トラック緑ナンバー名義貸しってダメなの?専門行政書士が解説します。

公開日:2018年10月27日 / 更新日:2024年5月5日

業界では少なからずある「名義貸し」「ナンバー貸し」。色々な工夫をしながら、法の穴をすり抜けようとしている人が沢山いますが、実際は30日の事業停止(その営業所のトラックが全部動かせない!)が下されます。ナンバー貸しとは?個人償却制とは?どこまでOKなのか?徹底的に解説します。

運送業専門行政書士鈴木隆広【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】

ナンバー貸しとは?

トラックの緑ナンバーを付けるためには、当然ですが「一般貨物自動車運送事業」の許可を取らなければなりません。
法人(株式会社、合同会社など)でも個人事業主でも、その許可は取れますが、どれで取るにしても「5台のトラック」「5人以上のドライバー」など、一人だけでは超えることが出来ないハードルがあります。

サラリーマンドライバーはイヤだ!トラックは持っているから自分でガンガン稼ぎたい!という人はどうすればよいのでしょうか?
白ナンバーでガンガンやっている人もいますが、それは完全な無許可営業ですし、さすがにそれが横行する時代ではありません。

そこで、自分のトラックを一般貨物自動車運送事業の許可を持っている事業者に持ち込んで増車してもらい、その会社名義の車検証にしてもらうというのはナンバー貸しの正体です。
よく、車検証の所有者欄が個人の氏名(緑ナンバーの名義を借りる人)で、使用者に運送会社の名前が入っている事業用車検証を見ますが、運輸支局やトラック協会は間違いなくそれを怪しく思います。総勘定元帳などに売掛金としてその人の個人名が入っていたらアウトです!

ナンバー貸しと名義貸しの違い?

”ナンバー貸し”と”名義貸し”は同じ意味です。

なぜナンバー貸しをするのか?

違法だと知っていて、なぜナンバー貸しをするのでしょうか?両方の立場から考えます。

持ち込みドライバー
白ナンバーでは受けさせてくれない仕事でも、緑ナンバーがあればガンガン仕事をして稼げる。
名義を貸す運送事業者
”なにもトラブルがなければ”、なにもしなくても毎月数万円が入ってくる。

ナンバー貸しトラックの車検証は、以下のように、使用者に運送事業許可業者が記載され、”事業用”となっています。
トラック持ち込みなので、所有者は持ち込みドライバー個人のまま、というケースもあります。

ナンバー貸し車検証イメージ

ナンバー貸し車検証イメージ

行政書士

トラックを持ち込みこと自体は悪くありません。
では、なにが悪いのでしょうか?
大きな2つの特色があります。

その1:ドライバーが運送会社に雇用されていない⇒名義貸し!!

原則、運送事業者のドライバーはその運送事業者に雇用されていなければなりません。
※ただし、派遣社員または出向社員は大丈夫です。
その上で、“常時選任運転者”のルールをクリアしている必要があります。

<常時選任運転者の基本ルール:以下の人はNGです!!>

  • 日雇いの人
  • 二か月以内の契約社員
  • 試みの使用期間の人(14日を超えたらOK)

ここでわかるように、従業員であることが前提になっており、そもそも外注の個人事業主を想定していません。緑ナンバーのドライバーは個人事業主の時点で一発アウトなのです。

だから、そもそも“雇われていない”個人事業主が緑ナンバーを運転できる余地がないのです。
派遣社員だって出向社員だって、どこかに会社には雇われています。
ちなみにパート、アルバイトなどの時短勤務の人が常時選任運転者になれるかどうか、という質問をよくいただきますが、それらは問題ありません。ただし、日雇いのバイトはさきほどのルールに違反するのでNGです。

雇われていない人で緑ナンバーを運転できる人とは?

運送事業者の役員もしくは、個人事業主として一般貨物自動車運送事業の許可を取得した人だけが、雇われていない=経営者であるので常時選任運転者となることができます。

その2:運賃が運送会社を通らないで直接ドライバーに支払われる⇒名義貸し!!

