2024年問題の切り札!?普通貨物車1台から事業使用可能になるのか?

公開日:2023年4月19日 / 更新日:2023年5月22日

普通貨物車1台から事業使用可能にするという内閣府会議

2023年4月6日に開催された内閣府 規制改革推進会議スタートアップ・イノベーションワーキング・グループ において、 一般社団法人日本IT団体連盟と全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会により、以下のような提言がなされました。

現行の軽自動車(排気量660cc、最大積載量350kg)から普通車(排気量2,000cc程度、最大積載量1,000kg程度)へ拡充

軽貨物乗用利用の規制緩和がありましたがそれはあまり利用されませんでした。(全国で約2800台)

規制改革推進会議の答申を踏まえ、6月に閣議決定する2023年度の「規制改革実施計画」に盛り込まれる可能性が出てきた(物流ニッポン4月18日記事より引用)ということなのでもしかしたら「1台で緑ナンバー」が可能になるのかもしれません。

これはラストワンマイルの人手不足を懸念した対応案です。

1台から事業用にできることへの懸念

こんな感じで「1台で緑ナンバー」が実現できてしまうようであれば、一般貨物運送業許可というか貨物自動車運送事業法の意義はどうなるのでしょうか?

貨物自動車運送事業法の第1条(目的)にはこうあります。

「民間団体等による自主的な活動を促進することにより、輸送の安全を確保するとともに、貨物自動車運送事業の健全な発達を図り、もって公共の福祉の増進に資する」

このような改正(改悪)がされると最も大切な「輸送の安全」が損なわれていきいます。。。

昨今、宅配業界で軽貨物黒ナンバー事業者が激増しています。

軽貨物事業者にも改善基準告示ルールは適用されるのですが現実問題はそれは守られていません。というか国交省もそんなことを申請者に伝えようとはしていません。(軽乗用解禁のときから紙は配っていますが、核心のところはあえて伏せています)

こんな状態が軽貨物自動車でなく普通貨物まで広がったら、事故の被害は当然増えていきます。

排気量2,000cc程度、最大積載量1,000kg程度というのは要するにハイエースのことですね。

現実的には小型貨物(4ナンバー)トラックを想定しているでしょう。

細い道も軽貨物だったら行けるますが、ハイエースだと行ける道も限られます。慣れない道での接触事故は明らかに増えるでしょう。

そして今まで軽貨物だったらなんとか邪魔にならなかった路駐がハイエースになされることにより、道路の死角が増え、渋滞も増えて、道路交通の利便性と安全が損なわれます。

また、どのように軽貨物事業者への小型貨物自動車の解放を法的に改正するのか想像できませんが、軽貨物事業者は現実的には対面点呼せず労働時間ルールも守らない無法地帯ドライバーがはびこっています。

実現するかどうかは怪しいですが、2024年問題により、今の物流の3割のモノが運べなくなるという予想があります。

長年、運送業界専門行政書士として携わった経験から以下のルールを提言します。

軽貨物事業者への小型貨物トラック解放の際に設けてほしいルール

  • 拘束時間把握の為に日報作成記録付きデジタコ装備の義務化および3カ月ごとの運転日報の運輸支局への報告
  • IT点呼認定一般貨物事業者への対面点呼実施の外注義務化及び3カ月ごとの点呼記録簿の運輸支局への報告
  • 運輸支局申請時の改善基準告示遵守の宣誓書添付および1時間以上の講習受講義務。定期報告運転日報により改善基準告示違反があった場合の車両使用停止処分を厳格適用
  • 支局への申請時に、初任運転者特別指導(15時間座学+20時間同乗研修)を佐川などの外部機関で受講した記録証の添付およびNASVAの適性診断票の添付
  • 運搬貨物は宅配便に限る 荷主限定制限(貨物自動車運送事業法で言う特定貨物自動車運送事業)

これらを議論していると、現実的な改正方法としては以下のようになる可能性があります。

ありうる法改正の内容

  • 特定貨物自動車運送事業の一形態として認める
  • 車両1台で、現状より大きな制約(先ほど筆者が提言したルール)と併せて規制緩和とルール厳格化を伴ったもの
  • もしくは介護タクシーのぶらさがり有償運送許可と同じような、大手宅配便会社のぶらさがりとしての自家用有償運送許可の拡張

軽貨物とハイエースの積載量の違い

軽貨物の最大積載量は350kg、ハイエースの最大積載量は1000kgなので重量的には約3倍です。

荷台寸法による容積はどうでしょうか?

軽貨物 長1,700mm × 幅1,300mm × 高1,200mm = 容積約2.65m3

ハイエース 長3,000mm × 幅1,545mm × 高1,335mm = 容積約6.18m3

容積だと約2.33倍ですね。

軽いものだとハイエースの効果は、車両維持費などコスパを考えるとあまりないのかもしれませんね。

まとめ

まだまだ議論が進んでいませんが、筆者の考えを述べました。

2024年問題の切り札がコレ??というものすごい不安があります。

それよりも一般貨物運送事業者の運賃アップについて国はまだまだやれることがあるのではないでしょうか?本当に本気で運賃アップに取り組むべきです。多くの運送会社に話しを聞くと、結局大事なのは運賃アップです。

無法地帯のハイエース事業者がはびこることで、当然運賃は低下します。それは普通の一般貨物事業者に波及して積載量1トン事業者の運賃相場はどんどん低くなり、ちゃんとした一般貨物事業者のドライバーがやめていきます。そしてどんどんこの新設の個人事業主ドライバーになっていきます。

軽貨物ドライバーもはじめは良い運賃だったけど、結局たくさん働かなければ月50万稼げないことに気付き、やめていく人も多くいます。

この制度も、2024年に間に合うような拙速なスケジュールで始めると結局日本の物流は破綻の道へどんどん加速すると思われます。