事業廃止と休止の違いと注意点、流れを専門行政書士が徹底解説

公開日:2019年1月30日 / 更新日:2021年7月27日

一般貨物自動車運送事業の事業廃止と休止。1文字違いで、手続き内容もほとんど同じですが、効果は全く違います。運送業許認可をやっている行政書士でも怖い手続き。間違えると後戻りはできません!!注意点を詳しく丁寧に解説します。

事業休止と廃止

事業廃止と休止

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

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事業の廃止と休止の違い

廃止も休止ともに貨物自動車運送事業法第32条で規定されています。

(事業の休止及び廃止)

  • 第三十二条 一般貨物自動車運送事業者は、その事業を休止し、又は廃止しようとするときは、その三十日前までに、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。

“廃止”は、一度運輸支局に提出して30日経ったらそれで終わりです。貨物自動車運送事業の許可がなくなってしまいます
2019年10月31日までは事後届だったので提出した瞬間に許可が無くなっていましたが、今は30日事前届出になったので、提出後にもしかしたら取り下げができるかもしれません。
一方、“休止”は、許可自体はなくなりません。再開することができます。
休止届を出す際、休止の予定期間を記載します。関東運輸局の場合は1年です。

実際にあったトラブル

  • 他の行政書士がお客様から事業休止の依頼を受け、誤って“事業廃止”の手続きをしてしまいました。その後、私のところに相談の電話があったのですが、事業廃止届は受理されたらどうすることもできません。その後、どうなったかはわかりません。。。事業廃止を提出するときは、今いちど、「その瞬間に許可がなくなる」ことでよいのかしっかりと確認してください。
    ※これは2019年10月31日以前の話です。

事業廃止の具体的な手続きの流れ

廃止の場合、以下のような手続きが必要です。
基本的には本社営業所を管轄する運輸支局輸送担当窓口に提出します。

<事業廃止の流れ>

  • 1.事業廃止届の提出
 表紙と車両台数別紙。
2部提出、1部控えの合計3部
2.連絡書の発行
 事業用車両全台分の減車連絡書・手数料納付書作成し、輸送窓口で経由印を押してもらいます
3.管理者の解任届
 運行管理者と整備管理者の解任届を整備担当窓口に提出します

事業休止の具体的な手続きの流れ

休止の場合も、ほとんど事業廃止と同じ手続きが必要です。
基本的には本社営業所を管轄する運輸支局輸送担当窓口に提出します。

<事業休止の流れ>

  • 1.事業休止届の提出
 表紙と車両台数別紙。
表紙に休止予定期間を記載。
2部提出、1部控えの合計3部
2.連絡書の発行
 事業用車両全台分の減車連絡書・手数料納付書作成し、輸送窓口で経由印を押してもらいます
3.管理者の解任届
 運行管理者と整備管理者の解任届を整備担当窓口に提出します
行政書士

運行管理者と整備管理者の解任は忘れがちですが、ここで解任しておかないと、これらの人が次の会社で選任できなくなってしまいます。運輸支局へ全国的に選任状況をデータベースで共有しているので、選任が残っているとわかってしまうのです。

減車した車両の車検証書換に必要な書類とは

車検証を書き換えるためには、減車(廃止)連絡書以外に、以下の書類が必要です。

自社名義のまま、白ナンバーに落とす場合

    • ・車検証原本
    • ・事業者の委任状 ※委任状様式はコチラをクリック
    • ※リース車両、割賦により所有者が異なる場合は、所有者の委任状が必要です。
    • ★使用の本拠が変わらないのであれば、車庫証明は不要です。

自社名義のまま、白ナンバーに落とす場合は、以上の書類を持って、ナンバー管轄の運輸支局または登録事務所に行って手続きします。

売買して名義変更する場合

    • ・車検証原本
    • ・事業者の印鑑証明(原本3か月以内)
    • ・事業者の委任状(会社実印押印) ※委任状様式はコチラをクリック
    • ・事業者の譲渡証明書(会社実印押印) ※譲渡証明書様式はコチラをクリック
    • ※車検証上の住所・名称と印鑑証明情報が異なる場合は、履歴事項全部証明書でつながることを証明しなければなりません。
      ※リース車両、割賦により所有者が異なる場合は、所有者の上記書類

売買して名義変更する場合は、以上の書類を譲渡先もしくは中古車買い取り業者に渡してください。

一時抹消(ナンバーを運輸支局へ返納)する場合

    • ・車検証原本
    • ・ナンバープレート
    • ・事業者の印鑑証明(原本3か月以内)
    • ・事業者の委任状(会社実印押印) ※委任状様式はコチラをクリック
    • ・事業者の譲渡証明書(会社実印押印) ※譲渡証明書様式はコチラをクリック
    • ※車検証上の住所・名称と印鑑証明情報が異なる場合は、履歴事項全部証明書でつながることを証明しなければなりません。
      ※リース車両、割賦により所有者が異なる場合は、所有者の上記書類

一時抹消する場合は、以上の書類を持って、ナンバー管轄の運輸支局または登録事務所に行って手続きします。

休止した許可を再開するには?

事業休止の場合、いつでも事業再開が可能です。
営業所や車庫を休止前のものと変わらない場合と、変える場合で流れが異なります。

営業所も車庫も変わらずに再開する場合

    • 事業休止届を提出した運輸支局輸送窓口にて以下の手続きをします。
    • ・事業の休止再開届(即日完了)
    • ・運行管理者および整備管理者の選任届
    • ・連絡書の発行
    • ・車検証書換とナンバー変更

一定期間休止していた運送事業者を、役員変更して再開する場合は、輸送施設も変わるでしょうから、以下の流れになることが多くなります。

営業所など、違う物件にて再開する場合

    • 営業所を管轄する運輸支局輸送窓口へ営業所申請をします。
    • ・営業所と車庫の新設認可申請
    • ※当然、この認可が下りるまでに1~2か月程度の期間がかかります。
      事業休止届を提出した運輸支局輸送窓口にて以下の手続きをします。
    • ・事業の休止再開届(即日完了)
    • ・運行管理者および整備管理者の選任届
    • ・連絡書の発行
    • ・車検証書換とナンバー変更

まとめ

事業休止と事業廃止の違い、注意点と手続きの流れはわかりましたか?
何回も言いますが、廃止届を提出して30日経過したら取り換えしがつきません。

オススメなのは、廃止を考えていてもとりあえずは休止を出すことです。
数か月ほど経ったとき、それでも「やっぱりもう運送事業をやることはない」と思えば、事業廃止届を出せばいいのではないでしょうか。

たくさん解説してきましたが、もう一度言います。

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