名義貸しの場合、運賃が運送会社に入金されず、持ち込みドライバーに直接支払われていることが多いでしょう。持ち込みドライバーは、保険料や燃料費、車両修繕費などの維持費を全て自分で負担します。売上からそれらを除いた残りから、ナンバーレンタル代を運送事業者に支払います。

これは完全に黒のケースであり、言い訳のしようがありません。

もし、運賃が運送会社を通っていたとしても、持ち込みドライバーへの支払が“外注費”や”庸車費”になっていたら即名義貸しです。

いずれのケースも運送事業者、持ち込みドライバーともに罰則の対象となります。
罰則について詳しくは、「ナンバー貸しの罰則」「無許可営業の罰則」をご参照ください。

その3:タクシー法での名義貸しの基準(参考)

千葉県トラック協会適正化実施期間の資料では以下のように、タクシーでの名義貸し資料からの抜粋があります。

簡単に言えば、ごく一般的な「運送会社に勤めているドライバー」でなければ違法なのです。イメージと少し違うのは「出向・派遣社員・アルバイトは問題ない」というところではないでしょうか。

こんな形態は名義貸し!!

  • (1)雇用関係
    イ.運転者との雇用(派遣)契約が締結されていない
    ロ.運転者について、固定給又は保障給等一定の保障された給与の支払いがない
    ハ.運転者について、社会保険料及び雇用保険料控除並びに源泉徴収が行われていない
    二.就業規則及び服務規律が定められていない
    (2)経理処理関係
    イ.乗務における運賃・料金収入の全額が、事業者収入に計上されていない
    口.許可事業者の支出の一部が運転者の事業所得に該当すると認められる支払いに充てられている
    ハ.車庫使用料、事業用自動車に係る諸経費、一般管理費等事業運営に要する経費を許可事業者が負担していない
    (3)運行管理関係
    イ.乗務割りが作成されておらず、適切な勤務及び乗務管理が行われていない
    口.運行前及び運行後点呼が適切に実施されておらず、点呼内容が適切に記録されていない
    ハ.運転者に対する指導及び監督が適切に行われていない
    (4)車両管理関係
    イ.事業用自動車等の事業施設の管理(保管)を許可事業者が行っていない
    ロ.事業用自動車の定期点検等を許可事業者が行っていない
    ハ.事業用自動車に係る車両購入(リース)契約を許可事業者が行っていない
    (5)事故処理関係
    イ.事故発生後の交渉を許可事業者が行っていない
    ロ.事故の損害賠償を許可事業者が行っていない

個人償却制の正しいやり方

ナンバー貸しと似ているもので、「個人償却制」という言葉があります。
個人償却制には合法のものと違法なものがあるので、しっかり理解しましょう。

一番怖いのは、「他の人もやってるから大丈夫だろう」という安易な考えです。
今、「無知は罪」になってしまう、せちがらい世の中なのです。。。
赤信号をみんなで歩いたら怖くはないかもしれませんが、もし大きな車が突入してきてしまったら、みんなで大変な目に遭うのです。

合法のやり方

ドライバーは運送事業者に雇用されており(つまり“給与”を支払われている)、かつ常時選任運転者の資格をクリアしているケースです。
これは、給与体系が個人償却制になっているだけで、違法ではありません。
この場合の給与計算はこのようになります。

個人償却制の給料計算イメージ

個人償却制の給料計算イメージ

この図はあくまでイメージです。これであれば絶対に大丈夫ということではありません。

給与規則が複雑になりますが、理論的には可能です。
※売上からの変動費と固定費の控除割合については、事業運営費をあまりに従業員に負担させ、実質個人事業主のようになると名義貸しに捉えられるケースもあるようなので要注意です。

このようなルールは「形だけ整える」のでは違法になる、と思っておくのがよいです。
「実態はどうなのか」という考え方で捉えましょう。

もちろん、残業時間については残業代を上乗せし、深夜業務については深夜業務手当を上乗せする必要があります。
当然、労働時間についての”最大拘束時間15時間””毎月拘束時間284時間””仕業間休息9時間”などのルールや、対面点呼、ドライバーへの指導教育、適正診断等は守らなければいけません。

