トラックドライバーのための正しい睡眠の取り方

公開日:2022年7月15日

ドライバーのための正しい睡眠の取り方

2018年6月1日から点呼時に睡眠状況について確認することとなりましたが、具体的にどのようにチェックすれば良いかわからない会社が多いと思います。睡眠に対する個人差が大きすぎるし、睡眠の効果についての科学的研究自体がまだまだ発展途上なので当たり前なことです。しかし、「睡眠負債」という言葉を有名にしたスタンフォード大学の西野先生がわかりやすい書籍を出版したり、一般大衆にも「正しい睡眠の取り方」が徐々に広がってきています。

驚くことに、睡眠不足は飲酒運転と同じくらい悪影響を及ぼします!

私も西野先生のセミナーを受け、書籍を読みたので、それらをわかりやすく解説します。
※私が理解した範囲で解説しているので、科学的根拠を私が保証するものでもなく、もしかしたら多少の不正確な部分があるかもしれませんがご容赦ください。

十分な睡眠時間って結局何時間?

睡眠は大切だということはわかっていても、たくさん寝すぎると頭が痛くなったり、起きた後も頭がボ~っとしたりします。

「私は8時間寝ないとダメなんだ」というのは本当なのでしょうか?
「毎日5時間睡眠だけど全然へっちゃらだよ」という人はそれを続けてもいいのでしょうか?

睡眠時間は90分の倍数が良いということを聞いたことある人もいると思います。
私も学生時代は90分の倍数で起きるようにと工夫しましたが、結局授業中は寝ていました。

これについては結論としては気にしなくていいようです。
90分倍数を気にするよりは目覚めが良いかどうかの方が断然大事だということです。

自分にとって十分な睡眠時間を正しく知る方法は結構大変です。
もう寝続けられないという時間まで寝ることを3週間ほど続けます。
はじめの方はムリヤリ10時間以上寝れてしまいますが、数日でその時間が安定して来るそうです。
その時間があなたにとっての必要十分な睡眠時間ということになります。
しかし、この方法で調べるのはあまり現実的ではありませんよね。

実験の結果では、十分な睡眠時間は8時間12分くらいに落ち着くそうです。

睡眠時間6時間は生物的に足りない!

少なくとも睡眠時間6時間では生物的に足りないという事実があるそうですので、6時間睡眠で十分と思ってる人は多いと思いますし、日本人の平均睡眠時間は6時間弱ですが、世界的に見るとそれはものすごく短いようです。

睡眠時間6時間で毎日普通に生きていると思っていても、それは「睡眠時間足りてる思い込み症候群」です。

「でも大丈夫だもん~~」と思っているあなたも人間という同じ生き物なので例外はありません。
睡眠負債は確実に蓄積し、年齢を重ねるとともに確実にあなたの体をむしばんでいきます。

日本は睡眠時間が短い(西野先生レジュメより)

日本は睡眠時間が短い(西野先生レジュメより)

睡眠時間は人生の固定費だ

睡眠時間は、家賃と同じく払うしかないものであり、それを削っていたら人生の負債は徐々にしかし確実に増えていくとのことです固定費だから削れないのです。

睡眠時間は家計のスリム化と違って、格安スマホに乗り換えたり安い家賃に引っ越したり、みたいにできないのです。
なぜなら自分のDNAは書き換えられないからです。

「24時間働けますか?」なんてCMの時任三郎はかなり昔の話。

忙しいから寝れない、これは本末転倒です。
忙しいからこそ無理矢理でも寝る。それが大切です。

睡眠不足は飲酒運転と同じくらい危険

運転中居眠りしてしまうのが危険なのは明らかですが、そこまで至らない状態でもとても危険な状態であることが実験で示されています。以下のグラフを見てください。

睡眠不足がどれくらいの飲酒相当かの関係(Maggie'sLaw、NJ200より)

睡眠不足がどれくらいの飲酒相当かの関係(Maggie’sLaw、NJ200より)

18時間起きていると血中アルコール濃度0.05%のほろ酔いと同じ状態になります。26時間起きていたらもはや酩酊状態です。

18時間と言ったら、朝6時に起きたら24時のときにはそうなっているということになります。長距離運転や繁忙期に睡眠不足によって、起きてから18時間後でも運転しているような状態があったとすると、それはもはや飲酒運転をしているということになります。

「黄金の90分」を大切にしよう!!

