2024年改善基準告示2人乗務28時間拘束時間特例の謎を追求してみた | 対応トラックやベッドについて

公開日:2022年12月1日 / 更新日:2023年1月4日

2人乗務特例拘束時間20時間拘束時間24時間

皆さまご存じの通り、トラック運送ドライバーの労働時間については「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)を守る必要があります。
改善基準告示で定める拘束時間は原則1日13時間、週2日まで16時間まで可能とされています。

しかし、1台の自動車に運転者が同時に2人以上乗務する場合(ただし、車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る)においては、1日の最大拘束時間を20時間まで延長でき、また、休息期間を4時間まで短縮できるという特例があります。そして2024年からは28時間まで拘束時間を延ばせる特例も追加され、2人乗務の対応トラックは存在するかについても考察しました。

この2人乗務特例について深く考えてみました。

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋14年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

そもそもなぜ2人だと拘束時間を延ばせるの?

たとえば横浜から九州まで行くのは16時間では厳しいでしょう。2人で交代して運転していけば一人で連続して運転するよりも疲労が軽減されるので特例で20時間まで拘束できるという理屈はもっともです。

ただし、2日平均運転時間9時間は適用されますから2人でうまく分け合った上に、前日翌日の運転時間も考えないと特定日9時間超えになってしまうので要注意です。

20時間のうち助手席に寝てたら拘束時間から除外されるの?

1人が運転している間、隣の席で寝ていたとしてもそれは拘束時間になります。休憩時間にもなりません。

運転席の後ろのベッドの使い方

さてここで「車両内に身体を伸ばして休息することができる設備」ってなんなの?という疑問が湧いてきます。
え、湧きませんか?私は湧きます笑

特例で休息期間が4時間になるということは、座席後のベッドを使うんだよね?という素直な感覚です。

拘束時間20時間で仕事が終わり、4時間休息して再始業!となることを考えてみましょう。
ベッドは1つしかありません。
そのベッドで2人はさすがに寝ないでしょう。
では運転中にベッドで寝ている時間は休息期間に入るの?
いやいや、それじゃ4時間にしなくても2人で8時間ずつ休息していけば、拘束時間20時間特例にしてもらわなくてもエンドレス(ではないですけど)に進んで行けてしまいます。だからそんなことはありません。
そもそもトラックが走っていたらその中にいれば拘束時間であり労働時間です。
そして残念ながら現行の多くのトラックでは運転中に座席後のベッドで寝るのは道路交通法違反になります。

停車して、一人がベッドで4時間寝た後に、もう一人が交代してベッドで寝る?
それじゃ起きてる人の拘束時間がカウントされてしまって特例の意味がありません。

つまり、休息期間4時間は車両内座席後ベッドだけでは実現できず、少なくとも1人は宿を取らないといけないのです。
そして、もし1人が宿を取るのであればもう1人だって車内ベッドより宿に泊まりたいと思うはずです。

となると「ただし、車両内に身体を伸ばして休息することができる設備がある場合に限る」条件はなんの意味があるのか、とても疑問に思えます。

そもそも車両内に身体を伸ばして休息することができる設備って車両内座席後ベッドじゃないの?
でもそれって運転中は使えないよ?
2人乗務のときは車両内座席後ベッドって役立たずなんですね。

もしかして、現行のトラックでは2人で乗務しても、走行中に寝れるベッドが備わってないからそもそも「車両内に身体を伸ばして休息することができる設備」がないんということになり2人乗務特例の対象外なのではないか?
そういう疑問が湧いてきませんか?

2024年からの拘束時間24時間・28時間特例の条件

2024年から改善基準告示が改正されますが、その中に拘束時間を24時間と28時間まで延ばせる特例について以下の記載があります。

拘束時間28時間特例のルール(2024年改善基準告示から)

  • 当該設備が次のいずれにも該当する車両内ベッドであるときは、拘束時間を24時間まで延長すること ができる。
    また、当該車両内ベッドにおいて8時間以上仮眠する場合には、当該拘束時間を28時間まで延長することができる。
    この場合において、勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるものする。
    ア:車両内ベッドは、長さ198 cm 以上、かつ、幅 80 cm 以上の連続した平面であること。
    イ:車両内ベッドは、クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること。

「車両内に身体を伸ばして休息することができる設備」というあいまいな記載でなく、明らかに「ベッド」とあります。
そしてこのイの記載は走行中に寝ることが道路交通法上クリアしているものを想定しています。
今のほとんどの大型トラックの座席後のベッドは道路交通法上、走行中に寝ることはできません。
だから拘束時間28時間特例を使うためには、走行中に寝れるようなベッドを開発しなければなりません。