このような給与体系を設定する場合は、社会保険労務士と会社の実態に則してよく相談した上で、綿密に作成してください。しかし、こんな変なやり方をしていると結局余計なことに頭を使うだけで良いことはありません。可能な限りシンプルでドライバー全員に対して公平な給与体系を作ることを心がけましょう。

注意点

この点をクリアしたとしても、直行直帰では無点呼運送になりますし、毎年の指導教育を受けていなければ、指導教育義務違反となります。この場合は、グレーゾーンなのかブラックなのか微妙なところになるでしょう。
繰り返し言いますが「ごく普通のイメージのサラリーマンドライバー」でなければ違法な可能性がとても大きくなります。

非合法のやり方→NGです!!

上記以外の合法なやり方はありません。
多くの個人償却制とうたっているケースは、“外注費”もしくは”庸車費”として支払っています。
“外注費”もしくは”庸車費”で支払っている場合は、その時点でそもそも名義貸しとなってしまうので、完全にアウトです。
派遣社員や契約社員の場合は、会社間での支払いとなりますので、会社間でしっかりと契約しましょう。

また、組合や合名会社などで個人事業主の集まりのような脱法行為で「個人で緑ナンバーが取得できます!」とうたっている人がいますが、そのような形態は過去に逮捕されているので安易に信じないようにしてください。行政書士が率先してそれをしているという悪質なケースもあります。

繰り返しになりますが、あくまで緑ナンバーを運転できるのは“常時選任運転者”だけなのです。

ナンバー貸しの罰則

ナンバー貸しは貨物自動車運送事業法第27条で禁止されています。
罰則は貨物自動車運送事業法第70条にて、3年以下の懲役または300万円以下の罰金。いずれかか、もしくは両方とも下されることがあります。
行政処分として30日間の事業停止を受けることになります。事業停止というのは、その営業所のすべてのトラックが使えなくなり、仕事の電話も受けても発信してもいけなくなります。とても重い罰則です。仕事を請けて、仲間の傭車さんに振ることすらもできないのです。
事業停止の行政処分を受けると、その後6カ月間は規模拡大の認可申請をすることはできません。

無許可営業の罰則

ナンバーを借りていた持ち込みドライバーは、無許可営業となります。
ナンバー貸しと同じく、貨物自動車運送事業法第70条にて、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となります。いずれかかどちらも下されることもあります。
一般貨物自動車運送事業者でないので、貨物自動車運送事業法における行政処分はありません。
懲役を受けると、一般貨物自動車運送事業許可の欠格事由になるので、懲役が終ってから5年経過しなければ、一般貨物自動車運送事業の許可を取得することもできません。
ちなみに、懲役を受けずに罰金刑だけを受けた場合は、欠格要件には抵触しません。

まとめ

私も一人一車制のような仕組みをなんとか実現できないか、といろいろと考えましたが、合法のやり方は見つかりませんでした。
組合などを使うスキームは、惜しいところまでいけそうなのですが、どうしても利益配分を柔軟にするところで躓いてしまいます。(そのようなことで実現できるという悪質な業者にご注意ください)

そもそも貨物自動車運送事業法の目的には以下のことが書いています。

貨物自動車運送事業法の目的

  • 貨物自動車運送事業の運営を適正かつ合理的なものとする
  • 輸送の安全を確保する
  • 貨物自動車運送事業の健全な発達を図る
  • 公共の福祉の増進に資する

これらの目的ために、国土交通省は、5台のトラック、5人以上のドライバーという最低規模要件を設定しているのです。
個人事業主の集まりのようなものは、社会保険の未加入を横行させ、各個人がなににも管理されずに勝手に仕事をすることで安全の担保ができない上に、公平な競争の阻害要因になります。
結局、どのようなやり方をしてもそんなうまい方法はない、ということになるのです。

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