埼玉県佐藤秀太郎先生インタビュー
埼玉県深谷に事務所を構える佐藤秀太郎先生は2018年4月からトラサポに参加してくれています。
佐藤先生は一般貨物と自動車登録を軸に、倉庫業や物効法など周辺業務にも長けています。その他にも医療法人業務など多様な業務をこなすエキスパートです。
今回はそんな佐藤先生にインタビューをしました。
埼玉県の運送業界の環境についてどのような特色がありますか?
埼玉県というのは高速道路が網羅されていていろいろな産業地に出やすい場所であると言えます。それもあって一般貨物事業者の営業所の数も4000を越えるとても多い都道府県です。一方というかそれもあってか、車庫用地がなかなか見つからない地域でもあります。やはり大きなトラックを複数台収容するまとまった土地を確保するのはとても難しいです。
まとまった場所自体があっても農地が多いですし、形や造成がきれいな土地を見つけるとなるとやはり難しくなります。
トレーラーハウスを一般貨物の営業所として認可を受けるのは県内の多くの自治体がOKで、一般貨物事業者の間でもトレーラーハウスの認知が増えてきている実感があります。
県内の地域性で言えば、東京に近い南方は都心に建材を運ぶ2トン、4トン平ボディの比較的小さいトラックの事業者が多いと思います。都心はやはり道が狭いのでどうしても大きなトラックで走るのは難しいからでしょう。東京をすぐ南に隣接している県として、やはり産業の関係では東京への輸送トン数が一番多いです。海が無いこともあって、海上コンテナトレーラー事業者はあまりいない気がします。
ご自身の一般貨物および周辺業務についての武器はなんですか?
自分の事務所として、他の事務所と比べて一番特化しているのは、トレーラーハウスによる営業所認可の案件が多いことです。ここ数年で、年間複数件には携わります。トレーラーハウスデベロップメントの営業の人と複数つながっており、その人達が埼玉県内でトレーラーハウスを一般貨物事業者に販売すると運輸支局手続きは私のところに依頼が来るので、たくさんの案件に携わることになるわけです。
一般貨物の新規許可申請時などに行われる役員法令試験対策には自信があります。元々、塾の講師をしていた経験があるため勉強を教えることは得意だと思いますし、受講された方がどんどんできるようになるのもとても楽しいです。また、他の許認可というのは大体が行政書士だけが頑張って書類を作ることが多いですが、役員法令試験はお客様が頑張るしかないので二人三脚で許可を取りに行くという絆が生まれるのも嬉しく思います。
私の事務所は自動車登録、つまり車検証書換業務も専門としており毎年1万件以上取り扱っています。従って緑ナンバーにつきものの車検証の書換えは他事務所より圧倒的なスピードと正確性だけでなく様々な融通を利かせることができます。最近も63台という大量案件がありました。そんなに大量の件数に対して瞬時に対応できる事務所自体がそもそも少ないですし、また弊所であれば大量案件への対応にも慣れているので、車検証の車検有効期限を確認して「このトラックは車検が近いので、第二弾でやりましょうか」という提案もしたりします。ただやるだけでなく、お客様側の手間もある程度イメージして先導できるように努めています。車検証書換については、普段から全国の行政書士と連携しているので埼玉県以外の地域の車検証手続きについても提携先と連携してできるのは強みと考えています。一般貨物をやる行政書士で自動車登録はやらないという人が多く、逆に自動車登録をやる人でも一般貨物などの緑ナンバー車両の手続きは詳しくない人が多いため、緑ナンバー車両の車検証書換に全国的に対応できるうちのような事務所はなかなか珍しいはずです。
出張封印についてもたくさんの経験があります。出張封印というのは、運輸支局等にトラックを持ち込まなくても、運送会社のお客様の車庫などで行政書士がナンバー変更から封印までできる資格のことです。当事務所では乗用車だけでなく大型トラックまでの出張封印の経験も豊富です。運輸支局は当然平日昼間しかやっていませんから、通常ならトラックのナンバープレートを変更するには仕事を丸一日休んで行かなければなりません。しかし、出張封印の資格を使えば、私がお客様の車庫に平日夜や土日に行くことで、お客様は配送の仕事を休まずにナンバー変更することができます。特に忙しい事業者様には大変喜んでいただいております。
同一地域でご自身が一般貨物業務で他の人より多く関わっている案件はなんですか?
