【2024年改善基準告示:新旧比較】貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の労働時間等の改善のための基準

公開日:2022年9月28日 / 更新日:2024年4月18日

【2022年最新版:新旧比較】貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の労働時間等の改善のための基準

新しい労働時間告示も内容が固まって来たようです。(2022年10月7日時点スタート時期未確定:第9回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会資料では令和6年4月から適用開始予定となっています。)

2024年時間外労働960時間とも整合性合わせるような内容になっているように感じます。

全体的には、当然労働時間が短くなり休息時間が長くなるように変更されます。

4時間連続運転の際の運転外は今まで「運転をしてなければ作業をしていても良い」だったのが「原則休憩とする」となっているところは、健康上はアリだと思いますが、同じ仕事のやり方をやっていたら拘束時間は変わらないのに今まで労働時間だったものが休憩時間となり、勝手に給料が減ってしまう理屈となり、実効性は疑わしいと感じています。

運送業界は賃金が他業界に比較して高くない上に人材不足なので、これ以上賃金を下げるわけにはいきません。政府はこれをスタートさせるということは、それ以上に運賃の値上げを荷主に強く強制する姿勢が求められます。そうでなければ日本の物流は本当に崩壊してしまいます。

とは言え、政府の批判や疑問点だけ言っていても仕方ありません。

特に長距離輸送、幹線輸送、海上コンテナ輸送、ロードサービス・レッカー事業者、待機時間の長い業態の方、今までのルールと新しいルールがどう変わったのか学んでいきましょう。

※本記事に関するご質問は一切お受けしていないのでお近くの運輸支局にお電話ください。行政書士にご相談の際はぜひ相談業務や顧問契約締結をご依頼くだされば精いっぱいサポートします!!

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

改善基準告示:旧ルールと新ルールの違い

改善基準告示のルールは発表されましたが、新旧対照表で比較した方がわかりやすいので個々の項目でなにが変わったのか理解していきましょう。

拘束時間

旧ルール

一箇月293時間
労働協定があるときは、1年のうち6箇月までは、1年間についての拘束時間が3,516時間を超えない範囲において320時間までの時間まで延長できる。
1日原則13時間
最大16時間15時間超えは1週間について2回以内

新ルール

1年間3300時間
1カ月284時間 ※最大310時間(1年の内6回まで。合計が3400時間超えないまで)
284時間超は連続3カ月まで。
月の時間外・休日労働が100時間未満に努めること
1日13時間最大15時間
16時間特例:1週間すべての「一の運行:所属営業所車庫~所属営業所車庫」が450km以上の長距離運行で、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合、当該1週間について2回に限り最大 拘束時間を 16 時間とすることができる。
※14時間超は週2回まで(と通達する予定)

運転時間

新ルール

旧と同じ

旧ルール

2日を平均して1日当たり9時間(本当は基準日を挟んで3日平均を考えますが簡便に表記)
2週間平均で1週間当たり44時間

連続運転時間

前項の運転時間は「1日の運転時間の合計」であり、この「連続運転時間」は文字通り「ハンドルを握り続けている時間」のことです。車を降りたり、SAで社内で休憩したりするとリセットされます。(※当然、運転中でハンドルから手を放してもリセットされません(笑))

新ルール

原則は変わりませんが、解釈が少し変わっています。

「運転の中断」は「原則休憩」とする。
SA等に駐車できない等やむを得ない場合は30分延長可。(4時間30分直後に30分休憩がOKとなる。当然日報に記載が必要でしょう)
連続運転時間(1回が概ね連続10分以上で、かつ、合計が30分以上)の10分以上が少し緩和して、(おそらく)9分とかもセーフとなる。

(※)通達において、「概ね連続10分以上」とは、例えば、10分未満の運転の中断が3回以上連続しないこと等を示すこととする。

旧ルール

4時間以内(運転の中断は1回連続10分以上、かつ合計30分以上の運転離脱が必要)

運行時間

運行時間とは、認可車庫から出発して認可車庫に戻ってくるまでの時間のことを言います。

遠方に宿泊しながらの仕事の際に適用するルールです。

新ルール

旧と同じ

旧ルール

一の運行における時間144時間(つまり丸6日間)
最初の勤務を開始してから最後の勤務を終了するまでの時間(ただし、フェリーに乗船した場合における休息期間を除く。)

休息期間

休息期間は休憩時間とは異なります。仕事が終わってから次の仕事が始まる完全にオフの時間のことです。

新ルール

継続11時間以上を原則とし、最低9時間
特例:自動車運転者の1週間における運行がすべて長距離貨物運送(※拘束時間で出てきた450km以上運行)であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合、当該1週間について2回に限り、継続8時間以上とすることができる。この場合において、一の運行終了後(注:9時間未満にした日以外は、でしょうね)、継続12時間以上の休息期間を与えるものとする。

