運輸局の「合併の認可を要しない旨の証明書」とは | 合併 分割 認可 運送業 貨物自動車運送事業 貨物利用運送事業

公開日:2021年3月14日 / 更新日:2024年3月9日

司法書士、税理士、公認会計士、弁護士の先生向け。一般貨物自動車運送事業の合併・分割の注意点まとめ。運輸局認可のスケジュール、法務局登記のタイミング、承継会社や新設会社の必要資金など運送業専門行政書士が網羅的に解説します。

合併の認可を要しない旨の証明書とは?

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

「合併の認可を要しない旨の証明書」とは

ご存知の通り、貨物自動車運送事業許可業者を合併する際は運輸局の合併認可が必要です。

法務局への合併登記の際、合併認可書を添付します。

しかし、以下のいずれかの場合は運輸局の合併認可が不要となります。

合併認可が不要なケース

  • (1)承継会社が既に貨物自動車運送事業の許可を持っている(※合併認可をせずに被承継会社(消滅会社)の車両を移行するには運輸局に対して別途複雑なテクニックが必要です)
  • (2)承継会社は貨物自動車運送事業をやらない
  • (3)被合併法人の定款目的に運送業が入っているけど実際は許可を持っていない

被合併法人も承継会社も運送業許可を持っている場合

(1)のケースは合併認可することが自然ですが、合併の認可を要しない旨の証明書を使うことで合併認可申請せずとも合併登記ができます。
承継会社が既に許可を持っているからといってなにもしなくていいという訳では無いところが要注意です。実際に司法書士の先生でも誤解している方がいました。
ただし、合併の認可を要しない旨の証明書を使う場合でも、被承継会社の運送業許可を廃止しながら車両を移行しなければいけないので、それはそれで複雑な手続きが必要になるので要注意です。

承継会社が運送業をやらない場合

(2)のケースは、承継会社が運送業をやらないのでなにもしなくていいと思いきや、被承継会社が運送業許可を持っているので合併の認可を要しない旨の証明書が必要です。その他、定款目的削除や許可廃止が必要です(この2つは法務局に確認してください)。

逆に言えば合併認可が絶対に必要なのは「被承継会社が運送業許可を持っており、承継会社が運送業許可を持っておらず、合併後に運送業を営む」ケースとなります。

従って「合併の認可を要しない旨の証明書」とは、上記(1)か(2)のいずれかのケースで合併登記する場合に運輸局に発行してもらうことで、運輸局の合併認可をしなくて済むという裏技のようなものなのです。

そもそも被合併法人が運送業許可を持っていない場合

(3)の「被合併法人が運送業許可を持っていないけど定款目的には存在する」場合については法務局に確認が必要です。

たとえば以下のケースを考えてみましょう。

存続会社A
被合併会社B 一般貨物自動車運送事業許可法人
被合併会社C 目的に次が書いてあるが許可は持っていない「一般貨物自動車運送事業」

運輸局に聞いてみました。
ざっくり言うと「法務局が求める形式を教えてください。それのとおりに運輸局は出します」ということです。

そして「合併の認可を要しない旨の証明書」は誰の名前で申請すればいいか、という問題も実はあるのです。

各会社で「合併を要しない申請」が一般的です。(関東運輸局談。合併会社:A固定。被合併会社を個別に)

また、合併の認可を要しない旨の証明書の様式には貨物自動車運送事業法と()内で貨物利用運送事業法がありますが、これのどちらで証明出してもらうかも被合併会社ごとに法務局に確認が必要です。

また、目的に貨物輸送取次業がある場合、今の時代は取次業は許可制がありませんが、法務局が利用運送と勘違いして証明を求めるかもしれないので、そのような観点からも確認が必要です。

第一種貨物利用運送事業の合併手続きは認可ではなく、事後届なので法務局への登記より先に運輸局の手続きをすることができません。しかし、合併の認可を要しない旨の証明書が必要かどうかはしっかり法務局に確認してください。