実は埼玉県は運送業ができる行政書士が多いんです。その中でトレーラーハウスを取り扱っている案件については当事務所が圧倒的に多いと思います。今まで12件ほど携わってきました。この前は運輸支局の担当者がトレーラーハウス案件に不慣れなせいか自治体への照会がうまくいかなかったのですが、私は全体の流れがわかっているため電話で運輸支局と自治体を橋渡しして調整して解決できました。運輸支局からあのように「今回のトレーラーハウスは認可できません」と言われたらトレーラーハウス案件に不慣れな行政書士であれば下手したら取り下げてしまうかもしれません。こういうところで行政書士として行政機関との調整能力が試されるのだと思います。
また、倉庫業に携わる行政書士は少ない印象ですが、当事務所は倉庫業や物効法の経験もありますし、自動車登録については大きな武器になっています。
物効法の認定を受けると調整区域での建築や税制優遇を受けられるなど大きなメリットがありますが、それだけにハードルがとても高いです。補助金申請ではたくさんの情報を文章にまとめないといけない大変さもありますし、元々の案がそれほど効率化になっていない場合は、物流の総合的な流れの中で実際に効率化になるように、細かいところまで一緒に考えなければなりません。倉庫業は倉庫内だけの話ですが、物効法の認定は「総合効率化計画」ですから、申請事業者だけで運搬から倉庫内作業まですべてを網羅しなければなりません。荷待ち時間の削減、倉庫内作業員の労働時間の削減、トラック使用削減・走行距離の削減によるCO2の削減まで計算して効率化することを説明しなければなりません。この前は複数倉庫の統合をして効率化をするというストーリーだったのですが、実際にはCO2の削減が想定通りにいかずにとても大変でした。
トラサポに入ってから今までどのようにして一般貨物関係の力をつけてきましたか?
間違いなくトラサポのチャットワーク(ネット掲示板)に流れてくる膨大な情報は私にとってとても大きなものとなっています。他メンバーの投稿から自分が関係ないやりとりを追体験できるわけです。それを自分なりに咀嚼して精読し、根拠を調べます。そうすると似たような相談が来たときにあたかも自分が経験したことがあるかのようにその知識を引き出せます。チャットワークは検索もできるので、知識が微妙なものについて「前に議論されたことあるよな」とキーワード検索すると過去のやりとりが出てきます。行政書士一人が経験する量はたかが知れていますが、そのようにして、トラサポメンバー30人以上の経験や視点をもらって一人ではとても得ることができない情報に触れ、それをもとに更に自分で調べるきっかけにすることができています。
運送業者の許認可業務に携わるときに気を付けている点、難しい点はなんですか?
運送業の手続きにおいてはたくさんの注意点がありますが、私は居抜き物件で申請するときは特に注意をします。以前大型トラックを使っている運送会社が車庫の認可を取っていたから今度も安心と思いきや、そうとは限りません。その車庫の前面道路の幅員が狭い場合、まずは小さいトラックで車庫認可を受けて、そのあとに大型トラックを増車したかもしれないからです。車両制限令というもので幅員ごとに走行可能な車両が決められているため、知らず知らず違法状態になってしまっているところもあるかもしれません。そういう場合は、新しく認可を取る運送会社が大型トラックしか持っていない場合は認可が下りない可能性があるのです。
また、営業所の場合は市街化調整区域の居抜き物件は大変でした。市街化調整区域では原則、営業所は認められませんが、都市計画法による区域の線引き前から存在する建物の場合は認められる場合もあります。そのときは、自治体に確認しながら兼用住宅の要件を満たすようなリフォームへ計画変更したり、過去の開発許可や建築確認の履歴や当時の図面を揃えたりしてなんとか認められたケースがありました。その際も連絡調整がスムーズに行くように、都市計画法の宣誓書でも「○○課の○○さんに確認してください」というような文言をつけて運輸支局から自治体への照会を若干コントロールしました。
居抜き物件は、過去に認可を受けているのでお客様も当然認可されると信じているので、行政書士へのプレッシャーもすごいんです。だから手続きの難易度だけでなく、そういうところを是々非々としてコントロールするのも行政書士業務として難しくなるポイントだと思います。運送業手続きに不慣れな人だとどうしてもお客様からのプレッシャーに負けて、お客様が欲しい言葉をつい言ってしまいがちですが、それは結局お客様を困らせてしまうことになるので自分が発する言葉にも注意しています。
また、申請書の内容のリアリティについても気を付けています。完成した書類は穴埋めをしているだけに見えますが、たとえば新規許可申請の資金計画では運転者の勤務時間と走行距離を合わせるようにしていますし、燃料費は車庫の近くのガソリンスタンドの料金を調べたり、修繕費の計算時には申請車両のタイヤの市場価格を調べたりして、計画と言えども可能な限りリアルな数字にして審査がスムーズに進むようにしています。
運送業者のコンプラサポートに携わるときに気を付けている点はなんですか?
