領置等実際の不利益処分
 実際にナンバーを返しにいく(領置)。場合によっては営業停止となる

監査でどのような違反が指摘されると行政処分となるか

刑法と同じで、運送業監査でも同じで「これをやると違反だよ」というリストがあります。
それらを違反すると行政処分となるのです。
行政処分の基準は頻繁に変更となるので、最新のものは国土交通省の自動車総合安全情報を参照するのが良いです。

過積載に対する処分

過積載運行をしたものは、初めての違反でも車両停止処分になり、再違反については車両停止期間を延長し、3回目の場合は輸送の安全確保命令を併せて発動、4回目以降はさらに特別監査を行い、事業許可の取消し等、厳しく処分されます。
これは後で説明する車両停止処分とは別個追加で決められています。

行政処分となると何が起きるのか?

行政処分はトラックを止められるだけではありません。
その後もいろいろと支障が生じるのです。

処分日数制度

違反項目により基準日車が決められています。監査で違反が指摘されると、その違反内容に対応した処分日車数が課されます。
処分日車の意味は次の通りです。

・30日車 = 1台のトラックを30動かせなくなるという意味
(建設業で言う人工(にんく)と同じような考え方です)

例えば、過積載の場合の処分日車数を見てみましょう。

過積載の処分日数

  • ・過積載の程度が5割未満のもの 10日車×違反車両数
  • ・過積載の程度が5割以上10割未満のもの 20日車×違反車両数
  • ・過積載の程度が10割以上のもの 30日車×違反車両数

点呼の未実施の場合はこのように定められています。

点呼実施違反の処分日数

  • ・点呼100回につき 未実施19件以下 警告
  • ・点呼100回につき 未実施20件以上49件以下 10日車
  • ・点呼100回につき 未実施50件以上 20日車

アルコール検知器の備え義務違反は、単独ではとても大きく60日車です。

大きな処分日数になるよくある違反が、車両台数が多い事業者での3カ月定期点検未実施違反です。

3カ月定期点検未実施違反の処分日数

  • ・1年間の未実施回数 未実施1回 警告
  • ・1年間の未実施回数 未実施2回 5日車×違反車両数
  • ・1年間の未実施回数 未実施3回以上 10日車×違反車両数
  • ・12月点検整備の未実施 10日車×違反車両数

50台持っている事業者が3か月点検をまったく実施していなかったら、10日車×50台=500日車です。
違反点数も50点となり、あと1点(=10日車)の違反で一発事業停止となってしまうほどです。

当然ですが、違反項目が増えれば増えるほど、合計の処分日車数は増えます。

再違反、累違反とは?

また、違反には「初違反」「再違反」「累違反」があります。
再違反:3年以内に同じ違反をもう一度すること。処分日車が初違反の約2倍となります。
累違反:3年以内に同じ違反を2度以上すること。処分日車が初違反の約4倍となります。
違反を指摘されたら、絶対に次に同じ違反をしないように徹底的に改善しましょう。

違反点数制度

行政処分10日車につき1点(10日車未満切り上げ)が事業者ごとに、運輸局管轄区域単位で累積されます。

10日車で違反点数1点

10日車で違反点数1点

さきほどの1発30日営業停止処分となった場合は、その違反事項の数×30点が累積されます。
違反点数はその点数ごとに取得した時点から3年間消滅しません
しかし、行政処分の日以前の2年間に行政処分が無かったり、行政処分の日から2年間行政処分を受けなかったりすることで、2年間で消滅します。
ただし、行政処分を受けた営業所を廃止してしまうと、そのメリットは消滅してしまいます。
また、Gマーク取得営業所は3年間の消滅期間が、2年間違反点数の付与がない場合、当該違反点数が消去されるというメリットがあります。
法人を合併や分割した場合は、その新会社に違反点数が引き継がれます。

車両停止処分

監査時の違反内容による処分日車数の合計が決まると、その処分日車数合計と車両台数ごとに以下のように台数が指定されて、トラックを動かせなくなります。
トラクタとトレーラは1セットで1台分として計算されます(残念ながら2台とはカウントされません)。

具体的には、車検証を返納し、ナンバープレートを外して運輸支局監査担当に渡さなければなりません(ナンバー領置(りょうち))。

【 処分日数と台数による同時に止められる台数 】

合計処分日数と対象営業所所属車両数によって、一度に止められる車両数が決められています。
止められる台数の最高は合計車両台数の5割までです。

保有車両台数が10台以下
合計処分日車数 60日車以下:1両 61~80日車:2両
保有車両台数が11~20台
合計処分日車数 10日車以下:1両 11~60日車:2両 61~80日車:3両
保有車両台数が21~30台
合計処分日車数 10日車以下:1両 11~30日車:2両 31~60日車:3両 61~80日車:4両
保有車両台数が31台~
合計処分日車数 10日車以下:1両 11~30日車:2両 31~60日車:3両 61~80日車:5両
※81日車以上は一律で複雑な計算がありますが割愛します。

合計車両台数の5割までとめられるのは、81日車以上の一定条件の場合のみです。

停止される車両は事業者で指定できるのか?