そうなると、立ち戻って、そもそも現行ルールでの「車両内に身体を伸ばして休息することができる設備」ってなんなのさ?という話になります。

いろいろな役所に問い合わせてみたらタライマワシ

神奈川県警交通総務課に確認したところ、やはり座席後のベッドで走行中寝ることはできないという回答。

神奈川運輸支局保安担当も「車両内に身体を伸ばして休息することができる設備」については労基に聞いてくれ、とのこと。

労働基準監督署は、「車両内に身体を伸ばして休息することができる設備」は保安基準の話だからうちではわかりません、という回答。

完全にたらいまわしにされています。

関東運輸局の環境・保安課の回答

神奈川運輸支局では回答がもらえなかったので、関東運輸局の環境・保安課に文書で回答をもらうようにしました。

すると文書では無難な回答だけが来ました。

仕方が無いので電話で胆となる部分を確認するとこのような回答でした。

「車両内に身体を伸ばして休息することができる設備」というのはリクライニングする座席のことです。

私が「それはフルフラットでなくてもいいのですか?」と聞き直すと「フルフラットでなく、現行のトラックのシートで構いません」ということでした。

そのような解釈により、2人乗務特例は胸を張って使えるということになります。(これについては必ず各自の自己責任で管轄運輸支局担当者に確認してください。トラサポは一切責任持ちません。なぜなら文書で公開されていないからです。)

運転席が身体を伸ばせる場所として解釈されるとは想定外でした。

2022年12月23日追記 車両内ベッドについて

  • 2022年12月23日改訂版「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部改正等について」にて以下のように記載があります。
  • なお、車両内ベッドについては、関係法令の趣旨を踏まえ、安全な乗車を確保できるようにする必要があるところ、例えば、運転席の上部に車両内ベッドが設けられている場合、当該車両内ベッドにおいては、安全な乗車が確保できないことから、2人乗務において使用することは当然に認められない。
  • 今の流れだと積載スペースを減らしてまで2人乗務ができるトラックのニーズはなさそうなので、この特例が使われることはあまり想像できなそうですね。ちなみに、助手席を「車両内に身体を伸ばして休息することができる設備」に該当するかどうかの新しい解釈の記載は見当たりませんでした。

休息期間を4時間に短縮できる本当のメリットとは?

しかし私はまだスッキリしません。

4時間休息の特定にはどんなメリットがあるのか、という問題です。

走行中にベッドで仮眠できるなら完全休息はたったの4時間でも次の仕事にそこまで支障は出ないと思いますが、走行中は乗務席に座っていますから、拘束時間20時間後の完全休息4時間だけで疲れを取るのは短い気がします。

そもそもたった4時間の休息をどこで取るのでしょうか?
その4時間を運転席もしくは助手席で取るのでしょうか?
それじゃとてもじゃないですが生物学的に言って眠気はともかく体は休まりません。確実に身体能力は低下し、危険極まりない状態になってしまいます。
会社の指示で「仕事終わったら運転席で4時間休息ね。宿取るなら自腹ね。」なんてことしたらドライバーに訴えられて一瞬で終わりです。

4時間を宿で取るのでしょうか?
移動してシャワー浴びて寝て、起きて準備して、そんな時間を除いたら2時間も寝れませんよね。
余計疲れます。

この休息期間を4時間にする特例のメリットは謎のまま残りました。

2024年からの拘束時間28時間まで延長可能特例についての注意点

発表資料だとこの図下段の「見直し後」のようになっており、はじめの12時間が交代運転可能時間となっています。しかし、この図では8時間仮眠できるのは1人の運転手だけの想定で書かれているように見えます。

2024年からの2人乗務特例イメージ

2024年からの2人乗務特例イメージ(転載:資料1 改善基準告示の見直しについて 第2回 持続可能な物流の実現に向けた検討会 厚生労働省 労働基準局 監督課)

しかし、2人乗務なのですから2人とも28時間特例を受けるためにはもう一人も8時間仮眠しなければなりません。
そうすると図は本来こうなるはずです。

2人乗務で仮眠8時間を交互に取る必要がある

2人乗務で仮眠8時間を交互に取る必要がある

そうすると交代運転できる時間帯はかなり狭くなってしまいます。
それでも拘束時間28時間と2日平均運転時間9時間の中で行うことは可能ですから有効に使えますが、公表資料は8時間仮眠取るのは1人だけのように見えます。

明記されていませんが、これが成立するためには運転中にこのベッドで寝ることが仮眠時間8時間とカウントされることが大前提です。しかし仮眠時間は拘束時間となります。(休憩時間となるかは現時点不明です)

まとめ

2人乗務の特例を受けるには、乗車定員2人以上でリクライニングができる座席であれば可能となります。(これについては必ず各自の自己責任で管轄運輸支局担当者に確認してください。トラサポは一切責任持ちません。なぜなら文書で公開されていないからです。)

運転席が身体を伸ばせる場所として解釈されるとは想定外でした。

2024年から拘束時間24時間特例を受けるには長さ198cm以上、かつ、幅80cm以上の連続した平面又はこれに準ずるもの(以下「車両内ベッド等」という。)でがあれば良いと言うことになります。
「準ずるもの」に現状の座席が含まれるかどうかは不明です。

2024年から拘束時間28時間特例を受けるには、道路交通法・保安基準上にて、もう1人が運転中に寝ることができるベッドが必要です。

詳しくは管轄の運輸支局の保安担当に確認してください。

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