流通業務総合効率化法及び貨物自動車運送事業法の改正に対する附帯決議17項目 | 物流関連2法改正

公開日:2024年6月1日 / 更新日:2024年6月12日

平成6年4月11日に衆議院可決、同年4月26日に参議院で可決した「通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」に対する附帯決議を前傾します。(俗に言う物効法・貨物事業法の物流関連2法改正)

要約(通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案に対する附帯決議)

物流関連2法改正の際、衆議院、参議院ともに17個の附帯決議がなされました。

以下に、キーワードを抜粋します。

標準運賃の毎年の見直し
トラックドライバーの給与が全産業平均並みの引き上げができるよう、必要な措置を講じる
トラックGメンの機能と活用の強化
トラック協会適正化実施機関の業務拡大や体制の抜本強化
一定規模以上の荷主等への義務
専業水屋への規制措置導入の検討
運送契約の書面化
実運送体勢管理簿による多重下請け構造の把握
下請け次数を二次までとすることも含め必要な措置を講じる
着荷主、商社も含めた物流関係者全体の調査、指導、助言等
物流統括管理者の定め
一環パレチゼーションの推進、フォークリフト免許取得の支援
高速道路における自動運転トラックの導入
中継輸送や自動運転に活用可能な物流拠点の整備
再配達率緊急削減緊急対策事業
貨物軽自動車安全管理者講習
鉄道貨物や内航海運等へのモーダルシフト
国土交通省のトラックGメン、厚生労働省、中小企業庁及び公正取引委員会等、関係行政機関に加え、労働者団体を含む関係団体との更なる連携強化
関係する荷主等に対し、違反行為を是正し再発を防止するため、貨物自動車運送事業法を始め、独占禁止法、下請代金法などの関係法令に基づく勧告・公表等を積極的に行う
荷主等における取組状況についてフォローアップ調査を定期的に実施
高速道路の更なる活用に資する新たな料金制度の検討・導入
ダブル連結トラックの一層の活用
高速道路のサービスエリア・パーキングエリアにおける優先駐車マスの整備
「送料無料」の表示見直し
積載率が向上することにより、規模の大きな事業者等に貨物が集中するなどし、中小零細事業者等が顧客を失い経営環境が悪化しないよう配慮

