【インタビュー】一般貨物自動車運送事業の許可を取得する会社が押さえておくべきポイントは?
まずはお客様が今やっているお仕事とその会社での立場をヒアリングします。それで大体、どのようなストーリーで新規許可まで持って行けるか想像が立ちます。
【確認事項1】運行管理者、整備管理者の資格を持っている方はいますか?
運行管理者ってなんですか?という方も少なからずいます。
運行管理者とは毎年3月と8月に試験が行われる国家資格です。
運行管理者試験を受けるには、基本的にはNASVA等の基礎講習という3日連続の講習を受けなければなりません。NASVAだけでなく全国に色々な認定機関があります。3日連続なので仕事を休まないといけないので大変ですが、なんとか都合をつけて行きましょう。近年の合格率は大体30~40%を推移しているので、しっかり勉強すれば誰でも合格できる試験です。ちなみに試験全般に言えますが、合格率が15%以下になると途端に合格するのが難しくなります。だから運行管理者というのは中くらいの難易度の試験と言えます。
整備管理者については整備管理者選任前研修を受けることは多くの人が知っていますが、実務経験についてご存知でない人が多いです。点検、整備、整備の管理について2年以上の実務経験が必要です。肝心なのは実務経験を重ねた場所(会社)です。どんな会社でもいいわけではありません。認証整備工場か運送業許可業者(一般貨物許可業者)でなければいけません。たとえば白ナンバーダンプで仕事している会社で普通に点検などしていたとしてもルール上は実務経験に認められないことになっていますが、運輸支局の整備保安担当者と相談してみてください。場合によっては同等の経験として認めてくれるかもしれません。整備管理者については半日の整備管理者選任前研修さえ受ければいいから運行管理者より簡単だと思っている方が多いですが、経験だけはお金を払っても買えません。
運行管理者と整備管理者は人なので、いないと探すしかありません。
運行管理者は年2回の試験に受かればそれでいいので頑張ればなんとかなりますが、整備管理者については先ほど書いたように実務経験は頑張ってもなんともならないので整備管理者の方が実はハードルが高いです。
【確認事項2】トラック5台を確保するメドは立っていますか?
ここで「メド」と言っているのは、運送業許可の申請時にはまだ自社名義のトラックがなくても大丈夫だからです。運輸局と相談しますが、見積書や売買契約書で申請が可能な場合が多いです。運送業許可が下りてからそのトラックを正式に納車するという流れで問題ありません。トラックは自己所有でも割賦でもリースでもなんでも構いません。
【確認事項3】運行管理者以外でドライバー5名を準備して社会保険に加入できますか?
それ自体はいいのですが、ドライバーは5名必要です。ここで運行管理者以外と書いているのは、運行管理者は対面点呼を実施しなければならないので、自分自身を対面点呼できません。だから原則は運行管理者含めて6名以上が必要で、全員が社会保険への加入が求められています。
ドライバーについても、トラックと同じで、運送業許可の申請時には揃える必要はありません。運送業許可が下りたあとの手続きで社会保険の書類を出すので、許可が下りそうになったら手続きするという段取りで構いません。
もし、今、この運送業許可を起業する仲間が全員個人事業主でやっているとしたら、従業員になり、社会保険を源泉徴収されるとしたら手取りが大きく減ってしまいますし、消費税の課税経費も減ってしまうので、法人としての負担は予想より大きくなるのでしっかり計算が必要です。
【確認事項4】事務所と車庫はありますか?
車庫については十分余裕のある広さがあれば基本的には許可が下ります。しかし、都会で月極めの1区画に置きたいという場合は、前後左右50cmずつの余裕というルールをクリアするのが難しいので要注意です。
小学校や幼稚園の付近などは運送業許可が下りてもそのあとクレームが入ることもあるので、注意しなければなりません。
【確認事項5】残高証明2000万円を半年間キープできますか?
トラックの調達方法、事務所車庫の家賃によってその金額は変わってきますが、大体2000万円ほどが必要になります。この2000万円はすでに事業を営んでいる会社であれば調達するのもそこまで難しくないかもしれませんが、これから運送会社を立ち上げるという人にはとても大きなハードルです。金融機関も普通は許可が下りなければ融資を下ろしてくれません。だからこの5つの確認事項の中でも整備管理者と同じくらいに難易度が高い要件になっています。
整備管理者は従業員に整備士保有者などがいれば逆にものすごく簡単ですが、2000万円ものお金を用意するのは大変です。逆にお金があっても整備管理者の資格を持っている人を確保するのもできることではないので、どちらも現時点で満たしていない場合はとても難易度の高い要件になります。許可申請までたどり着かない人は大体、管理者か残高証明資金のどちらかでつまづきます。
大体、こんな感じで5つの確認をします。
- 運行管理者、整備管理者の資格を持っている方はいますか?
- トラック5台を確保するメドは立っていますか?
- 運行管理者以外でドライバー5名を準備して社会保険に加入できますか?
- 事務所と車庫はありますか?
- 残高証明2000万円を半年間キープできますか?
ただし、これらは運送業許可を取るための最低限の要件です。
許可後は運送業許可業者としてのルールを守らなくてはなりません。
毎日、日常点検をしてから対面点呼をするためには、営業所と車庫があまり離れていてはいけません。今まで自由にやってきてしまい、直行直帰となりそうなお客様には運送業許可業者のルールをしっかり説明します。そうしないとトラック協会の巡回指導で指摘され、その後に改善できずどうしようもなくなってしまいます。長距離運送をしそうなお客様も、拘束時間ルールを守れなくなってしまうようであれば、しっかりレクチャーします。長時間労働を前提として起業すると、本当ににっちもさっちもいかなくなってしまいます。先ほども話しましたが、社会保険への加入も必要です。もう社会保険に入らなくてもなんとかなる世の中ではなくなっています。社会保険未加入の行政処分がどんどん厳しくなっているので、社会保険未加入事業者は業界から容赦なく退場させられるでしょう。
これら以外にも、運送業許可業者として守らなければいけないたくさんのルールがあります。許可取って終わりという行政書士がほとんどの中、トラサポ行政書士は許可後のルールにも精通しており、トラック協会巡回指導サポートや運輸支局監査対応の経験も豊富なので安心してお任せください。
運送業許可は、数ある許可事業の中でも、業法による許可後のルール順守の厳しさは有数です。安心して会社を成長させるためにはめんどくさいですが、はじめからルールを守っていきましょう。
要件さえ揃えて、営業所管轄の運輸支局に新規許可申請して、その後に役員法令試験を受け、ちゃんと残高証明をキープしておき、計画車両を変更とかしなければ無事に許可が下り、晴れて一般貨物自動車運送事業許可業者として営業開始できます。