お客様に対して曖昧なことを言わないように気を付けています。ほとんどの人はどうしても自分に都合の良い言葉のみを覚えてしまうから含みをもたせないようにしています。私がその場で「大丈夫だと思います」と言って気を楽にさせたとしても、実際の巡回指導や監査でNGをもらってしまったらなんの意味もありません。誤解の無いように、お客様が正確に理解できるように説明するように心がけています。また、現場に指示だけしてそのあとはフォローしない責任者がいる事業者の場合は、実際に指摘した事項ができているかのアフターフォローもします。コンプライアンスにおいて「なにをやらないといけないか」はそれほど難しい話ではありませんが、現場のドライバーさんがそれを毎日やり続けるのは現実的にはなかなか難しいものです。それでも会社を行政処分から守るためには行政書士として「実際にできてるかどうか」までフォローするようにしています。
一般貨物の業務をすることの醍醐味はなんですか?
運送業はやればやるほど新しい発見があるのがやっていて楽しいです。私は単調なことが苦手ですが、運送業は奥が深いので取り組みがいがあります。
地雷になるようなところのなかには浅く広い知識が必要な部分もあるので、ヒヤリハットするところや不安なところについてはトラサポで質問して他メンバーの意見も聞きながらお客さんに安心してアドバイスできるように工夫しています。
ズバリ、どのような運送会社さんの力になっていきたいですか?
これは明確で、困ってても前向きにやろうとしている運送会社をサポートしていきたいと考えています。とりあえず書類だけ整えればいいでしょ、という会社でなく、中身をちゃんとしたいという会社であれば、私は24時間365時間でも対応したいと思います。はじめは高いハードルでも「やってみよう!」という人と一緒に対策を考えていきたいです。
また、私は衛生推進者講習とテールゲートリフターの特別教育講師資格を保有しているので、少し規模の大きな運送会社さんに対してそのような労働安全衛生法の観点からもお手伝いしたいと考えています。
サラリーマンでなく事業主、雇用主として活動することについてどう思っていますか?
シンプルに楽しいです。サラリーマンとは違って、良くも悪くもすべて自分に返ってくる点は自分の性分に合ってます。それだけに幸福度も満足度も高いと思います。単調作業の同じ繰り返しは性に合いません。経理も人事も全てに関与しているのは楽しいです。経営者としてのストレスとプレッシャーが苦しくも楽しいです。行政書士事務所は1人か従業員数人のところが多い中、当事務所は従業員が10人いるので、多くの運送会社さんと同じような規模感だと思います。そういう意味では、運送会社の社長さんとは同じ経営者/雇用主として、社会保険、採用、教育などに関して自分の言葉で話ができて共感できることは自分の強みかと思います。
今後の展望について教えてください
今は熊谷の軽自動車検査協会の前に事務所がありますが、将来は大宮の埼玉運輸支局前にも拠点事務所を持ちたいと思います。やはり一般貨物許認可を専門でやっているので、運輸支局とのアクセスが近い場所に事務所を構えて、今以上に運送会社のお客様に対して迅速に対応できるようにしたいです。
私はいろいろやるのは好きなのでいいのですが、どうしても自分で背負いこんでしまうところもあります。いろいろやりたいな、と思いつつ限界があるので、権限を従業員に移譲させて自由になって新しいことに挑戦するリソースを作っていきたいです。
まだまだ先ですが、自分が引退するまで今の従業員が全員いるわけではないため、今の従業員がいるうちに新しい人を入れて常にノウハウをキープできるようにしなければなりません。組織で取り組むことで業務知識が承継されていき、長くお客様にも安心していただけると思っているので、そのためにも採用と教育にも更に力を入れていきます。
インタビュアーの感想
佐藤秀太郎先生、長時間ありがとうございました。
佐藤秀太郎先生はやっぱり自動車登録&出張封印については全国でも有数のスペシャリストですからその点はとても心強いです。トラサポの中でも自動車登録についてはたくさんのことを教えてくれ、みんな勉強になっています。
一般貨物の許認可についてはひととおりできても、車検証書換は注意点が広すぎて陸事前行政書士に頼むという行政書士はとても多いです。そんな中、車検証書換は当然に、出張封印までワンストップで任せられる佐藤秀太郎先生はた埼玉県の中で自信を持って運送会社さんが頼りにしていただきた先生です。
また、インタビューでもおっしゃっていたように、他の行政書士はなかなか手を出さない倉庫業についても豊富な経験があります。
運送業だけでなく物流全般について大きな企業さんもぜひ埼玉県の佐藤秀太郎先生を頼りにしていただきたいと思います。
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