次から付帯決議全文を掲載します。(全ト協会報誌「広報とらっく」令和6年5月1日号から転載)
※コピペ防止のため、一部敢えて文字を変えています。

衆議院での附帯決議全文

政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺漏なきを期すべきである。

  • トラック運送事業について、現状において過労死や精神疾患などの健康被害が最も深刻であり、かつ、そのために深刻な人手不足に陥っている物流産業の現状に鑑み、できるだけ早期に時間外労働の上限を一般労働者と同様にできるよう、関係省庁、労働者団体を含む関係者団体及び荷主等の連携及び協力を強化し、トラックドライバーの賃金引き上げの原子となる適正な運賃収受の実現や物流効率化等の労働環境改善に向けた実効性のある取り組みを一層強力に推進すること。その上で、トラックドライバーの人材の確保及び育成のための支援策を講じること。
  • トラックドライバーの賃金水準の向上等の観点から実運送事業者における適正な運賃収受を図るため、貨物自動車運送事業法に基づく標準的な運賃を毎年見直し、当該運賃の効果について検討し、その在り方も含め適時適切な見直しを行うとともに、トラック運送事業者が当該運賃を活用して行う荷主との適正な運賃交渉と適正な価格転嫁を実現すること。また、実運送事業者における標準的な運賃の収受及び荷待ち時間の短縮等の状況について調査し、公表することその結果を踏雨、トラックドライバー賃金の全産業平均並みの引き上げができるよう、必要な措置を講じること。
  • 前項の実効性を担保するため、国土交通省のトラックGメン、厚生労働省、中小企業庁及び公正取引委員会等、関係行政機関に加え、労働者団体を含む関係団体との更なる連携強化を図るとともに、悪質な荷主等への監視を強化すること。また、市場運賃を度外視した安価な運賃で事業者を募ることや、安価な運賃で事業を請け負うことに対する監視を強め、その状況を踏まえて適切な規制措置を導入すること。さらに、当該関係行政機関等において情報収集と共有を図り、貨物自動車運送事業法に基づく勧告及び公表等を積極的に行うこと。
  • 国土交通省におけるトラックGメンの機能を強化し、荷主や元請け事業者等への是正指導を徹底すること。これに向け、全国及び地方貨物自動車運送適正化事業実施機関を活用し、貨物自動車運送事業者からの情報収集や、荷主や元請け事業者等の違反原因行為に係る調査等を補完する体制について、調査員証の発行などにより、強化、明確化を図ること。また、トラック運送事業の近代化や、ブツリュウノサプライチェーン全体の取引の適正化に向け、トラックGメンを物流産業全体の健全化に向けた組織とすることや、全国及び地方貨物自動車運送適正化事業実施機関の業務拡大や体制の抜本強化について、検討を進めること。
  • 一定規模以上の荷主等に義務付けられる中長期的な計画の作成や、元請け事業者に義務付けられる実運送体勢管理簿の作成及び下請け関係に入るトラック事業者等に対して義務付けられる当該管理簿作成に必要となる情報の通知に当たり、ガイドラインの作成等により円滑に導入されるとともに、事業者にとって過度の負担とならないよう、また、トラックGメン等が効率的かつ確実に取り組み状況を把握できるよう、デジタル技術の活用を推進すること。
  • トラック運送事業における多重下請け構造の是正を図り、実運送事業者における適正な運賃収受を実現するため、実運送を行わない、いわゆる「専業水屋」についても実態を把握し、規制措置の導入も含め必要な対策を講じること。
  • 運送契約の書面及び実運送体勢管理簿については、可視化のためのDXの推進やデータ等の規格統一やデータ等規格統一を目指すこと。また、当該管理簿により可視化された多重下請け構造の実態を分析し、その是正に向けて諸外国の規制事例等を参考にしつつ、必要な措置の検討を継続し、その結果、さらなる措置が必要と判断された場合は、下請け次数を二次までとすることも含め必要な措置を講じること。
  • 物流のサプライチェーン全体の最適化も念頭に、物流業界における商慣行の実現を実現するため、トラックドライバーの荷待ち時間等の短縮やトラックの積載率の向上を図るための取り組みが的確に実施されるよう、関係所管大臣が判断基準として示す取り組むべき事項についてわかりやすく示し、適宜改訂を行うとともに、着荷主を含む荷主や事業者の全てに取り組みを周知し、必要な支援をすること。また、荷主等における取組状況についてフォローアップ調査を定期的に実施し、取り組みが不十分な荷主等に対しては、関係省庁と連携しつつ、積極的に指導、助言等を行うこと。
  • 物流効率化等の努力義務を課す対象に、運送契約に直接かかわりを持たないが商取引に大きな影響力を持つ商社等についても対象に含めることを検討すること。
  • 車両を保有せず利用運送を専門に行う第一種貨物利用運送事業者についても、運転者の運送及び荷役等の効率化に向けた責務を担わせるよう検討すること。
  • 荷主等において、物流統括管理者として物流改善の取り組みを推進できる人材の確保、育成を図ることができるよう、必要な支援を講じること。また、物流統括管理者が、実効的に物流改善に取り組める環境整備に努めること。
  • 一環パレチゼーションの推進により荷役等の負担を軽減するため、フォークリフト免許取得や中小事業者に対するパレット導入促進等のための支援を行うこと。また、荷主においてパレットの標準化や改修が行われるよう、適性な指導を行うこと。
  • トラックドライバーの拘束時間を短縮し、労働環境の改善等の働き方改革を進める観点から、安全面に万全の配慮をした上で高速道路における自動運転トラックの導入、中継輸送や自動運転に活用可能な物流拠点の整備を進めること。また、中小トラック事業者においても中継輸送の普及、実用化が進められるよう、必要な助言、財政的支援等を行うとともに、多くの企業間の連携が図られるよう支援すること。
  • 再配達率緊急削減緊急対策事業の実施に当たっては、再配達率削減に資する先進的なDX,GXの取り組みを支援するとともに、物流に係る広報に努め、広く消費者に意識改革、行動変容を促すこと。
  • 物流の効率化に伴い過積載とならないよう対策を講じること。一方で、積載率の向上により、顧客を失う事業者が発生することが想定されることから、当該事業者に対して配慮すること。
  • 貨物軽自動車運送事業における運行の安全を担保するため、貨物軽自動車安全管理者が受講する貨物軽自動車安全管理者講習において、整備の知識を含む運行管理者並みの要件を課すこと。また、貨物軽自動車運送事業者の多くを占める個人事業主においても、安全管理者の選任、講習の受講、国土交通大臣への事故報告が確実に行われるよう周知徹底を図るとともに、運転者への適性診断の受診、業務記録及び事故記録の作成、保存、貨物運送保険の加入等を図ること。
  • 鉄道貨物や内航海運等へのモーダルシフトを進めるため、国土政策の観点から必要なインフラの整備等を進めるとともに、国、荷主、運送事業者等関係者によって、新たな需要を生むための方策を検討すること。