※吸収分割についても同様の考え方だと思います。

運輸業の合併や分割での注意点

司法書士の金子登志雄先生の「組織再編の手続き 法務企画から登記まで」(商業登記全書第7巻)第5節許認可手続きに、このような記載があります。

事業承継専門司法書士 金子先生からの注意点

  • 「事業目的に運輸関連業が存在した場合は特に要注意である」

超有名な司法書士の先生が言うのですから、運輸業の事業承継の許認可手続きは特に難しいということは間違いありません。

特に注意すべき点を具体的に解説します。

法務局の登記申請日と合併認可に係る制約

前項で解説したように「被承継会社が運送業許可を持っており、承継会社が運送業許可を持っておらず、合併後に運送業を営む」ケースでは必ず運輸局の合併認可が必要です。
※吸収分割についても同様の考え方だと思います。

法務局の登記申請までに必ず運輸局の合併認可が下りていなければなりません。

運輸局の合併認可の標準処理期間は1~3カ月で、実際は2~3か月かかります。
運輸局をまたいだり、全国に営業所がある場合はもっとかかり、5カ月かかってもおかしくありません。

かなり多くの弁護士・司法書士・税理士の先生が、この運送業許可の承継認可スケジュールを考慮に入れず進めてしまい、私のところに相談に来たときに「再来月の1日に登記したいんだけど」とおっしゃいます。それでは到底間に合いません。。。
(承継会社が運送業許可を持っていればギリギリなんとかできるかもしれないのでご相談ください!!)
運輸業の許認可の場合、必ず運送業専門行政書士であるトラサポメンバーにスケジュール策定の段階から一緒に進めていただくことを強くオススメします。

しかも申請後の奇数月に開催される役員法令試験に合格しなければ、その翌奇数月の受験になり、2回不合格になると合併認可申請取り下げ~再申請となり、ゼロスタートになり、大幅にスケジュールが狂ってしまいます。

役員法令試験対策セミナーについて↓クリック

第一種貨物利用運送事業の事業者を合併する場合は?

ちなみにですが、自分ではトラックを持たず仕事を取ってきて貨物自動車運送事業者を外注に使う事業を「第一種貨物利用運送事業」と言います。

この会社を合併する場合は認可申請ではなく「事後届」で大丈夫です。

誤解なきよう、あくまで第一種貨物利用運送事業の話で、これは一般貨物自動車運送事業の許可とは全く別個の許可(登録)です。

承継会社に必要な資金

一般貨物自動車運送事業の許可を取得するには、最低要件であるトラック5台の運転資金約2000万円を自己資金(銀行の残高証明で証明)でカバーしていることが必要です。

貨物自動車運送事業許可の資本要件の詳しい解説は以下をクリック↓↓↓

被承継会社の緑ナンバートラックが多いとそれだけ必要な残高が増えます。

たとえば被承継会社が30台の緑ナンバーを持っていたら単純計算で2000万×(30÷5)=1億2000万の預金がなければなりません。
※実際は車両費、地代家賃等によって変わりますがおそらく最低でも7000万は必要でしょう。
※この必要金額の算出は運送業専門行政書士とそうでない行政書士で5割~10割は簡単に差が出ます。

その計算には運送業専門行政書士が綿密にヒアリングし、運輸局と密に相談する必要があります。

うまくやらないと合併認可は簡単に挫折します。

また新設分割の場合は、まだ法人が存在しないので当然銀口座預金がありません。従って原則は資本金額で判断されます。その他移行される現金預金や売掛金などの流動資産のどれが計上できるか運輸局と密に打ち合わせする必要があります。

違反点数の承継

運送業法では、運輸支局の監査を受けると違反点数を付与されます。

その点数によって車両の増車や、営業所新設認可申請などがやりづらくなってしまいます。

許可を承継するとそれらの違反点数も承継します。

今は違反点数がなくても、長時間労働が多かったり適性診断など運送業者としての義務を果たしていないと、トラック協会適正化実施機関の巡回指導で低評価を得たり、監査が入ってしまったときの車両使用停止リスクなどを抱えています。

トラサポでは被承継会社の運送業視点からのデューデリジェンス(内部審査)も承ります。

以下の国交省「事業者の行政処分情報検索」では、会社名・都道府県・違反点数などから検索ができます。

国交省の違反事業者検索サイト

違反点数による事業停止リスクの解説はこちら↓クリック↓

運送業許可が絡む事業承継は難易度が高い→解決法

運送業の法律は2019年11月に改正されてますます難しくなっています。

また、許可が承継された後もコンプライアンスを守らなければ運送業許可を保つことはかないません。

ぜひ、実績豊富でいくつものM&A企業とパートナーシップを結んでいるトラサポの運送業専門行政書士にご相談ください!!

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