旧ルール

継続8時間以上
運転者の住所地での休息期間が、それ以外の場所での休息期間より長くなるよう努めること。

休息期間の分割の特例

1回当たりが3時間以上になったことで分割休息がより使いやすくなりました。

新ルール

連続9時間以上の休息時間が取れない場合の特例。※長距離運行の場合は8時間が基準。
この場合において、分割された休息期間は、1日において1回当たり継続3時間以上、合計10時間以上でなければならないものとする。
3時間+7時間も可に。
分割は、2分割に限らず、3分割も認められるが、3分割された休息期間は1日において合計12時間以上でなければならないものとする。

旧ルール

一日(始業から24時間)において1回が継続4時間以上、合計10時間以上に分割可(業務の都合上やむを得ない場合で、一定期間の勤務回数の1/2以内最高でも2ヵ月のうちの一ヵ月。
ただし、フェリー乗船時には適用しない。

2人乗務の場合の特例

新ルール

以下の緩和策が追加されました。
・ただし、当該設備が次のいずれ(ア、イ)にも該当する車両内ベッド又はこれに準ずるもの(以下「車両内ベッド等」という。であるときは、拘束時間を24時間まで延長することができる。(休息時間4時間~8時間未満の場合)
・また、当該車両内ベッド等において8時間以上の仮眠時間を与える場合には、当該拘束時間を28時間まで延長することができる。
・この場合において、一の運行終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるものとする。
ア 車両内ベッドは、長さ198cm以上、かつ、幅80cm以上の連続した平面であること。
イ 車両内ベッドは、クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること。

旧ルール

2人乗務(ベット付き)
最大拘束時間を20時間まで延長可、休息期間は4時間まで短縮可

隔日勤務の場合の特例

新ルール

旧と同じ

旧ルール

2暦日における拘束時間は21時間を超えないこと。
夜間4時間以上の仮眠を与える場合は、2週間について3回を限度に2暦日における拘束時間を24時間まで延長可(2週間の拘束時間は126時間(21時間×6勤務)まで)
勤務終了後、継続 20 時間以上の休息期間を与えなければならないものとする。

フェリー乗船の場合の特例

新ルール

旧と同じ

旧ルール

勤務の中途においてフェリーに乗船する場合、乗船時間は原則として休息期間として取り扱い、休息期間8時間から減ずることができる。ただし、減算後の休息期間は、二人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終了時刻までの時間の1/2を下回ってはならない。
なお、フェリーの乗船時間が8 時間 を超える場合には、原則としてフェリー下船時刻から次の勤務が開始されるものとする。
※2人乗務の場合には4 時間、隔日勤務の場合には 20 時間

共通特例

今までは4時間連続運転や拘束時間について、災害や予期できない渋滞などによる違反は原則考慮されませんでしたが、今回の改正でそれを考慮することが明記されました。これは良いことだと思います。

予期し得ない事象に遭遇した場合について事故、故障、災害等、通常予期し得ない事象に遭遇し、一定の遅延が生じた場合には、客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の規制の適用に当たっては、その対応に要した時間を除くことができることとする。勤務終了後の休息期間は、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする。
(具体的な事由)
ア 運転中に乗務している車両が予期せず故障した場合
イ 運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した場合
ウ 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖された場合、道路が渋滞した場合
エ 異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった場合

以下、厚労省発表資料の全文を掲載

正確な文章のために、厚労省発表資料そのままの文章を転載します。

貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の労働時間等の改善のための基準

(1)1か月当たりの拘束時間について

拘束時間は、年間の総拘束時間が 3 300 時間、かつ、1か月の拘束時間が 284 時間を超えないものとする。
ただし、労使協定により、年間6か月までは、年間の総拘束時間が3 400 時間を超えない範囲内において、1か月の拘束時間を 310 時間まで延長することができるものとする。この場合において、1か月の拘束時間が 284 時間を超える月が3か月を超えて連続しないものとし、1か月の時間外・休日労働時間数が 100 時間未満となるよう努めるものとする。

(2)1日の拘束時間、休息期間について

①拘束時間

・1日についての拘束時間は、 13 時間を超えないものとし、当該拘束時間を延長する場合であっても、 最大拘束時間は 15 時間とする。
・ただし、自動車運転者の1週間における運行がすべて長距離貨物運送(一の運行(自動車運転者が所属する事業場を出発してから当該事業場に帰着するまでをいう。以下同じ。)の走行距離が 450 ㎞以上の貨物運送をいう。以下同じ。)であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合、当該1週間について2回に限り最大 拘束時間を 16 時間とすることができる。
・最大拘束時間まで延長する場合であっても、1日についての拘束時間が 14 時間を超える回数 をできるだけ少なくするよう努めるものとする。