参議院での附帯決議全文

政府は、本法の施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じ、その運用に万全を期すべきである。

  • トラック運送事業については、過労死や精神疾患などの健康被害が深刻であり、人手不足に陥っている現況を踏まえ、できるだけ早期に時間外労働の上限を一般労働者と同様にできるよう、関係省庁、労働者団体を含む関係団体及び荷主等の連携及び協力を強化し、トラックドライバーの賃金引き上げの原資となる適正な運賃収受の実現や物流効率化等の労働環境改善に向けた実効性のある取り組みを一層強力に推進すること。その上で、トラックドライバーの人材の確保及び育成のため、運転免許取得費用の軽減等をはじめとした各般の支援策を講ずること。特に、女性ドライバーの確保に向けて、荷役作業等の省力化等の取り組みはもとより、女性が働きやすい労働環境の整備を一層推進すること。また、2024年問題で不足する輸送力を補うため、原則として労働基準法が適用されない個人の運送事業者へ貨物が集中し、当該事業者の労働環境が悪化しないよう配慮するとともに、適宜適切な対策を講ずること。
  • トラックドライバーの賃金水準の向上等の観点から実運送事業者における適正な運賃収受を図るため、貨物自動車運送事業法に基づく標準的な運賃を毎年見直すとともに、その効果について検討し、在り方も含め適時適切な見直しを行うことにより、トラック運送事業者が当該運賃を活用して行う荷主との適正な運賃交渉と適切な価格転嫁を実現すること。また、実ん総事業者における標準的な運賃の収受及び荷待ち時間の短縮等の状況について調査し、公表すること。さらに、その結果を踏まえ、トラックドライバーノ賃金水準を全産業平均並みの引き上げられるよう、必要な措置を講ずること。
  • 2の実効性を担保するため、国土交通省のトラックGメン、厚生労働省、中小企業庁及び公正取引委員会等、関係行政機関に加え、労働者団体を含む関係団体との更なる連携強化を図るとともに、悪質な荷主等への監視を強化すること。また、市場運賃を度外視した安価な運賃で事業者を募ることや、安価な運賃で事業を請け負うことに対する監視を強め、その状況を踏まえ、「荷主至上主義」の実態から脱却するため、適切な規制措置を導入すること。さらに、当該関係行政機関等において情報収集と共有を図り、関係する荷主等に対し、違反行為を是正し再発を防止するため、貨物自動車運送事業法を始め、独占禁止法、下請代金法などの関係法令に基づく勧告・公表等を積極的に行うこと。
  • 国土交通省におけるトラックGメンの機能を強化し、荷主や元請け事業者等への是正指導を徹底すること。これに向け、全国及び地方貨物自動車運送適正化事業実施機関を活用し、貨物自動車運送事業者からの情報収集や、荷主・元請け事業者等の違反原因項に係る調査等を補完する体制について、調査員証の発行などにより、強化、明確化を図ること。また、トラック運送事業の近代化や、物流のサプライチェーン全体の取引の適正化に向け、トラックGメンを物流産業全体の健全化に向けた組織とすることや、全国及び地方貨物自動車運送適正化事業実施機関の業務の拡大や体制の抜本強化について検討を進めるとともに、官民一体での取り組みを一層推進すること。
  • 一定規模以上の荷主等に義務付けられる中長期的な計画の作成や、元請け事業者に義務付けられる実運送体勢管理簿の作成及び下請け関係に入るトラック事業者等に対して義務付けられる当該管理簿作成に必要となる情報の通知に当たっては、事業者等にとって過度の負担とならないよう、ガイドラインの作成やデジタル技術の活用等を行い、制度が円滑に導入されるよう努めること。また、トラックGメン等が効率的かつ確実に事業者等の取り組み状況を把握できるよう、デジタル技術の活用を推進すること。
  • トラック運送業界における多重下請け構造の是非を図り、実運送事業者における適正な運賃収受を実現するため、実運送を行わず利用運送を専門に行う第一種貨物利用運送事業者(いわゆる「専業水屋」)についても実態を把握し、運転者の運送及び荷役等の効率化に向けた責務を担わせるよう検討するなど、規制措置の導入も含め必要な対策を講ずること。
  • 運送契約の書面及び実運送体勢管理簿については、可視化のためのDXの推進やデータ等の規格統一を目指すこと。また、当該管理簿により可視化された多重下請け構造の実態を分析し、その是正に向けて諸外国の規制事例等を参考にしつつ、必要な措置の検討を継続すること。また、検討の結果、さらなる措置が必要と判断された場合には、下請け次数を二次までとする規制を含め必要な措置を検討すること。加えて、新たに標準的な運賃の項目として設定された下請手数料(利用運送手数料)の確実な収受に向け、制度を周知し、浸透を図るとともに、トラックGメン等による監視を徹底し、併せて運賃収受等に係る実態調査を行うこと。
