労働基準法施行規則第32条は2024年問題対策の切り札か!?|長距離運行休憩時間特例
労働基準法施行規則には休憩なしで長距離運行をしていいというルールがあります。同じ労働時間であれば休憩時間が短い方が拘束時間を短くすることができます。そのルールは2024年問題に対して若干でも対策になるのかどうか検討します。
【トラサポ主宰】運送業専門行政書士「行政書士鈴木隆広」 神奈川運輸支局前、一般貨物自動車運送事業一筋16年の行政書士。平成30年1月には業界初の本格的運送業手続き専門書籍「貨物自動車運送事業 書式全書」が日本法令から出版される。【本部:神奈川県横浜市都筑区池辺町3573-2-301】労働基準法には休憩不要長距離運行の特例があります
労働基準法施行規則第32条には「6時間以上の運行となる長距離運行では休憩を取らなくて良い」というルールが定められています。
労働基準法施行規則第32条
- 使用者は、法別表第一第四号に掲げる事業又は郵便若しくは信書便の事業に使用される労働者のうち列車、気動車、電車、自動車、船舶又は航空機に乗務する機関手、運転手、操縦士、車掌、列車掛、荷扱手、列車手、給仕、暖冷房乗務員及び電源乗務員(以下単に「乗務員」という。)で長距離にわたり継続して乗務するもの並びに同表第十一号に掲げる事業に使用される労働者で屋内勤務者三十人未満の日本郵便株式会社の営業所(簡易郵便局法(昭和二十四年法律第二百十三号)第二条に規定する郵便窓口業務を行うものに限る。)において郵便の業務に従事するものについては、法第三十四条の規定にかかわらず、休憩時間を与えないことができる。
② 使用者は、乗務員で前項の規定に該当しないものについては、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が法第三十四条第一項に規定する休憩時間に相当するときは、同条の規定にかかわらず、休憩時間を与えないことができる。 - 別表第一(第三十三条、第四十条、第四十一条、第五十六条、第六十一条関係)
(中略)
四 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業 - 労働基準法第34条(休憩)
- 第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
② 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
ここで「長距離」と言っています。それは「昭和39年6月29日 基発355号」という文書で触れられています。
労働基準法解釈総覧改訂16版 P521より引用。
(昭和39年6月29日 基発355号より)
(1)
第一項にいう「長距離にわたり継続して乗務する」とは、運行の所要時間が6時間を超える区間について連続して乗務して勤務する場合をいうものであること。
(2)
第2項にいう「乗務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合」については、客観的な判断によってこれを判定すべきであり、単に使用者の主観的判断による場合はこれに該当しないものであること。
また、これを受けて、横浜南労働基準監督署は「そのとおり=休憩時間不要」と回答しました。
そして2024年4月1日からの改善基準告示での4時間連続運転内内の休憩時間については厚生労働省Q&Aでこう回答しています。
「業務の実態等を踏まえ、短期的には見直しが難しい等の特段の事情がある場合には、運転の中断時に必ず休憩を与えなければならないものではなく、例えば、荷積み・荷卸しや荷待ちを行ったとしても、改善基準告示違反となるものではありません。」
このルールは6時間ぶっとおしで運転するなら逆に休憩いらないよ、という今の時代とは完全に逆行しているルールとなっています。
現在(2024年3月末まで)は16時間までは休憩なしで運転してよいということ
つまり、現在は16時間(2024年4月からは15時間。長距離特例16時間)までは休憩なしで運転してよいということになります。
しかし、「運行の所要時間が6時間を超える区間について連続して乗務して勤務する場合」とあります。これは4時間連続運転と明らかに矛盾しています。4時間以上の「連続して乗務」はさすがに許されていないと考えるのが自然でしょう。
4時間連続運転したら30分はトラックを下りないといけないわけであり、それをすることでこの6時間連続から外れることにより、規則32条の恩恵を受けられないとなるという論理もあるかと思います。
ただ、そうなるとこの規則第32条と改善基準告示のどちらが強いか?という話になります。
もし告示より規則の方が強いということになれば、ぶっとおしで仕事していいということになります。
休憩時間を取るということは、労働時間が同じであれば、その分拘束時間が長くなるということです。
2024年改訂改善基準告示では1日最大拘束時間は15時間となるので、休憩時間が少ない方が守りやすいのは確かです。
しかし、休憩時間を取らないことは確実に事故増加につながります。
「使用者の主観的判断による場合はこれに該当しないもの」とあるように、拘束時間短縮のためだけにこのルールを使うのは認められないでしょう。本当にやむを得ない事態の急の事態の防護策となりえるという感覚が正しいでしょう。
ここについてはさらに調査しなければなりません。
⇒トラック協会等に確認したところ、4時間連続運転禁止のルールの方が強いので、この長距離特例はトラックドライバーには適用されないということでした。
このルールをどのように使えばいいか?
この労働基準法第32条は文章を読めばわかりますが、とても古い社会環境を想定しています。
今は休憩取らないで走って良いよ、なんて時代ではありません。
会社としては、休憩時間を取らない運行を考えることはあってはいけないことです。
しかし、現実はルールの通りにいかないことがあることもあるので、万が一そのような事態になったときの自己防衛の理論武装はとても必要なことです。
⇒トラック協会等に確認したところ、4時間連続運転禁止のルールの方が強いので、この長距離特例はトラックドライバーには適用されないということでした。
このルールについて、ぜひ皆さま、自社管轄の運輸支局監査部門と労働基準監督署に確認してください。