昔は事業者が停止されるトラックを指定できることもありましたが、今は難しくなり、現在はほとんど融通が利きません。

【 停止車両の指定順序 】
    • 以下の順番で1から優先的に適用されます。
    • 1.違反事業者の違反営業所等の違反車両
    • 2.違反事業者の違反営業所等の違反車両と初度登録年月及び最大積載量が同等の車両
    • 3.違反事業者の違反営業所等の配置車両のうち、行政処分の実効性が確保できるものとして、地方運輸局に置く貨物自動車運送事業関係行政処分審査委員会で決定した車両

そして実際には、監査での違反事項が多い対象の車両が止められます。

要するに、Aというドライバーが拘束時間違反となり、違反点数が大きな割合を占める場合、Aが乗っている車両が止められる可能性が多いということです。

事業停止

事業停止とは対象の営業所で「なにも運送事業の仕事をしてはいけない状態にする」ということです。
トラックを動かさなくても「利用運送」の仕事ですらすることは禁止されます。
事業停止となったら、もう事務所の電話は出ても掛けてもいけないと思った方がよいくらいです。
やっていいのは、全然別の事業か総務経理などのバックオフィスの仕事だけです。

中でも、「これをやったら一発営業停止」というものがいくつかあります。
しかも30日間!!
これらの点はなによりも優先的に改善していきましょう!!今すぐに!!

【 一発30日事業停止の違反事項 】
  • ・全運転者に対して点呼全く実施していない場合
  • ・営業所に配置している全ての事業用自動車について、3か月定期点検整備を全く実施していない場合
  • 整備管理者全く不在(選任なし)の場合(特段の理由(整備管理者の急死、急病等)もなく選任を怠っていた場合は許してもらえる場合もあります)
  • 運行管理者全く不在(選任なし)の場合(特段の理由(運行管理者の急死、急病等)もなく選任を怠っていた場合は許してもらえる場合もあります)
  • ・許可の名義貸しをしていた場合
  • ・許可事業の貸渡し等を行っていた場合
  • ・国土交通省による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述を行った場合

全く」とあるのは、期間が書いていないので、どのくらいの期間について検査するのか決まっておりませんが、普通に考えて監査で重点的に帳簿を見る直近1カ月は少なくともカバーしている必要があるでしょう。

その他、累積違反点数により、以下のように事業停止の基準が定められています。

累積違反点数による事業停止の基準

今の持ち点数により、事業停止に至る次の違反日車数が異なります。
ここでいう「管轄区域」とは「一つの運輸局(例:関東運輸局)」内の全営業所のことです。

(1)一の管轄区域に係る累積点数が30点以下で、270日車以上の処分日車数を受けた場合
【処分対象営業所】
その違反営業所のみ
【受けた処分日車】
270~359日車:3日
360~499日車:7日
500日車~:14日
(2)一の管轄区域に係る累積点数が31点以上で、180日車以上の処分日車数を受けた場合
【処分対象営業所】
その違反営業所のみ
【次に受けた処分日車】
180~269日車:3日
270~359日車:7日
360~499日車:14日
500日車~:合計81点となるので許可取消となります
累積点数が51点以上80点以下の場合
【処分対象営業所】
当該違反営業所等の所在する管轄区域内の全ての営業所((1)及び(2)の処分対象営業所を除く。)
【次に受けた処分日車】
180~269日車:3日
270~359日車:7日
360~499日車:14日
500日車~:合計81点となるので許可取消となります