レム睡眠 株式会社グリーンハウス HPから引用(余白一部カット)

レム睡眠 株式会社グリーンハウス HPから引用(余白一部カット)

図で見るとわかるように、寝始めてから90分の間で最も深い眠りが訪れます。
そして、成長ホルモンは入眠から90分のその深い眠りのときに最も多く分泌されます。

大人になったから成長ホルモンなんていらないよ、という声が聞こえそうですが、そんなことはありません。
皮膚や骨などが新しいものに生まれ変わるのも成長ホルモンが大切です。

黄金の90分では血管も休みます。昼も夜も血管が酷使されたらボロボロになり、血管脳出血や心筋梗塞という血管性の病気の危険が高まります。

特に40代からは血管のメンテナンスのためにも黄金の90分を大切にしていきましょう。

この「黄金の90分」をいかに深く眠るかというのがとても大切です。

では、どのように黄金の90分を有意義に寝るかを説明していきましょう。

夜10時前に寝ないとダメなの?

そんなことはありません。
黄金の90分は何時に寝ても訪れるので、就寝時間はそんなに気にしなくて大丈夫です。

必要な睡眠時間から逆算すれば当然に夜の10時とかになったというだけの話です。

それよりもはじめの黄金の90分を充実させることを第一にして、第二には絶対的な睡眠時間を確保することを大事にしましょう。

黄金の90分を充実させるための覚醒のスイッチオフの方法

黄金の90分を深く眠るためには、寝る前の準備がとても大切です!その方法を解説していきます。

深部体温を下げて、皮膚温との差を縮める

脳をリラックスモードに変える

寝つきの悪い人は、体温を下げて脳をリラックスさせる必要があります。

・寝る前の2時間前にお風呂を出る
→寝る直前のお風呂は入眠の大敵
→寝る直前にお風呂に入らないといけない場合はシャワーで済ます

・同じ時間に寝て同じ時間に起きるようにする

・うたたねをしない!
→晩御飯食べて少しだけ横になろう~というのは黄金の90分をみすみすムダに使うことになります。分割して寝るよりまとめて寝た方が、深い眠りはまとめて寝た方が多いという実験結果がありますから、寝るなら寝室でしっかり寝ましょう。

・眠くなるまでは寝室にいかない
→眠くないのに寝室に行くとスマホやテレビを見て、脳は覚醒してしまいます。そうすると「寝室に行ってもねなくてもいいんだな」と脳が思い込んでしまいます。寝室は寝る場所にしましょう。

・寝る前にはメールは見ない
たった1通だけ返事をしようと思っても次々と返事をしたくなり、関連する懸案を考え始めたりしたらもう覚醒のスイッチをオン。脳が活動モードになってしまいます。またたった1通の気分を害するメールで朝まで眠れなくなることもあります。
たしかに、ざわざわしてしまうメールはたまにあります。それがいつ来るかは分かりません寝る前に送らなければならないメールなんてほとんどないと思いますその間に気分を害するメールが来てしまうリスクを抱えるなんてもったいないと思いますよね。

良い入眠のためのお手軽な裏技!!

・目や首のまわりを温めると良い
東急ハンズやロフトなどでもこういうグッズは売っています。市販品でなく、寝る前に首に蒸しタオルを10分程度当てると良いと言っています。

お酒を飲むと黄金の90分の睡眠が浅くなるからやめる!!
お酒はリラックスはできても疲れは取れないということです。「冷たい麦茶」を西野先生はオススメしています。

快適な目覚めのために

良質な睡眠を取れたあとは、気持ちよく目覚める方法を解説します。

・睡眠時間は90分の倍数が良いというのは本当か?
→気にしなくていいようです。それよりも目覚めが良いかどうかの方が断然大事だということです。

・起きたらホットコーヒー
→冷たい水よりあたたかいものを。あったかい味噌汁もオススメだそうです。

・朝食をちゃんと摂る
→ 体温が上がる 代謝が上がる 体内時計が整う 体にリズムが生まれ、自律神経も整う 1日の始めにエネルギー補給ができる 朝食をとらないと、飢餓モードになり、筋肉をエネルギー源にしようとして筋肉量がダウンし、基礎代謝の低い体になってしまうそうです。朝食を摂るのはダイエット効果もあるそうです。

うまく眠れない人も過剰に気にする必要はありません

今までちゃんとした睡眠を取るための方法を解説してきましたが、現実的には完璧にやるのは難しいですよね。

安心してください!完璧にできなくてもいいんです!