②休息期間

・休息期間は、勤務終了後、継続 11 時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする。
・ただし、自動車運転者の1週間における運行がすべて長距離貨物運送であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合、当該1週間について2回に限り、継続8時間以上とすることができる。この場合において、一の運行終了後、継続 12 時間以上の休息期間を与えるものとする。

(3)運転時間について

運転時間は、2日を平均し1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり44 時間を超えないものとする。

(4)連続運転時間について

貨物自動車運送事業に従事する自動車運転者の連続運転時間(1回が概 ね連続 10 分以上 で、かつ、合計が 30 分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間をいう。以下 2において 同じ。)は、4時間を超えないものとする。当該運転の中断は、原則休憩とする。
(※)通達において、「概ね連続10 分以上」とは、例えば、 10 分未満の運転の中断が3回以上連続しないこと等を示すこととする。
ただし、サービスエリア、パーキングエリア等に駐車又は停車できないことにより、やむを得ず連続運転時間が4時間を超える場合には、 30 分まで延長することができるものとする。

(5 )予期し得ない事象に遭遇した場合について

事故、故障、災害等、通常予期し得ない 事象に遭遇し、一定の 遅延が生じた場合には、客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間の規制の適用に当たっては、その対応に要した時間を除くことができることとする。勤務終了後の休息期間は、継続 11 時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らないものとする。
(具体的な事由)
ア運転中に乗務している車両が予期せず故障した場合
イ運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した場合

ウ運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖された 場合、道路が渋滞した場合
エ異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった場合

(6) 住所地における休息期間について

自動車運転者の住所地における休息期間がそれ以外の場所における休息期間より長くなるように努めるものとする。

(7) 拘束時間及び休息期間の特例について


休息期間の分割の特例
・業務の必要上、勤務終了後、継続9時間以上 の休息期間を与えることが困難な場合には、当分の間、一定期間における全勤務回数の2分の1を限 度に、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができるものとする。この場合において、分割された休息期間は、1日において 1 回当たり継続3時間以上、合計 10 時間以上でなければならないものとする。
(※)長距離貨物運送に従事する自動車運転者であって、1週間における運行がすべて長距離貨物運送であり、かつ、一の運行における休息期間が住所地以外の場所におけるものである場合は継続8時間以上
・なお、一定期間は、1か月程度を限度とする。分割は、2分割に限らず、3分割も認められるが、3分割された休 息期間は1日において合計 12 時間以上でなければならないものとする。この場合において、休息期間が3分割される日が連続しないよう努めるものとする。

②2人乗務の特例
・自動車運転者が同時に1台の自動車に2人以上乗務する場合(車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る。)においては、最大拘束時間を 20 時間まで延長することができる。また、休息期間は4時間まで短縮することができる。
・ただし、当該設備が次のいずれにも該当する車両内ベッド又はこれに準ずるもの(以下「車両内ベッド等」という。)であるときは、拘束時間を 24 時間まで延長することができる。
・また、当該車両内ベッド等において8時間以上の仮眠時間を与える場合には、当該拘束時間を 28 時間まで延長することができる。
・この場合において、一の運行終了後、継続 11 時間以上の休息期間を与えるものとする。
ア 車両内ベッドは、長さ 198cm 以上、かつ、幅 80cm 以上の連続した平面であること。
イ 車両内ベッドは、クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること。

③隔日勤務の特例
・ 業務の必要上、やむを得ない場合には、当分の間、次の条件の下で隔日勤務に就かせることができるものとする。
・2暦日における拘束時間は、 21 時間を超えてはならないものとする。ただし、事業場内仮眠施設又は使用者が確保した同種の施設において、夜間に4時間以上の仮眠時間を与える場合には、2週間について3回を限度に、この2暦日における拘束時間を 24 時間まで延長することができるものとする。この場 合においても、2週間における総拘束時間は 126 時間( 21 時間×6勤務)を超えることがで
きないものとする。
・勤務終了後、継続 20 時間以上の休息期間を与えなければならないものとする。

④フェリーに乗船する場合の特例
・自動車運転者が勤務の中途においてフェリーに乗船する場合、フェリーに乗船している時間は、原則として、休息期間として取り扱うものとする。
・その場合、休息期間とされた時間を与えるべき休息期間の時間から減ずることができるが、減算後の休息期間は、2人乗務の場合を除き、フェリー下船時刻から勤務終 了時刻までの間の時間の2分の1を下回ってはならないものとする。なお、フェリーの乗船時間が8時間 を超える場合には、原則としてフェリー下船時刻から次の勤務が開始されるものとする。

(※)2人乗務の場合には4時間、隔日勤務の場合には 20 時間

(8) 休日労働について
休日労働は2週間について1回を超えないものとし、当該休日労働によって、上記に定める拘束時間の限度を超えないものとする。

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