その他、酒酔い運転などの場合は事業停止処分日数が加算されることもありますが、とてもたくさんあるのでここでは割愛します。

許可の取り消し

違反点数が81点溜まってしまうと許可が取り消されます。その他さまざまなきっかけで許可が取り消されることがあります。

許可が取り消されてしまうタイミング
違反点数の累積による許可取消
違反点数の付与により、同一の運輸局管轄区域に係る累積点数が81点以上となった場合
要するに行政処分が801日車以上(10日車以上は切り上げのため)になったら一発で許可取消となります。
違反点数81点で許可取消
何回も事業停止処分を受けたことによる許可取消
事業停止処分を過去2年間に3回受けていた事業者が、さきほどの累積点数ごとに下される事業停止処分の対象となった場合(事業停止処分を4回目受けた場合は許可取消し)
その他
事業停止処分を受けたにも関わらず3年以内に同一の違反をした場合などもありますが、とてもたくさんあるのでここでは割愛します。

その他、事業停止処分を受けたにも関わらず3年以内に同一の違反をした場合などもありますが、とてもたくさんあるのでここでは割愛します。

運行管理者資格者証の返納

行政処分を受けたからと言って、全てのケースで運行管理者資格者証の返納命令が出されるわけではありません。
あくまで安全運行に関わる違反が大きい場合にのみ運行管理者資格者証返納命令が出されます。

複数の運行管理者が選任されている営業所については、統括運行管理者の資格者証が返納させられます。

具体的には以下のケースで返納が命じられます。

運行管理者資格の返納命令のきっかけ
運行の安全確保に関する違反が120日車以上の場合
運行の安全確保に関する違反(乗務時間が著しく違反している、点呼を全く実施していない)の各事項に対する基準日車等の合計が120日車以上の行政処分が下された場合は、運行管理者資格を返納させられます。
運行管理者が以下のいずれかを行った場合
・事業用自動車を運転した場合において、酒酔い運転、酒気帯び運転、薬物等使用運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転又は救護義務違反を行った場合
・運行の安全確保に関する違反の事実若しくはこれを証するものを隠滅し又は改ざんを行う等これを疑うに足りる相当の理由が認められる場合。
以下の違反行為を命じ、又は容認したとして都道府県公安委員会から道路交通法通知等があった場合
事業用自動車の運転者が過労運転、酒酔い運転、酒気帯び運転、薬物等使用運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転、過積載運行又は最高速度違反行為を引き起こした場合。
運行管理補助者が、運転者が以下の違反行為を引き起こすおそれがあることを認めたにもかかわらず、運行管理者への報告を行わず、又は運行管理者の指示に従わずに、当該違反行為を命じ、又は容認したとして都道府県公安委員会から道路交通法通知等があった場合
事業用自動車の運転者が過労運転、酒酔い運転、酒気帯び運転、薬物等使用運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転、過積載運行又は最高速度違反行為を引き起こした場合

安全な運行の責任者である運行管理者が上記のような行為を行っているのであれば、運行管理者資格者証は返納となって当然でしょう。

行政処分を逃れることはできるのか?

ある営業所でトラックが止められてしまうのであれば、そのトラックを他の営業所に移してしまえばいいのでは?と考えてみましょう。
しかし、それはうまく行きません。

行政処分は追いかけてくる!!
なぜならば、以下のようなルールがあるからです。

行政処分は追いかけてくる!!

  • 当該違反行為に係る行政処分等を受ける前に、違反営業所に所属する事業用自動車を当該事業者の他の営業所に移動し、違反営業所の事業用自動車の数を減少させている場合(違反営業所が廃止された場合を含む。)は、違反営業所(廃止されたものを除く。)及び事業用自動車の移動先営業所に係るものとして取り扱うものとする。

要するに、移動させた営業所でも行政処分が下されてしまうということです。
また、営業所を廃止してしまえばいいのでは?と考えてみましょう。しかし、それもうまく行きません。
なぜならば、以下のようなルールがあるからです。

行政処分は追いかけてくる!!

  • 違反営業所が廃止された場合は、次に掲げる営業所に係るものとして取り扱うものとする。
    (1)廃止された営業所と同一の運輸支局が管轄する区域に所在する営業所のうち廃止営業所に最寄りのもの
    (2)廃止営業所と同一の地方運輸局の管轄区域に所在する営業所のうち廃止営業所に最寄りのもの(1に該当する営業所がない場合に限る。)
    (3)廃止営業所に最寄りの営業所(2又は3に該当する営業所がない場合に限る。)

同一支局管轄内(同一都道府県内と考えてよいです)に他の営業所があれば、その営業所に行政処分が下されます。
同一都道府県に他の営業所がなければ、運輸局の管轄まで範囲が広がります。
それもなければ、全国範囲で最も距離が近い営業所に行政処分が下されます。
「もし他の営業所がなくて、営業所が本社営業所1カ所だけだったら?」
1カ所しか存在しない営業所を廃止することイコール事業廃止ということです。
※事業廃止=会社として運送事業許可を返納すること
許可がなくなれば当然行政処分が来ることはありません。