  • 物流のサプライチェーン全体の最適化も念頭に、物流業界における商慣行の見直しを実現するため、トラックドライバーの荷役・荷待ち時間の短縮やトラックの積載率の向上等を図るための取り組みが的確に実施されるよう、関係所管大臣が判断基準として示す取り組むべき事項についてわかりやすく示し、適宜改訂を行うとともに、着荷主を含む荷主や倉庫業者、流通・仲介業者など関係する全ての事業者に当該取り組みを周知し、必要な支援を行うこと。また、荷主等における取組状況についてフォローアップ調査を定期的に実施し、取り組みが不十分な荷主等に対しては、関係省庁と連携しつつ、積極的に指導、助言等を行うこと。
  • 物流効率化等の努力義務を課す対象に、運送契約には直接関わりを持たないものの商取引には大きな営業力を持つ商社等についても対象に含めることを検討すること。
  • 荷主等において、物流統括管理者として物流改善の取り組みを推進できる人材の確保、育成を図ることができるよう、必要な支援を講ずること。また、物流統括管理者が、実効的に物流改善に取り組める環境整備に努めること。
  • 一貫パレチゼーションの推進により荷役等の負担を軽減するため、フォークリフトの免許取得や中小事業者に対するパレット導入促進等のための支援を行うこと。また、荷主においてパレットの標準化や回収が行われるよう、適切に指導を行うこと。
  • トラックドライバーの拘束時間を短縮し、労働環境の改善等の働き方改革を進める観点から、高速道路の更なる活用に資する新たな料金制度の検討・導入に加え、安全面に万全の配慮を図った上での高速道路における自動運転トラックの導入、中継輸送や自動運転に活用可能な物流拠点の整備を進めること。また、中小トラック事業者においても中継輸送の普及、実用化が進められるよう、必要な助言、財政的支援等を行うとともに、多くの企業間の連携が図られるよう支援すること。さらに、ダブル連結トラックの一層の活用に向け、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアにおける優先駐車マスの整備や、物流事業者のニーズを踏まえた通行経路の拡充等に取り組むこと。
  • 再配達率削減緊急対策事業の実施に当たっては、再配達率削減に資する先進的なDX、GXの取り組みを支援するとともに、物流に係る広報に努め、広く消費者に意識改革、行動変容を促すこと。また、「送料無料」の表示見直しを含め、消費者の物流に対するコスト意識の浸透を図る取り組みを進めるとともに、運送業に対する社会的な理解の醸成に努めること。
  • 積載率の向上による物流効率化の推進に当たっては、過積載防止対策について万全を期すこと。また、積載率が向上することにより、規模の大きな事業者等に貨物が集中するなどし、中小零細事業者等が顧客を失い経営環境が悪化しないよう配慮するとともに、適宜必要な対策を講ずること。
  • 貨物軽自動車運送事業における運航の安全を担保するため、貨物軽自動車安全管理者が受講する貨物軽自動車安全管理者講習において、整備の知識を含む運行管理者並みの要件を課すこと。また、貨物軽自動車運送事業者の多くを占める個人事業主においても、安全管理者の選任、講習の受講、国土交通大臣への事故報告が確実に行われるよう周知徹底を図るとともに、運転車の適性診断の受診、業務記録及び事故記録の作成・保存・貨物運送保険の加入等を図ること。
  • 貨物鉄道輸送や内航海運等へのモーダルシフトを進めるため、国土政策の観点も含め、鉄道施設や港湾施設等の必要なインフラの整備等を推進するとともに、荷主、運送事業者等の関係者と共に、新たな需要を生むための方策を検討すること。また、次世代の物流高度化、生産性向上に資する「自動物流道路」の構想について、海外での事例等も踏まえ、今後の方針・計画を早期に示すこと。
  • 本法に基づく措置及び本決議を踏まえた措置の他、平成30年及び令和5年の貨物時動作運送事業法の改正により創設・延長された措置や、令和5年6月に「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」が決定した「物流革新に向けた施策パッケージ」当に基づく諸施策の実施状況等について、国土交通省、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、公正取引委員会等が連携し、物流業界や労働者団体を含む関係団体及び荷主等の協力の下、定期的に検証を行い、その結果、必要となる措置を速やかに実施すること。