2019年11月から許可要件・認可要件・増車届が大幅厳格化(一般貨物自動車運送事業)
一般貨物自動車運送事業の新規許可などの要件がものすごく厳しくなります。必要な残高証明は2~3倍必要になり、一定規模の増車は届出から認可申請となります。許可取り消し会社が別会社で新規許可する逃げ技が使えなくなります。全ての事業者様、必見です。
【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】改正の背景
許可取り消しがあっても、新会社で許可を取ってほとんど無傷で事業継続できてしまった会社があり、問題になっていました。大型トラックやバスの事故がどんどん増え、社会問題になっています。運送事業者へのコンプライアンスの要請は年々強まっています。
それを受け、行政処分を受けたり、巡回指導で点数が低いところは事業拡大の申請をできなくする、対面点呼を厳格化させるために、車庫の距離要件を併設限定にするなど、想像をはるかに超えた厳格化が実現されることとなります。
一般貨物自動車運送事業の新規許可要件やその他の運用が2019年11月から大幅に変わるパブリックコメントが国土交通省から2019年5月30日に発表されました。
国土交通省のパブリックコメントページ
まだパブリックコメントの段階なので、このまま決まるというわけではありませんが、往々にしてこのまま進みます。
全ての運送事業者に大きなインパクトがあるので、ここでしっかりと理解しておきましょう!!
また、運送事業者の方にとっては無視できないほどの内容なので、どんどん国土交通省に意見を送った方がよいと思います。
許可要件の改正点
欠格事由
欠格事由の対象者として以下の者も含めることとなりました。
新たに欠格事由の対象となる人
- ・許可を受けようとする者と密接な関係を有する者(親会社、グループ会社、子会社等の具体的内容として、許可を受けようとする者の議決権の過半数を所有していること等を定める。
つまり、今までは個人事業主もしくは役員のみが対象でしたが、役員が重なっていない資本関係だけの親会社なども対象になるということです。
また、申請者の役員に占めるその役員の割合が2分の1を超える者や、申請者の株主と株主の構成が類似している者という具体例が挙げられたり、今までは常勤役員のみが対象だったのが、非常勤役員も対象になるということも挙げられています。
※しかし、これは非常勤の監査法人なども宣誓書に法人の実印が必要になるのか、などの疑問な点もあります。
これは、ある会社が許可取り消しになっても、役員が全く異なる他の会社を作ってしまえば、事業を継続できるという抜け道を防ぐ意図があると思われます。
施設要件
自動車車庫を原則として営業所に併設することが求められるようです。
これは対面点呼の厳格化という姿勢でしょう。
併設となると厳しすぎるので、ある程度の幅は設けられると思いますが、個人的には現実的に自動車で移動できる10分以内くらいではないかと考えます。
また、今まで、営業所や車庫の使用権原が1年以上と定められていたものが2年以上となります。
資本要件
変更となる資本要件
- ・人件費、燃料費、油脂費、修繕費2ヶ月から6ヶ月
- ・車両費、施設購入・使用料6ヶ月から12ヶ月
- ・任意保険に対物200万円以上の条件が追加
人件費と車両費、施設費は資金計画のほとんどを占めるので、これらによって必要な残高証明が2~3倍になることとなります。
具体的には今まで最低構成だと600万円ほどだったのが、1500万円ほどの残高証明が必要になると思われます。
しかも、今現在は多くの運輸局で2回目の残高証明の日付については柔軟な対応がされていますが、日付指定だったり1回目から2回目残高証明日までの通帳コピーの提示ということも考えられます。
損害賠償能力に関して、今まで定められていなかった対物の任意保険の限度額が200万円以上であることとなるので、必要な保険料が上がります。
認可申請の要件改正点
事業規模の拡大(営業所の新設や面積増加、車庫の新設や面積増加、一定規模の増車)となる認可申請に係る認可基準について、以下の要件が追加されます。
認可申請の改正点
- ・今まで行政処分終了から認可申請できない期間が3か月(重大違反は6カ月)だったのが2倍程度に増えます。
- ・申請に係る営業所に関して、申請日前一定の期間又は申請日以降、認可までの間における巡回指導の結果等を踏まえ、法令遵守が十分に行われていないと認められるものでないこと。
- ・申請に係る営業所に関して、申請日前3ヶ月間又は申請日以降、認可までの間に自らの責による重大事故を発生させていないこと。
- ・特別の事情がある場合を除き、申請に係る営業所を管轄する運輸支局管内における申請者の保有する全ての事業用自動車について、自動車検査証の有効期間が切れていないこと。
- ・事業報告書、事業実績報告書、運賃・料金の届出を全て提出していること。
- ・運賃と役務に対する対価としての料金とを区分して収受する明確に規定されている約款を使用していること。(平成29年11月改正の約款に対する必要な手続きをしているかどうか)
増車届の取扱いの変更
今まで、何十台増車しようとも、即日有効となっていましたが、以下のケースは事前届でなく、認可申請となる方向です。
・事業の継続的遂行の観点から問題を生じるおそれがあると認められる当該数の変更を行おうとする場合。
→つまり、5台割れの減車は即時効果の発生する届出ではなく、認可申請となるか、もしくはそもそも認められない方向となるでしょう。
・変更を行おうとする者が法第5条第3号(密接関係者が許可の取消しを受け5年を経過しない者である場合)に該当する等法令遵守が十分でないおそれがあると認められる場合。
→つまり、密接関係者とあるので、許可取り消し会社が別会社で新規許可を受けて、一気に増車することを防止する意図だと思われます。
・一定の規模以上の増車を行おうとする場合。
→つまり、本来であれば30台で事業を行おうという会社が、技術的な要因からまずは5台で申請し、運輸開始届後に25台増車するということがすぐにはできなくなるということでしょう。許可を受けたらすぐに30台で稼働させたいのであれば、30台分の資金計画を作成し、それを満たす残高証明を添付する必要があるということです。
一定規模お増車が認可申請扱いとなるということは、行政処分を受けると少なくとも6カ月(3か月の2倍)は多い台数の増車ができなくなる、ということとなります。
一定規模というのは、具体的に何台と定められるのか、現在の総台数の何割と定められるのか、明言されていません。
今までは、行政処分としての車両使用停止期間が終われば、すぐに増車ができていましたが、それができなくなるということです。
事業廃止届の取扱いの変更
今までは、許可取消や重大な行政処分を受けることになったとしても、許可取消の行政処分が下りる前に事業廃止の届け出をすれば、実際はそれを免れることができました。
しかし、本改正施行後は事業廃止が認可手続き30日前の事前届け出となるため、処分逃れの事業廃止はできなくなります。
まとめ
ルールに定められていることをしっかり守る事業者だけを生き残らせ、守らない事業者は市場から退場させようという意図を強く感じます。
もう適当にやり過ごせる時代は終わりを告げつつあります。
一般貨物自動車運送事業許可業者として、しっかり義務を果たし、安全と安心を追求する事業者となっていくしかありません。
巡回指導やコンプライアンスに不安のある方は、ぜひトラサポメンバーにご相談ください。
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