ただ、2019年11月からは事業廃止は事後届出でなく、30日前の事前届出制となり、欠格事由もかなり緻密に広範囲に逃亡ルートを防ぐように改正されます。
行政処分逃れの事業廃止をすることは事実上不可能となるでしょう。
そうすると、欠格事由を持つ者となり、新規許可を受けられなくなるだけでなく、役員兼任会社まで行政処分を受けてしまう可能性が生じます。
その欠格期間も2年から5年と長期化となる予定です。

行政処分後に、会社を合併したり分割、譲渡したらどうなるの?

合併・分割・譲渡の場合も、新会社に行政処分が引き継がれてしまいます。

車両の一部を他の会社に譲渡したらどうなるの?

ルールでは微妙な書き方をしていますが、おおむね違反営業所の半分以上の台数を譲渡するような行為は、逃れられないようになっています。

行政処分後に起きること・やらなければいけないこと

刑法犯は裁きを受けて、刑期を全うしたらそれで法律上は無罪放免となりますが、行政処分はトラックなどを止められて無罪放免ではありません。
行政処分が明けたあとにもいろいろとやらなければならないことがあるのです。

<行政処分後の流れ>

監査を受けたらすぐに問題点を改善し、行政処分後の改善報告の準備をしましょう!

  • 1.改善報告書の作成
改善報告書を作成するためには、
・なにが違反となっているのか
・どうやったら改善できるのか
がわからなければ改善できません。
見当はずれの対策をとっていたらムダな苦労になってしまいます。ぜひこのようなところは専門家にご相談ください。
2.呼出監査
呼出監査に向けて改善していかなければなりません。
行政処分が終わったからと言って終わりではないのです。
ここで完全に改善しておかなければ終わらないのです。
ほっておいたら、再違反・塁違反となり、処分が何倍にもなってまた襲ってきます。
「改善できないから無視だ」
ということだけはしないようお願いします。

どうやって改善すればいいの?

監査での違反事項指摘文書を読んでも、多くの事業者様は「なにを指摘されているのか正確にわからない」と言います。
役人は杓子定規の抽象的な言葉を使うので、具体的になにが違反となっているか事業者にはわかりづらいのです。
私もお客様と一緒に改善方法を確認していくと、「監査の時、たしかこんなこと言ってたような気がする」というお客様の声を受け、「監査担当はそんなこと言わないだろう・・・?」と疑い、実際に運輸支局の監査担当に確認しに行くと、お客様が誤解して受け取っていることがとても多いです。

従って、まずは「なにが正しくて、今回なにが違反とされたのか」を整理するところが最も大切です。
その確認をサボって一生懸命独りよがりで改善したつもりになっても、それは運輸支局の求めるものではないかもしれないのです。

監査行政処分後の交通整理

もちろんトラサポメンバー行政書士が全力でサポートします(有料)。

※注意※
専門家が絡んでも、魔法の杖を持っているわけではありませんよ。ムリなものはムリですし、やらなければいけないことはやらなければいけない、と強く申し上げます。要するに我々は正解を示すだけしかできないのです。その中で様々なルールを現実問題どのように適用するかというところでご相談の上、一緒に正しい方向に進んでいくわけです。

国土交通省のデータベースによりインターネットで公開されてしまう

国土交通省は、各地方運輸局長等が自動車運送事業者に対して行った行政処分情報を定期的にとりまとめ、過去3年間の自動車運送事業者に対する行政処分情報を掲載しています。

事業者の行政処分情報検索ホームページ(国土交通省)

コンプライアンス意識がどんどん高まっているこの世の中なので、取引先が御社と付き合う際に、このページで御社の名前を探す可能性も少なくはないでしょう。

増車や認可申請ができなくなります

行政処分が決定されると、その時点からナンバー領置が終わるまで増車はできません。

行政処分前後の申請制約
逆に考えれば、行政処分決定前であれば、車庫面積に余裕があれば行政処分が下される前に短期リースをしてくれる会社などからトラックを借りて増車することがしたりする対策を取ることができます。

事業用短期リースしてくれる会社は以下のようなところがあります。(この会社の社長や従業員さんとは直接の知り合いです)
私のお客様に紹介したら良い評判を頂きました。

「ちょっトラック」(グリーンオートリース)