もし「うまく寝れないんです・・・」というあなたは「思い込み不眠」かもしれません。

実験の結果、寝つきが悪い、不眠症ですという人ばかりを集めたのに、みんな結構、眠っていたことがわかったということです。
その人たちは、ベッドに入ると15分以内に眠ってました。

若い時とくらべて寝つきが悪くなっただけで「早く寝れなくなった、、、もうダメだ!」と焦ってしまっているようです。
寝付くまでに30分~1時間かかる人もいますが、それも問題ないらしいです。

「不眠症だ」と神経質になる必要はないということです。

「私8時間寝ないとダメなんです」という人がよくいますが、それはその人の勝手な思い込みです。
「私お米は絶対抜けないんです」と言ってダイエットができない人がいますが、そんなことありません。
私もそう言っていた人ですが、炭水化物抜きダイエットして1カ月で7キロ痩せられました。
同じく私なんて寝ないとダメと言っていた人間ですが、2時間睡眠1週間続けてもなんとか大丈夫でした。
人間、自分で「私こうじゃないとダメなんです」というのは、それを欠かしたくないだけであって、やってみたことないし、今までの人生でそれができない環境にならなかっただけです。
同じ人間という生き物でそんなに差があるわけ無いのです。

若いころの自分と比べず、同世代の知人と比べることが大切

それと同じで、若いころの自分と比べるのも良くないと言っています。
不眠症とか寝つきが悪いと言っている人の多くは、寝つきが良かった昔の自分と比べてしまっています。

夜中にトイレに何回も起きるというのも2~3回なら大丈夫トイレから戻ってきていつの間にか寝ているなら心配はいりません。
これは加齢とともに起きる現象なので気にしなくて良いということです。

そうではなく、同世代の他人と話してみましょう

そうするとそれは加齢による自然なものだということがわかります。

ムダに自分が不眠症と思う必要は無いのです。

完全に解明されてないようですが、科学的には、加齢とともに体の血液循環も悪くなり、体温調節の働きも衰え、入眠時に深部体温は下がりにくくなり、その結果、寝つきが悪くなるらしいです。
だから年を重ねるとともにグッスリ眠れないのは自然なことなのです。

でもこの5つの症状は要注意!

「8時間寝れてない!」など絶対的な時間を気にするより、以下の5つの症状があるかないかで判断した方が良いらしいです。

この5つの症状は要注意!!

  • ・朝の寝覚めが悪い
  • ・寝ても疲れが取れていない気がする
  • ・日中、ぼんやりして集中できない
  • ・イライラしがち
  • ・昼間や夕方に眠くなる

これらの症状がある人は十分な睡眠が取れていないので、さきほど解説した方法をいくつか取り入れて、良質な睡眠を取れるように工夫しましょう。

私は以前、別の睡眠の本を読んだときの方法を実践したら別にそんなに寝なくても大丈夫なことを実感しました。
その方法は以下の通りです。

寝る前に「今日は4時間で朝パッチリ目を覚ます!」って言い聞かせて寝ます。
ただそれだけです。
例えば夜中の2時に寝て、朝6時に起きるということです。
いつもなら「あ~たったの4時間だから睡眠不足だ・・・」と悪い気持ちで起きますが、寝るときに「今日は4時間!」って思いこむと朝もパッチリ起きてシャキっと新聞を読むことができました。
それも何週間続けてもなんの支障もありませんでした。
人間なんてそんなものです。

西野先生のお話では、ある実験で、学生がどれだけ寝ないか挑戦したそうです。
その先生もその実験(?)に立ち会って、眠りそうになったらゆすり起こして、バスケしたりして。
いくら寝てなくてもバスケちゃんとできます。
でも極限状態だと簡単な足し算ができなかったり、ろれつが回らなくなって。
そんな状態でしたが結局11日間も寝ずに過ごせたそうです。
そのあと15時間くらい寝たら普通に生活してました。

擁するに、「眠れない」からと言って気にすることはないそうです。
気にすることでムダに不安になるのはやめましょう、と言ってます。

まとめ

トラックドライバーは何トン~何十トンの鉄の塊をものすごいスピードで走らせます。

飲酒をしないのは当然ですが、解説にもあったように睡眠不足は飲酒状態と同じことです。

つまり、ドライバーがしっかりした睡眠を取るための習慣をとらないことは、翌日にアルコールが残るお酒の飲み方をしていることと全く同じなのです。

黄金の90分を大切にしながら、やはり最低でも7時間以上の睡眠は取るようにしましょう。

あなたのその地道な積み重ねが死亡事故を減らします。