運賃交渉の難しさについての考察

公開日:2022年4月17日

顧問税理士が「顧問料上げてください」と言ってきたときにたとえば
物価上昇、賃料上昇、最低賃金上昇を理由に挙げてきたとしたらどうしますか?
ホンネを言ったら「所長の報酬はいくらなの?」って聞きたくないですか?
それが500万だとしたらそれ以上低くするのは酷だと思いますが、もし1000万だったらどうしますか?
「所長報酬900万にすればいいんじゃないの?」
と言いたくなりませんか?
最低賃金上昇についても「業務効率化で10%労働時間短くすればいいんじゃないの?」って言いたくなりませんか?
究極のところ「貯金いくらあるの?」「決算書見せなさいよ」と言いたくなると思います。

トラック業界の運賃上昇を全ト協も荷主向け新聞に広告載せるぞ!と息巻いてますがどうなのでしょう。
荷主は上記のような質問を運送業者に投げかけたくなるのではないでしょうか。
これでもし運送会社の社長がレクサス乗ってたら値上げなんて言ったら「あんたなに言ってるの?」で終わりますよね。
でもそうすると「適正な役員報酬っていくらなの?」理論が出てきます。
また、「適正なドライバー給与っていくらなの?」理論が出てきます。
意地悪な荷主であれば「最低賃金で働かせればいいんじゃないの?」と言ってこないとも限りません。
燃料が上がって経営が辛いのは当然ですが、役員報酬がいくらなのか、もっと言うと親からもらった資産含めて資産がいくらあるのか、そこまで追求しないと究極的には運賃交渉ってできないんだと思います。
だって荷主側からすればそれは当然の考え方ですよね。
運賃上げて相手の会社がムダに儲かったら「え、あの交渉はなんだったの?」って思いますよね。
でも当然ながら役員報酬の基準なんて決められません。
ドライバー給与の基準は全国の平均年収を基準にして決められるでしょうけど。

そうすると業界平均運賃しか頼れるものが存在しなくなります。
本当は他業界の統計が頼れればいいですがそれもまた荷主には関係ないことでしょう。
業界平均の値もいろいろありますが、利益率を基準にしようとも、そういう統計値が(有効な数値として)存在しません。
となると、結局は「2t1台いくら」というような業界相場に帰結します。
そうすると交渉するときも「原価計算してるの?」と聞かれても「・・・」となってしまいます。

やはり価格決定権は立場の強い方にしか存在しないという悩ましい現実があります。
逆に言えば荷主が「あなたの会社じゃないとヤダ」というソフト&差別化を作ることで価格決定権を握れることが可能になります。
あとは結局細かい数字の話でなく、担当者との気分の交渉になるのでしょう。
また、交渉の中で必ず問われる「原価計算」については済ませておく必要があるでしょう。
原価計算をするのは交渉に着く前の最低限の礼儀と言えるでしょう。