また、事業計画拡大となる認可申請は3か月間申請ができなくなります。
もし申請しているものがある途中で行政処分が決定となった場合、その申請は取り下げとなります。
2019年11月から、3カ月以内に30%以上の増車となる増車届は認可事項となります。
また、現在基本3か月の認可できない期間が6カ月に延びる予定です。

ナンバー返還~再封印

運輸支局の監査担当窓口に「自動車番号標領置証明書」と「再封印依頼書」を持っていき、ナンバープレートと車検証原本を返してもらいます。

区役所等で仮ナンバーを借りて、トラックを運輸支局に持っていきナンバーを取り付け再封印します。

領置終了~再封印の流れ

領置終了~再封印の流れ

改善報告書の作成

行政処分の通知書には「行政処分等を行った日から3月以内に報告を行うよう措置するものとする」とありますが、運輸支局の監査担当も相当忙しく、その報告が3か月より何カ月も経てから求められることも多々あります。
改善報告書は、書類上だけで提出すれば終わりではありません。
逆に書類は当たり前の改善方法を簡潔に書くだけです。
結局、運輸支局の監査担当は、日報や点呼記録簿などの帳簿を確認して、本当に改善できているかを徹底的に確認するわけです。
従って、要するに「実情ちゃんと改善するしかない」のです。

行政処分を軽くするにはどうしたらいいの?

監査が来るとわかってからでもできること

監査は事前に来ることを教えてくれることもあります。
そのときに「今さらなにもできることはない・・・」とあきらめるのはやめましょう!!
残り数日だとしても、まだできることはあります。
過ぎ去った日の帳簿でも、偽造さえしなければそこから完璧に仕上げてもよいのです!!

監査直前の数日間でもできること!!

    • ・3カ月点検をしていなかったら急いで整備工場に3か月点検をしてもらう
      ・万が一、運行管理者や整備管理者がいない場合、すぐに雇って1回でも対面点呼、日常点検確認させる
      ・役員変更届、事業報告書、実績報告書など提出していなかったらすぐ運輸支局に提出する
    • ・運転者台帳の記載漏れや写真貼り付け漏れをなくして完璧にする
    • ・健康診断を受けてない従業員がいたら急でも良いから受けさせる
    • ・運転日報の記載漏れがあれば後日からでも良いので記憶を思い出して記載する(特に休憩の場所と時間)
    • ・点呼記録簿の記載漏れや運行管理者スタンプ押し忘れなどがあれば後日からでも良いので記憶を思い出して記載する(特に指示事項)
    • ・日常点検チェック表にチェックがしていなければチェックをする
    • ・36協定を労基署に提出していなければ急いで作って提出しましょう
    • ・運転者への教育(年間12項目)をしていなければ、急いで指導教育計画表の作成と教育の実施をしましょう

もし、これらが全てやっておらずに違反事項として指摘されたら、何十日もトラックが止められてしまいます。
3カ月点検、運行管理者整備管理者不在なんて30日間営業停止です。
「監査が来ると知ってからやったら逆に怒られませんか?」
という質問を受けますが、遅くなったとは言え、正しいことをやろうとしているので、そんなの怒られるはずがありません。
ただし、偽造するとかなり重い罰則を受けるので、偽造は厳禁です!!

帳簿は手書きじゃないとダメですか?

「日報はドライバーの手書きでないといけませんか?」という質問をよくされます。
いやいや、すべてパソコンで作っても問題ありません。
この働き方改革を進めている時代、手書きでなければいけないなんてことはありません。

「帳簿は印刷する必要がありますか?」

点呼記録簿、運転日報など、紙で印刷することは義務として定められておりません。
監査員に求められた場合に印刷できる状態であれば大丈夫です。
ただ、運行管理者のチェックなどは電子的にわかるような仕組みを作っておいてください。

とにかく毎日ちゃんとやること

当たり前ですが、毎日ちゃんとやることが一番大切です。

100%を目指す必要はありません。
80%でも良いのです。

一番よくないのは「どうせ100%できないルールを設ける役人が悪い。だったらやらない」という考えです。

確かに、役人が考えるルールは現実に合っていないことも多いと思います。
しかし、現状なにも苦労しないで守れるルールを作っても、それは安全につながるでしょうか?
「より安全」を目指すためには、少し大変なくらいのルールである必要があります。
また、ルールを自分たちを締め付けるものとは考えずに、「よい会社となるための目安」と考えたらどうでしょうか?
行政ルールをそのように使えるように考え方を変えると、あなたの会社はもっともっと良い会社となっていくでしょう。

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